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「海鮮丼めちゃくちゃうまい」ゴハンもプレゼンもガチな”魚ッカソン”に潜入!

2015年05月26日 11時45分更新

gyockathon

 IT業界ではおなじみのプログラマーやデザイナーによる技術・アイデアを競い合う開発イベント・ハッカソン。企業主催のものだけでなく、個人レベルでの草の根のものまで、日夜開催されている。

 目的は、参加者の技術力向上や企業の商品改善、さらにイノベーションを目的としたものまで幅広い。ケースは多くはないが、スタートアップでの製品(ものアプリハッカソンがきっかけのMoff)やクラウドファンディングへの挑戦(くるくるピはマッシュアップアワードから誕生)などに成果物がつながることもある。

 企業主催のハッカソンも盛んになっているが、今回紹介するのはスタートアップによる水産ハッカソン。その名も「魚ッカソン」(”ギョッカソン”と読む)だ。主催は、ITを活用した水産流通プラットフォーム構築を目指すFoodison(フーディソン)

「魚を美味しく食べる」をテーマに、魚がもっと好きになれるようなサービスやアプリ開発を目的に集まった参加者がアイデアと技術を競った。

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 各チームによるプレゼン紹介の前に、まずは「魚ッカソン!サカナを楽しく食べるハック!」として開催された会場の様子から。

 ハッカソンの流れは、集合、当日の説明、チーム分け、各チームでのディスカッション→実製作、プレゼン&審査、優勝チームを発表! といった形が主。お昼には、魚ッカソンでのお楽しみでもある、フーディソンが営む魚屋・sakanabacca(サカナバッカ)で実際に提供されている海鮮丼やお刺身がふるまわれていた!

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一面の海鮮丼
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海鮮丼!
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刺身は天然・養殖のマダイ、カンパチの食べ比べ。一概に天然がおいしいとも言えないらしい。
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みなさんまじでおいしそうです。
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こんなに笑顔。

 午後のプレゼン中も、参加者からは「海鮮丼がめちゃくちゃうまかった」という声が多数。内容は変わる可能性があるが実際に店舗で出しているものなので、ゴハンに興味がある人は店舗のほうへどうぞ。

 魚ッカソン自体の開催は今回で2回目。第1回はアイデアソンに近い形で魚好きの人が集まった形だったが、今回は本格的な開催形式もあってか、水産における課題をITをいかに解決させるかアプリやサービスに落とし込んでいた。

 会場には、日夜実際に築地でセリを行っている仲買人・魚屋でもある共同水産の小林興紀氏、環境と生き物と魚食の非営利団体・アクアカルチャーの阿高麦穂氏も参加。どのチームもユニークで、会場に参加していた水産関係者をうならせるようなものばかりだった。以下、各発表について鮮魚の現場からの講評付きでお届けする。

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共同水産の小林興紀氏(右)と、環境と生き物と魚食の非営利団体・アクアカルチャーの阿高麦穂氏(左)


●リアルタイムで”せり”ができるアプリ
最初に登壇したのは、鮮魚のせりをリアルタイムで行うチャットアプリ『鮮魚せり』。

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 アプリ内でせりを再現しており、リアルタイムでメッセージが自動更新されていく仕組みとなっている。水産関係者が入札するような形で、画面上に出た商品に対して高い値段がつくと更新されていく。

 会場では、計算できる限界の桁あふれを超えてしまい、アプリに問題が発生して終了となってしまっていた。実際は、参加者がそれ以上出せない一定の金額になって20秒間止まると確定する仕組みとのこと。

「魚の流れが見える位置にいるが、現在ITとは無縁に近い。こういった形でセリが行えるのは理想的になるのではないか。今日始めてハッカソンに参加したが、我々がやってみたいことがいきなり実際に見れて驚いた。魚屋さんたちが理解できることがITで広がるのは面白い」(共同水産小林氏)


●魚のさばき方、選び方が知れるアプリ
続いては魚の選び方から調理方法までがわかる『FISH KITCHEN』。

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 出刃包丁で大きめのタイをさばくなど、実際に自らも魚を料理する発表者は、ネット上の各種サイトなどを見て試行錯誤していたという。魚を調理をするきっかけになればと、魚の選び方・さばき方が簡単にわかるアプリを提案。

 スタートは、そもそも購入の時点から。アプリを開くと旬の魚が表示され、実際に選んでいるとき、置いてある魚に対して、ガイドに合わせて撮影ができる。すると、各部位に対して、鮮度チェックのポイントが表示される。タイであれば、目の部分の濁り具合で鮮度のいい悪いが判断できるなどだ。また買うときに参考となる魚の情報や栄養価だけではなく、さばき方を指導する動画・レシピとも連携する想定だ。

「魚屋が苦手なものとして、技術の伝承ができていない部分がある。職人芸のようなもので、実は魚屋は技術の固まりだが、伝え方を知らない人たちが多い。そういった部分を伝えることで、より魚を身近に感じてもらえるのではないか」(共同水産小林氏)


●鮮魚×恋愛の相性診断
3番目の発表は鮮魚による相性診断『Love Fish』。

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 発表チームが開発コンセプトとしたのは以下の3点。1.魚を通じた男女間の話題づくり、2.オススメの海鮮料理のレストランとの出会い、3.そしてそこから生まれる魚好きどうしの男女間の出会いの創出だ。今回は、1と2に注力したアプリとして開発。魚に関する質問に答えることで、相性度がわかる診断サービスで、恋愛相性度からおすすめの海鮮レストランが自動で紹介されるというものだ。

「魚と恋愛という視点はおもしろい。食べ方講座で、魚料理ができるともてる、といったような取り組みができないか」(アクアカルチャー阿高氏)


●江戸前寿司の原点である屋台を復活させたい!
 続いては、「毎日のお昼ご飯においしい屋台があれば魚食べるかな」(発表者)という『さかな屋台』。

 にぎりずしの屋台が一般的だった江戸前ずし。だが、今では屋台での鮨屋はほとんど見かけなくなっている。廃れてしまった魚食文化、江戸前寿司の原点である屋台での魚食をアプリで復活させる試みだ。楽しく食べられるようにするため、漁師・板前と面と向かって話せること、お祭り気分で食べれること、もちろん新鮮でおいしいことといった条件をITで復活させるのがコンセプト。

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 アプリでは、事前登録した店舗情報と位置情報がマッピングされる。ユーザーの場合はオーナー情報をマッピングし、オーナーの場合は実際に今屋台がある場所が共有される仕組みで、移動する販売車がどこにあるかわかる。位置情報からナビを開始することができるため、ユーザーは新鮮でおいしい寿司を買って食べることができる。

「魚が食べたいものの、どうやって手に入れるかがなかなかマッチしていない業界。このような試み、屋台というのは良い視点。実際に市場には、魚行商を行うおばあちゃんといった人から、一方で物流を大きく動かす仲買人のような我々もいる。”魚1匹を食べる”ということが、いかに見逃されているか気づけた」(共同水産小林氏)
「実際の店舗より障壁がかなり低く、簡単にアクセスができそう。ちょっとの投資でできるなら生産者・料理人・消費者それぞれにとってすごくいい」(アクアカルチャー阿高氏)


●食った魚のソーシャル共有プラットホーム
「ハッカソンが行われている日中にやることがなくて……やってしまいました」と登壇したのは、運営でもあるフーディソンチーム。発表したのは『Sakanakutta』だ。

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 フーディソンが運営する実店舗sakanabaccaで発行されるレシートにバーコードラベルを追加。これを専用アプリから読み込むことで金額に応じたポイントを入手、さらに買った魚の説明が見れるという仕組みだ。さらに、投稿ボタンからカメラを立ち上げ、写真・コメントで付きで投稿も可能。「これからは魚食系男子が来る」ということで、実際に料理した写真を投稿させたいと説明した。

 大事な部分は、アプリ上でゲットしたポイントの使い道だ。入手ポイントはプラットホーム上の通貨となって、他の人の投稿に入手したポイントを使って評価することができる。”得られた評価”の1%を割引対象にすれば、購入から投稿、そして評価といったコミュニティーのサイクルが回る。 魚を買って料理をした人どうし、お互いに自慢したくなる欲求をくすぐる仕組みだ。

「魚の情報やコミュニケーション方法は現在とても限られているが、仕組み上広がった印象を受けた。実際に私の妻は魚をさばけなかったが、現在ではさばけるようになってLINEで写真も送るようになった。そのような(承認欲求の)部分でもこたえられるのではないか」(共同水産小林氏)
「魚は売りっぱなしになっており、ユーザーとの接点が少ないので、サイトを介してのコミュニケーションが図れる点で、顧客の拡大要素を感じた」(アクアカルチャー阿高氏)


●占いで魚を好きになれるアプリ
 女子目線を入れてみた発表が『占い魚ッチ(うぉっち)』。

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 魚のことを知る機会が少なく、売りたい魚が売れずに売れ残る点を解決するための”占い”アプリ。女子は毎日占いをみて、1日中占いを気にするというコンセプトから、占いにはまった女子に魚をセレクトする。

 調理をする主婦目線では、魚は種類が多く、調理方法もわかりづらい。そこで、性別・生年月日・出身地の情報をもとに、「あなたの運気をアップしてくれるラッキーフィッシュ」を提案。通常の占いのようなライフスタイルを提案だけでなく、ラッキーフィッシュの調理方法や取り扱っている店舗情報と合わせて届けることで、魚の消費を促進する狙いだ。

 占い結果に関わるのは、四季や出荷量、天候などを考慮した漁獲量で、表向きはおしゃれに、裏側は流通で出遅れたような魚をうまく誘導する。レストランだけでなく、さまざまなおすすめ情報も追加して、たくさんの店に誘導できるようにしたいと説明していた。

「ビジネスプランにのせやすい要素が含まれていた。大手の水産加工スポンサーのテレビ番組の占いコーナーでもいいかも。夢が詰まっていた」(共同水産小林氏)


●漁獲に関するデータをビジュアライゼーション
 自身の趣味が釣りで、本業は研究員だという発表者提案の壮大なプロジェクトが『Prj Aerial』(プロジェクトエアリアル)だ。

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 4年前から個人的に準備しているプロジェクトで、漁獲に関する地球規模でのデータを可視化するツールだ。

 現在、漁獲に関連するデータがあまりにも秘匿されすぎており、どこにデータがあるのかわからないことを問題視。潮流、風速、海表面の温度、降雨などなど、魚がどのへんにいるかアタリをつける海に関するデータをビジュアル化してくれる。

 日本各地の沿岸部で生する釣果が実際にどれくらいとれていくらかをデータベースからもってきて、Googleアース上で描画。市場での値段も含め加えることで、超長期で追い続ければ最終的には場所と魚と価格がある程度推測できるようになるという。

 潮流も過去3日ぶんまで確認でき、「黒潮が実際にここまで荒れていると気づけたので次の釣りに生かす」と発表者は語っていた。釣り人のホビーユース目的だけでなく、漁業関係者にもメリットがあるデータだという。

「プロのセリ人と呼ばれる大卸も実は毎日このような気象・海水温・潮のデータを見ている。漁獲に直結するもので、そのような表に出ているデータ自体を気に留めてもらったことがうれしい」(共同水産小林氏)
「このようなデータを一番求めているのは漁師。実際に魚がいる漁場に網をうたないととれないので、実際にほしがる内容だ。水揚げ量についても仲買人などの売り手がほしがるので、時間やお金をかけて日本中から集めたデータを使って新たな価値を出すのもブレイクスルーだと思った」(アクアカルチャー阿高氏)


●魚と料理をつなげるアプリ
最後は『Fish Info』。

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 魚食の普及において、魚と料理が実際にイメージできないことが、普及につながらないハードルだとして、その問題を解決するためのアプリ。魚売り場でショーケースにQRコードをつけ、スマホからアクセスすると魚の情報や食べ方の閲覧ができる。店頭での情報をサーバーで管理し、流通とつなげ、魚食消費の拡大を目指す。

「データ化するのが苦手な鮮魚流通という分野をどうやって立ち上げるか。きっかけつくりも含めて考えさせられた」(共同水産小林氏)


■賞品は西京漬けセットと高級タラバガニの足5本!

 審査を経て、「参加者賞」と「ゲスト賞」が発表。

 ハッカソン参加者の支持を集めたのは、リアルタイムせりアプリの『鮮魚せり』。

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賞品は宮内庁御用達・築地の西京漬セット!

そして、水産関係者からの得票を集め、豪華賞品をゲットしたのは『さかな屋台』!

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優勝賞品のタラバガニをゲットした2人。どうやって持って帰ったのか。

 魚がテーマとなる珍しい形式のハッカソンだったが、水産というITと遠い領域での課題について、各参加者が向き合い、実際生み出されたプロダクトに水産関係者も大きな共感を持って応えていた。第3回の開催はまだ未定だが、おいしい鮮魚を食べることも含め、水産の現場の課題解決に取り組みたい人はぜひ参加してみてはいかがか。

写真:フーディソン、編集部

■関連サイト
フーディソン
sakana bacca

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