大手3キャリアが開催した2015年夏モデル発表会では、“従来型携帯電話ガラケー”の進化が焦点のひとつになりました。
KDDIが春モデルとして発表したAndroid搭載ガラホ『AQUOS K』から数ヵ月。各社のガラケーに対する新たなアプローチが見えてきました。
■ドコモのAndroidケータイはLTE・Wi-Fi・おサイフ非対応
2015年夏モデルでは、KDDIに続きドコモもガラケーにAndroid OSを採用。富士通製とシャープ製の2機種を発表しました。
ドコモはAndroidを採用した富士通とシャープのドコモケータイを発表。ただしLTE、Wi-Fi、おサイフに非対応など、機能的にはシンプルだ。 |
いずれの端末も通信は3GのみでLTEには非対応。おサイフ、WiFiも非搭載とするなど、機能的な見どころはあまりなし。あくまで“ドコモケータイ”の新機種という位置付けで、KDDIが打ち出す“ガラホ”のような派手さはありません。
夏モデルでドコモが強調したのは、FOMAと同じ料金プランで使えるという、料金面での手軽さです。これはKDDIのガラホがスマホ並みの料金で登場したことへの、カウンターになるかと思われました。しかしWi-Fiに対応していないため、写真付きメールの送信やLINEスタンプのダウンロードにより、すぐに上限に達してしまうのは気になります。
次の焦点は、LTE対応です。端末メーカーによれば、KDDIはいち早く3G(CDMA2000)の利用を減らしたいとの意向があるのに対し、ドコモは3Gの廃止をそれほど急いでいない、という温度差があるとのこと。
富士通の端末は大型バッテリーを搭載し、充電せずに何日間も利用できるのが特徴です。Androidを搭載したことで先進的なイメージがあるものの、むしろ携帯をたまにしか使わない、保守的な層に向けた端末に仕上がっているのは、おもしろいところです。
富士通はAndroidケータイの開発にあたって、プッシュボタン用の部品を独自に製造したという。今後も二つ折り型携帯を前のめりの姿勢で作っていく勢いだ。 |
■KDDIの夏ガラホはVoLTE対応、料金プランも豊富に
2015年春モデルとして”ガラホ”を投入したKDDIは、夏モデルで後継機を発表。同じシャープ製の『AQUOS K』が、新たにVoLTE対応になって登場しました。
春モデルのAQUOS Kは、夏モデルで早くもVoLTEに対応した。現時点では、春モデル端末へのアップデート提供などによるVoLTE対応の予定はないという。 |
ドコモのAndroidケータイとは異なり、KDDIの“ガラホ”はWi-Fiやテザリング、おサイフに対応する高機能さが特徴。スマホ並みと指摘されていた料金についても、新たにガラケー並みの新料金プランを発表し、豊富な選択肢を提供しています。
KDDIはガラケー並みの料金プランを新たに発表。かけ放題やデータ定額と組み合わせることで、ドコモよりも選択肢は豊富だ。 |
ガラケーを愛用するユーザーの中には、“スマホより料金が安い”という理由だけで使い続けている人が多いとされています。KDDIのガラホなら、新料金プランやWi-Fiを活用することで、料金を低く維持できる道が残されているのは嬉しいところです。
■ガラケー発表に”時間差”を設けたソフトバンク
3キャリアの中で最後に発表会を開催したソフトバンクモバイルは、新製品にガラケーの姿なし。発表会には4月より社長に就任した宮内謙氏が登壇し、「本質的にはガラケーは必要ない」と“ぶっちゃけた”ことが話題になりました。
ソフトバンクモバイルの宮内謙社長。「ガラケーをスマホに移行していく」と語ったものの、その3日後にはガラケーの新製品を発表した。 |
しかし発表会のわずか3日後、あっさりと“従来型の携帯電話”としてパナソニックモバイルコミュニケーションズとZTE製の携帯電話を発表。この“時間差”での発表にどういう意味があるのか、注目を集めました。
その背景には、ガラケーからスマホへの移行を進めていくというソフトバンクの方針との整合性を取ることや、他キャリアが突入した“ガラホ”競争から距離を置きたい、といった狙いが感じられます。果たしてソフトバンクのガラケーは今後も続くのか、次の一手が注目されます。
■ガラケー市場で最後まで生き残ることが重要
ガラケーといえば、徐々にスマホに置き換えられていくことで市場は縮小し、やがて消滅するものと考えていた人も少なくないでしょう。
しかし富士通による市場予測では、今後も国内1000万台規模を維持していくといいます。グローバルで見ればそれほど大きな市場ではないものの、国内では底堅い需要があることが分かります。
富士通は今後もフィーチャーフォン市場が堅調に推移すると予測。 |
また、ガラケー市場の特殊性から、アップルやサムスンといった海外企業が参入することは考えにくい状況です。その参入障壁の高さから、国内の端末メーカーはガラケーを独占的に作り続けることで、安定した利益を確保できるはずです。
このような市場で重要なことは、最後までリングに立ち続けることです。ライバルが1社、また1社とノックアウトされていけば、市場での地位はより強固なものになります。最後まで生き残るのは誰か、という視点で見るガラケー市場には、スマホとはひと味違うおもしろさがあります。
山口健太さんのオフィシャルサイト
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