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読者にも聞いてみたい。自分にとって「最高のコンテンツ」とは何なのか。
大手町で11日、メディアの未来を考えるシンポジウム「iMEDIA SUMMIT」が開催。わたしたちがこうしてせっせと書いている記事の価値や意味はいったい何なのか、LINEの田端信太郎氏、スマートニュースの松浦茂樹氏が意見を交わした。
「これまでメディアで流れているものは、コンテンツ、広告、コミュニケーションの3つがあった」とLINE田端氏。ところがメディアがマスからソーシャルに移った瞬間、3つの要素は1つのメディアに吸収されはじめたというのである。
「月9で考えれば、ドラマがコンテンツで、花王やサントリーのCMがはさまる。学校で『あんとき告白しときゃよかったのにね〜』というコミュニケーションを取る。その3つが分かれていたが、10年前から3つがどんどん重なってきている」
その1つがTwitterであったり、LINEであったり、あるいはニコニコ動画だったりするというわけ。コンテンツと広告とコミュニケーションが合体したものとして田端氏はちゃっかりLINEスタンプを宣伝していた。まあたしかにそうかもしれない。
そこで話題になったのが、利用者にとっていいコンテンツとは何かということだ。
LINE 上級執行役員 田端信太郎氏 |
●同級生も企業も「友だち」の時代
田端氏は「大事なのはエモーションだ」と熱っぽい。
「LINEでは、LINEニュースが行くのと同じように、彼女から怒ってるLINEが来るかもしれない。実家のおかんからLINE来たとか、全てないまぜになってフラットになっていく中、記事の編集を考えないといけない」
田端氏はマネタイズの責任者でありながら企業アカウントのコミュニケーションも週1回に制限する施策も打っている。「友だちからかと思ったら企業だった、となると『チェッ』となる」ためとのことで、メールマガジンと似た話ではある。
そこで田端氏が引用したのが「女子高生にとって最高のキラーコンテンツとは何か」というメディアクリエイター高城剛氏による問いかけ。
気になる答えは「彼氏からのメール」。
記者として負けた気分だが、女子高生目線で見れば「いい記事」の基準は変わる。自分の中だけで「うむ、なるほど」するのではなく、記事にレスポンスをしたり、記事をもとに行動を起こしたりするのがいい記事ということになる。
「記事を読んだあと誰にシェアしたくなったり、いい記事を読んでる俺は賢いぜアピールしてみたり、いい店を知って『食べに行かない?』と話したり。そうした前後の文脈がなければ、良い記事といっても意味がない」
なるほど。いい記事の基準がますますメールマガジンに近い発想になってくる。雑誌というのは新聞とちがってもともとそうした方向を目指しているので、田端氏にはぜひ週アスPLUSを推薦してもらいたいところではある。
一方、エモーションの面ではスマートニュースも似たところがあるらしい。
スマートニュース 松浦茂樹氏 |
●消費者を言葉巧みに騙してはならない
スマートニュースは自社独自のアルゴリズムをもとに記事をまとめるアプリ。グノシーやニューズピックスのように、まとめアプリは死ぬほどある。違いは何かと聞かれた松浦氏は「気持ちが大事だ」とエモーショナルな答えを出していた。
「マジックはない。地道にやるのがとにかく大事。どうしたら読んでもらえるか考える。ベースは、いかに人の気持ちにうまくコンテンツを載せられるかだ。インターネットは読者の気持ちがスタートになるのでそこから始めるのが一般的かと思う」
CMでダウンロード数をかせぐだけで月間利用者数417万人という数字が達成できるわけはない。他社の3倍以上にあたる1335万時間という総利用時間の長さにしても、見たい記事を見やすく見せられているからこそという部分もあるという話だ。
そんなプラットホーム屋さんの最後の話題は、いかにルールとマナーを守りながらどうマネタイズするか。「気にしているのはプライバシー周り。LINEは個人間のトークを見て広告をターゲティングしているわけでない」と田端氏は言う。
一方のスマートニュースは、やり方によっては「ステマ」とバッシング対象になることもあるネイティブアド記事配信について「JIAA(日本インターネット広告推進協議会)準拠というか、ガイドラインを守っていきたい」と話していた。
2つとも法整備が追いつかず、自主規制に任されている領域のお話だ。
グーグルはメールの中身や検索履歴を自分たちでは見ていないと言いながら、履歴にもとづく広告をバカスカ出して大儲けしている。一方、企業からお金をもらいつつ提供表記なしの記事をバンバン出して儲けているメディアもある。
問題は消費者を騙したり、悪い結果に導いていないかどうか。かつてのソーシャルゲーム「コンプガチャ」問題も、最終的にはプラットホーム運営側が自主的に規制基準を設けて、消費者がゲームで悲しまないようにしていたはず。
インターネット時代、メディアの問題はすなわちプラットホームの問題だ。プラットホームの方々にはメディアとともに消費者利益とは何なのかを考えてもらいたい。わたしは女子高生にとって最高のコンテンツは何なのか探求をつづけていく。
写真:Ryo FUKAsawa
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