スマートウォッチの市場規模は、どれくらいの大きさなのか?
英調査会社のCanalysが2月11日に発表した出荷台数が話題となっています。同社によれば、2014年に出荷されたAndroid Wearは72万台、スマートウェアラブルデバイス全体では460万台とのこと。
これは年間13億台といわれるスマートフォンの市場規模と比べて、取るに足らない大きさといえます。年間10億台というAndroidスマートフォンと比べても、Android Wearはその0.1%に満たない計算です。
果たしてこのままスマートウォッチは盛り上がらないまま終わるのでしょうか。
■腕時計型ならではの難点が気になるスマートウォッチ
Canalysによれば、Android Wearの中で人気が高いのはMotorolaの『Moto360』やLGの『G Watch R』のように、円形のディスプレーを搭載したモデルとのことです。いわば従来型腕時計のデザインを踏襲したものが、まずは受け入れられているといえるでしょう。
↑前モデルよりよく売れているという『G WatchR』。CES2015のLGブースでは、ビジネスシーンを意識した展示が目立った。昨日発表された新モデル『LG WatchUrbane』も引き続き円形ディスプレーを採用する。 |
その反面、腕時計ならではのめんどうくささもあわせ持っています。そのひとつに、ノートPCの操作中には、バンドを留める尾錠やバックルがパームレストにぶつかるという問題があります。
↑腕時計のバックルがノートPCのパームレストにぶつかってしまう。これが嫌で、腕時計をしなくなった人も多いのでは。 |
また、腕時計に比べてスマートウォッチは分厚いモデルが多く、長袖シャツとの相性が悪いのも難点です。デザインによっては汗をかきやすく、日本の蒸し暑い夏を乗り切るのはつらそうです。
↑SIMカードを入れて3G通信ができる『Gear S』。汗をかきやすいバンドのため、夏場の利用は厳しそうだ。 |
さらに、スマートウォッチならではの問題として、バッテリーが1日強しか持たない点が挙げられます。もしバッテリーが切れると、時計すら表示できなくなるのは悲しいものです。
↑円形ディスプレーで評価の高い『Moto360』。卓上では無接点充電のスタンドに置いておけるため、毎日の充電が苦にならないのも魅力のひとつだ。 |
■便利だが必須アイテムというほどではない
スマートウォッチの便利な点といえば、通知機能があります。同じ通知でも、仕事のメールなのか、友達からのLINEなのかによって、重要性は変わってきます。スマートウォッチがあれば、すぐにスマートフォンを開いてアクションを起こすべきかどうか、素早く判断できるわけです。
また、Android 5.0のSmart Lock機能や、Androidアプリの“Wear Unlock”、“Smart Unlock”などのロック解除系アプリを使えば、スマートウォッチを身に付けているだけで、スマートフォンのロック解除が不要となるのも便利な点です。
ただ、これらの機能が必須かというと、そうではありません。スマートフォンのヘビーユーザーならともかく、通知やロック解除の便利さを得るためにスマートウォッチに2~3万円を出せる人は、決して多くないでしょう。
逆にファッションアイテムとして見れば、スマートウォッチは“安すぎる”面もあります。従来型の腕時計であれば、社会的なステータスに応じて長く使えるモデルを購入する人もいますが、スマートウォッチは腕時計と異なり、基本的なスペックがすぐに陳腐化すると思われるため、高級品が成り立ちにくい状況にあります。せいぜいApple Watchのように、外装に貴金属をあしらう程度になるのではないでしょうか。
■Apple Watchが決定打となるかは疑問
スマートウォッチ市場において起爆剤として期待されているのが、Apple Watchです。販売台数が1000万台規模とも予測されるApple Watchが登場すれば、スマートウォッチ市場は飛躍的に拡大することになります。
ただ、その勢いが続いていくかといえば、筆者は疑問を感じています。なぜかというと、Apple WatchはiOSデバイスとしか連携できないからです。これではまるで、Macとしか接続できない初期のiPodのようなもの。もちろん同様に、Android Wearの利用にもAndroid端末が必須となります。
↑ソニーの『Smart B-Trainer』はランニング向けに特化しているが、音声読み上げ機能にはさまざまな可能性を感じる。 |
こうした状況を受け、先日行なわれたCES2015では、独自OSのスマートウォッチを開発しているメーカーの存在が目立ちました。その狙いは、iOS、Androidへの両対応です。いわば“第3のスマートウォッチ”が、今後は勢力を拡大する可能性があります。
■スマートウォッチより優れた形状もあり得る
ウェアラブルデバイスという観点でみれば、腕時計という形状にこだわる必要はないと筆者は考えています。とはいえ、具体的にどのような形があり得るのかといえば、なかなか難しいところです。
有望と思われていたメガネ型は、グーグルがGoogle Glassの個人向け販売を中止したことで、大きく後退した感があり、メガネ型は今後、スポーツ用、業務用など特定用途向けの展開が中心となりそうです。
ならば、ソニーが2月12日に発表した『Smart B-Trainer』のようなヘッドセット型はどうでしょう。
↑ソニーの『Smart B-Trainer』はランニング向けに特化しているが、音声読み上げ機能にはさまざまな可能性を感じる。 |
これにはディスプレーがありませんが、通知の内容を音声で読み上げるような機能があり、それをボタンで制御できれば、実用的なものができそうです。
今後はスマートウォッチの動向だけを見て一喜一憂するのではなく、ウェアラブルデバイス全体での広い盛り上がりを期待したいところです。
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