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最大262.5Mbpsを実現 “CA+小セル”なドコモのLTE Advancedを見た!

2015年02月06日 12時30分更新

 LTE Advanced(LTE-A)の開始を、3月に控えるドコモ。2月5日、屋外環境で行った“高度化C-RANアーキテクチャ”の実験結果を報道陣に公開した。実験には商用の基地局と商用のルーター(HW-02G)が使われ、下り230〜240Mbps程度(最大で262.5Mbps)の速度で通信を行なう様子を観測できた。商用環境での通信を公開するのは初となり、サービス開始を間近に控えていることがうかがえる。

ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑高度化C-RANアーキテクチャを採用し、LTE-Aに対応した基地局。

 LTE-Aとは、LTEを発展させた通信規格で、KDDIやソフトバンクが先行してキャリアアグリゲーションを導入している。これに対し、ドコモはキャリアアグリゲーションに加えて、高度化C-RANアーキテクチャを採用。単に高速化を行うだけでなく、効率的な大容量化を実現する。ひとことで言うと、「マクロセル(範囲の広い基地局)と、スモールセル(範囲の狭い基地局)の電波を、端末でアグリゲーションする技術」(同社 取締役常務執行役員 尾上誠蔵氏)だ。

ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑同社CTO、尾上誠蔵氏。LTEの開発に多大な貢献をしており、世界では“LTEの父”とも呼ばれる人物だ。
ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑マクロセルとスモールセルの電波をキャリアアグリゲーションして高速化を行う、“高度化C-RANアーキテクチャ”を導入する。

 通常のキャリアアグリゲーションは、同じ基地局の異なる周波数の電波を、端末側でひとつに合わせる。一方でドコモはC-RANと呼ばれる仕組みを採用しており、ひとつの親局(制御部)に複数の子局(無線部)をぶら下げることができる。それらの電波をキャリアアグリゲーションで束ねるのが、“高度化”C-RANというわけだ。

ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑キャリアアグリゲーションによる高速化と、スモールセル導入による大容量化をまとめて行なえるのが、高度化C-RANアーキテクチャの特徴。

 メリットは、容量の足りない場所に、ピンポイントでスモールセルのエリアをつくっても、「ハンドオーバーがゼロ」(同)で通信を継続できること。容量を上げるためには、小型の基地局を数多くつくっていくのが定石だが、「セルを何回もまたがり、その都度ハンドオーバーが発生すると品質低下の問題が懸念される」(無線アクセス開発部長 前原昭宏氏)。高度化C-RANでキャリアアグリゲーションを行なえば、「常にマクロセルの電波を受信しているため、途切れが発生しない」(同)という理屈だ。

ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑スモールセルをスポット的に配置して、容量を上げることが可能だ。
ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑高度化C-RANアーキテクチャの特徴を解説する、同社の前原部長。

 LTE-Aで利用される技術について、尾上氏は、「キャリアアグリゲーションは、単なる力技で賢い方式ではない」と評する。スモールセルも「セルをオーバーレイすることは、昔からやっている」(同)という。いずれも、“力技”の技術だが、それらを組み合わせることで「新たなフィーチャーが生み出される」(同)。高度化C-RANのコンセプトがまさにこれで、LTE-A以降の進化の方向性を示す表現と言えるだろう。

ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑尾上氏によると、ひとつひとつの技術は“力技”だが、組み合わせによって新たな機能を実現できるという。これは、5Gにもつながる発想だ。

 なお、ドコモのLTE-Aは、「まず密集地帯から入れていく」(前原氏)方針。「導入当初に行なうキャリアアグリゲーションは、すべてこの新しい装置(高度化C-RAN)でやっていきたい」(同)という。キャリアアグリゲーションの組み合わせは、1.5GHz帯+2GHz帯もしくは1.8GHz帯+800MHz帯。基本のスペックは下り最大225Mbpsだが、周波数に余裕のある一部では「262.5Mbpsの場所もご用意していきたい」(同)という。

ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑まず、都市部から高度化C-RANアーキテクチャを導入していく方針。

 実験は、横須賀リサーチパーク(YRP)にある“ドコモR&Dセンター”内で行なわれた。同施設の敷地内にマクロセル(800MHz帯、15MHz幅)の基地局ひとつと、スモールセル(1.8GHz帯、20MHz幅)の基地局4つが置かれ、それら合計5つ基地局を高度化C-RANで束ね、キャリアアグリゲーションを行なうというのが、その内容だ。

ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑実験はドコモR&#38
ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑マクロセルの基地局。800MHz帯を使用。
ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑スモールセルの基地局。こちらは1.8GHz帯となる。

 ひとつ目の実験が、スモールセル基地局の真下に置いたルーターで通信を行なうというもの。こちらは、ベストな環境での速度を見る実験で、先に述べたとおり、下りで230Mbps程度の速度をたたき出していた。2月5日はあいにくの雨模様で、端末がテントの下に置かれていたため230Mbps台に留まったが、ドコモによると、こうした遮蔽物がなければ240Mbps以上を記録できていたという。

ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑下りで230Mbps以上の速度が出ている。LTE-A非対応端末と比べると、ダウロードも速い。

 もうひとつが、ハンドオーバーなしで2つのスモールセル基地局につながり、速度を維持したまま移動できるという実験。台車に乗せたLTE-A対応ルーターと、非対応ルーターで、速度の変化を比べたものだ。こちらについては、LTE-A対応ルーターの場合、移動しても速度の低下がわずかであることが観測できた。これはハンドオーバーを行なっていないため。スモールセルの電波が弱くなったぶんだけ減速はするが、LTE-A非対応のルーターに比べて通信は安定している。

ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑台車を押して、ハンドオーバー発生の有無を実験した。
ドコモ LTE Advanced 高度化C-RANアーキテクチャ
↑LTE-A対応の方が、速度が高いのはもちろん、ハンドオーバーがなく安定して通信できている。

 間もなくサービスが開始されるLTE-Aだが、すでに発表のあったとおり、当初はルーター2機種がこの規格に対応する。スマホについても、早期に投入する方針で、発売が今から楽しみだ。

(2015年8月12日18時50分:記事初出時、一部キャプションで尾上誠蔵氏の名前が間違っておりました。お詫びして訂正いたします。)

●関連サイト
ドコモ 該当報道発表資料

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