ステマまがいの金融広告に肖像権無視の画像まで
下の画像はTwitterで1月5日に見かけた広告。タレントの柳原可奈子さんの画像を使っており、内容はバイナリーオプションのステマ投稿に飛ばすものだ。スパム業者のツイートとまったく同じものがTwitterの広告になっている。
柳原可奈子さんのコラ画像を使ったTwitter広告。バイナリーオプションのステマ的な記事への誘導だった。 |
柳原可奈子さんの画像は、元々2ちゃんねるのある板で「柳原可奈子が痩せたら可愛いよな」などと話題になり、PhotoShopで加工しアップされたもの。それをコピーし、広告に使用しているのだ。元画像からして許諾は取っていないだろうから、流用している広告主も、著作権や肖像権を無視していることになる。
広告は「最新のお小遣い事情がやばい」として、「実は一般人にバブルが起きている」なる記事にリンクを貼っている。ジャンプ先は金融サービスのひとつ・バイナリーオプションの宣伝記事。それも悪名高き、2ちゃんねるもどきのステマ広告だ。
広告のジャンプ先。2ちゃんまとめふうだが、実際には業者がつくったPR記事。 |
サイトに通帳の画像を載せ、簡単に儲かるような過大な宣伝を行なっている。 |
新聞でも取り上げられた、2ちゃんねるふうの書き込みで、さもバイナリーオプションが儲かるかのような会話を演出している。もちろん本物の会話ではなく、業者が自作自演で書いているステマ記事だ。ここまであからさまだとステマとは言わないかもしれないが、とはいえ実際にダマされている人がいる。
金融取引のバイナリーオプションは海外の業者で怪しい物が多く、国民生活センターも警告を出している。この広告記事で誘導されるバイナリーオプション業者は、国民生活センターが警告する、無登録の海外業者だった。
Twitter広告は信用できない──実態はどうなの?
同様の広告がTwitterで何度も出ている。下の画像は12月6日に流れた広告だ。
12月に流れていたTwitter広告。「儲かる」と煽った広告で、バイナリーオプションへの記事へ飛ばすものだった。 |
海外の無登録バイナリーオプション業者の広告がTwitterの“プロモツイート”に出ている。 |
「おすすめアプリ速報」なるアカウントが「コイツ、天才すぎじゃね? 必ずプラスになって、勝ち逃げできるなw」などとバイナリーオプションを宣伝。やはり2ちゃんねるの会話ふうステマ広告記事に飛ばすものだった。
このようなバイナリーオプションの宣伝は、今までスパムで多く行われていた。ユーザーを騙して連携アプリ入れさせ、勝手に宣伝ツイートをリツイートさせるものだ。それらの宣伝ツイートは明らかなスパムだったから、筆者も「ダマされるな」と警告することができた。
しかし、今回はTwitterの広告なのである。いわば、詐欺まがいのバイナリーオプション広告を、Twitterがオススメしていることになる。いわゆるTwitterの「プロモツイート」だ。プロモツイートとは、広告主のTwitterアカウントのツイートを広告で広めるもので、幅広く利用されている。クリック課金とエンゲージメント課金(リツイートなどのユーザー側のアクションで課金)の2種類があり、今回のようなサイトへの誘導ではクリック課金が多く使われている。
では、Twitter社では、広告について審査を行なっているのだろうか? Twitter社広報に話を伺った。
「Twitterの広告は審査を行なっています。広告代理店を通される場合やオンラインから入稿される場合など、広告の入稿手段により、審査の順番が異なることはありますが、システムと人間の目との両方を使っています。しかしながら最近、ご利用の皆さまに疑問を持たれる広告が表示されることがあるというご意見は、Twitterにも頂戴しています」
──とのことで、このような広告が出ていることは把握しているようだ。“審査はしているものの、内容まで詳しくチェックできていない”というのが実態かもしれない。
今後の対応について、Twitter社では以下のようにコメントしている。
「Twitterでは事態を真剣に受け止めており、この件に関して社内でも何度もミーティングを行ないました。現在、システムの向上と担当部署への人員の増員とで対応を行っており、今後もこの部分への注力を続けてまいります。」
ほぼスパムといえる広告が出ていることは、我々ユーザーにとって迷惑であるだけでなく、ほかの(ちゃんとした)広告主の信頼も失ってしまう。Twitter広告の改善を望みたい。
また、私たちユーザーはSNSでの広告は信頼できるものではない、と頭に入れておく必要がある。GoogleやYouTube、Facebookなどの広告も、スパムまがいの広告が出ないとは限らない。信頼できるサイト・サービスに表示された広告だからといっても安心せず、派手な煽り文句にダマされないよう注意したい。
【ITジャーナリスト・三上洋】セキュリティー・ネット事件・携帯料金が専門。テレビ・ラジオでの専門コメント多数。ITジャーナリストと称しているが、実際は“IT野次馬”であり、ツイッターやツイキャスを用い、事件現場から速報するのが趣味。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります