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Windows情報局ななふぉ出張所

サムスンのCES基調講演に見る、IoT元年の幕開け

2015年01月13日 07時00分更新

 CESはコンシューマー家電業界における年初の展示会として、そして今年の業界の方向性を占う上でも、重要なイベントといえます。

 今年はスマートテレビや自動車の展示、さらにはインターネットにつながることを売りにする数々の小物にみられるように、IoT(Internet of Things)が大きく注目を集めました。

サムスンのCES2015基調講演にIoT元年を見る
↑CES Unveiled会場はIoT製品のラッシュ。電球からコーヒーメーカー、哺乳瓶用のホルダーまで多数のデバイスが展示された。

 さまざまな“モノ”がインターネットにつながるという抽象的な概念が先行してきたIoTですが、いよいよその具体的な製品が爆発的な勢いで披露されたのがCES2015といえます。


■サムスンは基調講演を丸ごと使ってIoT推し

 CES開幕前夜の基調講演はサムスンが担当。スマートホームを話題に据えたIFA 2014での基調講演に続き、あらためて存在感を示す形となりました。

サムスンのCES2015基調講演にIoT元年を見る
↑IoTにより地球規模で人類に幸福と繁栄をもたらさん、といったメッセージ性を感じさせるサムスンの基調講演。ただし、『GALAXY S6』などの新製品を期待した人には期待外れだったかも。

 サムスンは、基調講演の時間をすべて費やしてIoTの普及を訴えるという奇策に出ます。たしかに同日にはプレスカンファレンスにて“SUHD”テレビなどの新製品を発表しており、製品発表は終わっているとはいえ、ここまで思い切ったIoT推しに出るとは予想外でした。

 さらに、5年以内に100%のデバイスをIoT対応にすると宣言。海外ではモバイルだけでなく、白物家電の分野でもトップクラスのシェアがあるサムスンだけに、テレビやデジカメはもちろん、冷蔵庫や洗濯機などあらゆる製品がインターネットに接続することのインパクトは絶大です。

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↑5年以内にすべてのサムスン製品をIoT対応とし、インターネットに接続できるようにすると宣言。

 たしかに現在、“インターネット冷蔵庫”などの製品は、一歩間違えればキワモノ扱いされかねないジャンルです。ただ、ほとんどの冷蔵庫がインターネット機能を標準搭載することが当たり前になる時代も、そう遠くないというのです。

 IoTが普及するとなにが起きるか。劇的に新しい未来がやってくるような言説を耳にする機会も増えましたが、より現実的なのは、毎日の生活が地味に改善されるという効果でしょう。

 たとえば目覚ましの代わりに自動的にカーテンが開いたり、帰宅の時間に合わせてエアコンが部屋の温度を調節してくれることで、ほんの少し快適になります。帰宅したとき音楽がスマホから部屋のスピーカーにシームレスに受け継がれたり、毎日の生活パターンを把握して自動的にお風呂を沸かしてくれれば、時間の節約にもつながります。

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↑リビングルームでのIoT活用例。テレビを見ている間にも、玄関ドアの前に誰かが来たことをお知らせ。画像を見ながら、ドアを解錠するかどうか選択できる。

 かつて家庭の中に掃除機や洗濯機といった家電製品が普及したことで、家事労働が効率化され、仕事や遊びに費やせる時間が増えたことが、ふたたびIoTでも起ころうとしているというわけです。

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↑サムスンが買収したSmartThingsによるアプリ。さまざまな対応機器をスマホからコントロールできる。


■IoT実現に必要なもの=オープンなプラットフォーム

 このように生活の中であらゆるモノがつながる世界を実現するには、メーカーの枠を超えて、さまざまなデバイスやセンサーが相互にデータを共有する必要があります。

サムスンのCES2015基調講演にIoT元年を見る
↑CES2015のサムスンブースでは、中央にIoTコーナーが設けられた。

 サムスンが買収したSmartThingsは、プラットフォームに依存しないデバイスのIoT対応を促進する企業で、家電から防衛産業まで手がけるハネウェルや、ネットワーク機器でお馴染みのNETGEAR、リストバンドが人気のJAWBONEといった企業が参加しています。

 基調講演でサムスンは、開発者に対してオープンであることを、ひときわ強調しました。「IoTにはひとつのOSではなく、オープンなプラットフォームが必要」と呼びかけ、AndroidやiOSといったプラットフォームを牽制する構えです。

 同社もまた、スマートウォッチやテレビのOSとしてTizenを採用しており、今後はSmartThingsに対応したほかの家電製品にも、影響力を及ぼしていく可能性があります。


■日本でIoTは普及するだろうか

 このようにCES2015で大きくIoTをアピールしたサムスンですが、日本で普及しそうは気配は感じられません。むしろソニーやパナソニック、シャープなどの日本メーカーや、エレクトロラックスやLGといった海外大手メーカーが参加するAllSeen Alliance(IoE)のほうが有望といえるでしょう。

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↑QualcommブースでのAllSeen Allianceの展示。こちらはIoTではなくIoE(Internet of Everything)という用語を用いている。

 そういった状況下で、さらにアップルやグーグルといった強力なプラットフォームを握る企業が、IoTの世界にも独自のアプローチで殴りこみをかけてくる可能性が高いといえます。

 そういう意味では、「我々こそがオープンな、真のIoTプラットフォームである」というプラットフォーム争いの幕開けを感じさせる基調講演だったと考えらえます。2015年はIoT元年になる、と予想しておいて間違いはなさそうです。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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