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自動車からテレビまで、2015年のCESは“基盤整備”の年だ(西田宗千佳氏寄稿):CES2015

2015年01月06日 19時30分更新

 世界最大の家電展示会“International CES”。例年は3Dや4Kなどのわかりやすいキャッチフレーズが存在した。しかし、今年は「主軸に乏しい」との声も聞かれる。そこであえて挙げるならば“基盤の変化”こそが軸となる現象だ。

■高度化する自動車に集まる家電・IT産業
 産業的に、まず目立つのは“自動車”だ。

Tegra X1発表 NVIDIAカンファレス CES2015

 CES2015開催“前々日”に発表会を開いたNVIDIAは、モバイル向け新プロセッサー『Tegra X1』と、それを応用した自動車向けプラットフォーム“NVIDIA DRIVE”を発表した。従来から手がけているメーターやナビの表示用だけでなく、“自動運転”を狙ったものだ。Tegra X1の持つ膨大な演算力とクラウド側で行なわれる“ディープラーニング”の組み合わせで、標識や人、自動車などを見分けて走行する。アウディとNVIDIAは共同でこのプロジェクトに取り組む。ダイムラーやメルセデス・ベンツも、CESで自動運転向けのコンセプトカーを発表した。

Tegra X1発表 NVIDIAカンファレス CES2015

 NVIDIA同様、そうした自動車メーカー向けのニーズを、デバイス開発能力に長けた家電メーカーが狙う。パナソニックは、自動車向けリチウムイオン電池の生産ではトップであり、今後は車内システムにも力を注ぐ。シャープは自由な形状がつくれる“フリーフォーム液晶”を米国で初お披露目し、自動車コンソールなどの市場を狙う。ソニーは得意のイメージセンサーを、衝突回避や自動運転用にと、本格的な展開を目指している。ソニーの平井一夫社長は、プレスカンファレンスの中で「市場調査によると、自動車向けイメージセンサーの市場規模は、これからの5年で4倍に拡大する」と語り、強い期待をのぞかせた。自動車は市場規模も単価も大きい。IT化・ネットワーク化が本格化する“最後の大物”だ。

■テレビが“スマホ由来OS”で動く時代に
 しかし、自動車の変化は「今年来る」わけではない。街中を高度なプロセッサとセンサーとネットワークに支えられた自動運転車が製品化され、街中を走り回る時代は、まだ最低でも数年以上先のこと。個人の目からみれば、ようやく助走が始まった段階に過ぎない。

 一方テレビは、各社がそろって、大きな技術的変化の時期を迎えようとしている。“OSと基本設計”が変化しようとしているのだ。各社とも、テレビに“スマホ由来”のOSを改良して搭載し、2015年中に製品化する。ソニーとシャープはAndroid、パナソニックはFirefox OS、サムスンはTIZEN、LG電子はWebOSを使う。OS種別こそ異なるものの、狙いは同じ。「画質が変わる」、「解像度が上がる」、「3Dになる」といった話よりは地味だが、よりモダンなOS技術を採用することで、4K対応映像配信や高度なウェブサービスをテレビで実現しやすくなり、動作もスマホのように“サクサク”になる。スマホの写真や動画をテレビに表示するのも、より簡単になる。

ソニー新製品:CES2015

「テレビは儲からない」と言われている。しかし、4Kによって単価は上がった。次は、機能や快適さでの改革を進め、テレビを買い換えるモチベーションを高めることが必要になる。起爆剤としての変化ではなく、今後のテレビに必要な“技術基盤整備”という側面が大きい。

 ハードウエア系のベンチャーや小規模企業からは、いわゆる“IoT機器”の出展が目立つ。スポーツ用品からネットおもちゃ、園芸サポート器具までバリエーションは広く、製品どうしの関連性は薄い。しかし、どれもが「スマホとの連携ありき」であることだけは共通だ。スマホがあたりまえに存在することが“産業の基盤”になりつつある。「すべての家電をスマホが置き換える」時代から、「スマホありきで外に付加価値を見いだす」時代になった、とも言えそうだ。

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