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とんでも炊飯器『INFOJAR』実現化の舞台裏とは?auと虚構新聞の因縁に迫る

2015年01月08日 08時00分更新

 2014年12月に『au未来研究所』が完成を発表した炊飯器『INFOJAR』をご存知でしょうか。

INFOJAR

 『虚構新聞』というあえて真実ではないニュース記事を配信するスタイルのエンタメサイトで2014年1月に配信した内容が現案となり、auの機関のひとつであるau未来研究所が製品化したという、嘘のような炊飯器です。

 革新的なデザインの携帯電話として2003年に誕生した『INFOBAR』シリーズをモチーフにしたまさかの炊飯器。

 7インチ、フルHDのタッチ液晶(AQUOS PAD)を搭載し、ごはんを炊きながらYoutubeの視聴が可能。AQUOS PADとは別途Firefox端末(ドングルタイプ)を搭載しており、ご飯が炊きあがると“ごはんなう”と自動ツイートしてくれる機能を備えるなど、虚構記事として記載された内容が忠実に実現されています。

 INFOJARの開発にはau未来研究所編集部員以外にコミュニケーションロボットなどを開発するユカイ工学のエンジニアが参加するといった本気具合でした。
 なぜauはそこまでして、虚構ネタを実現したのでしょうか?

 虚構新聞社主UK氏は奇しくもINFOJARの完成発表がされた前日にauに突撃取材を敢行していました。そこでは、INFOJARをつくりあげたauの真意や、auと虚構新聞の意外な因縁が見えたのでした!

●auに乗り込んだ虚構新聞社主

INFOJAR
INFOJARのネタ元である『虚構新聞』の社主UK氏がauに突撃取材。

 虚構新聞にとって記事内容が真実となると“誤報”となるため、INFOJARの実現は死活問題。

 すでに開発が進められていたINFOJARの成否があきらかになるとみられた日(au未来研究所のINFOJAR開発コラムで最終回の予告がされていた)、虚構新聞社主は滋賀から東京へ自前のお箸とお茶碗を持ってauに乗り込みました。その胸中には、虚構が実現となるのは不本意だけど、責任をもってその全容を目に収めたいという使命感がありました。

●INFOJARはまだ未完成でした

INFOJAR

 auに乗り込んでから不測の事態が発生。現場にはINFOJARはありませんでした。なんと、その時点においても別途作業場で鋭意開発中ということだったのです。

 虚構新聞社主はどうせ腹をくくるならINFOJARの現物を目にしてみたかったという一方、まだ完成していないことで深い安堵を覚えたようでした。

「謝罪できなくて残念だわー」

 と、その場にいたau担当者をあおるような言葉をもらしましたが、「その翌日すぐに完成させるレベルにまで達しているとは思わなかった。今は反省している」と後に語っています。

●そもそもなぜINFOJARをつくろうとしたのか

 INFOJARの実物こそありませんでしたがせっかくauまで乗り込んできたので、なぜINFOJAR何て物を実際につくる経緯になったかをauに問い詰めることにした虚構新聞社主。

「なにを思ってINFOJARを本当につくる気になったんですか?」

INFOJAR
auの担当者に数名に詰め寄る虚構新聞社主。

 以下がau担当者からの答弁でした。

 今回、INFOJAR開発にあたったのは『au未来研究所』。研究所といいますが本物の研究機関ではありません。ですが、実在するKDDI研究所の付帯組織という位置づけになっており、未来のスマートフォン開発に向けたイノベーションの創発を目的としてauとユーザーを結びつける役割を担っています。

 2013年に発足したau未来研究所は、第1弾の大きな取り組みとしてスティーブンスティーブンとコラボレーションしたアニメーションを順次発表しました。2014年は第2弾として、衣食住をテーマにしたガジェットのハッカソンを3回にわたって開催しました。アイデア出しやディスカッションを行ない、プロトタイプの制作までを実際に行なっています。

 このような“スマホの次”の発明のプロトタイプを実際につくっていくという取り組みの一環として、虚構新聞の『INFOJAR』を実現したらおもしろそうと、今回開発にあたったわけです。

●虎視眈々と虚構新聞をやり込む機会を狙っていた

「虚構新聞でINFOJARのネタを掲載したのは2014年の1月だったところ、開発コラムがスタートしたのは11月と半年以上タイムラグがあったのはどうしてですか? 2014年の虚構新聞は謝罪ゼロになりそうだったのに……」

 虚構新聞社主の質問に、auの担当者は不敵な笑みを浮かべました。

 虚構新聞の記事でINFOJARが配信された2014年の1月当初より、我々はおもしろそうだと目をつけていたんですよ。これをなんとか実現できたら話題になるだろうと。

 au未来研究所はちょうどそのときはアニメーションの配信などをメインに行なってる段階でしたが、夏ごろからハッカソンといったアイデアを実現化するという取り組みをメインに行なうようになったため、絶好の機会と以前より注目していた虚構新聞のINFOJAR開発企画を11月よりスタートすることになったのです。

INFOJAR
虚構新聞社主は思わず煮え湯をくわされたような顔に。

 虚構新聞に掲載当初、無事に黙殺されたとみられたINFOJARでしたが、auは直目していたということでした。これには虚構新聞社主も煮え湯を食わされたような表情を浮かべました。

 auは前から虚構新聞さんにはいろいろとネタにしてもらっていますから、実はこういう機会を心待ちにしてました。

 ニヤリっと笑うau担当者。 
 そうです、auと虚構新聞はかねてより因縁があったのです。

 虚構新聞ではかつてauのキャラクター、リスモ君の訃報記事を掲載。これは後に一部現実となり(社主としても非常に不本意だったそうです)、虚構新聞の誤報となったことは両者に複雑な感情を生んでいたのです。

 auはそのような因縁から、虚構新聞にギャフンと言わせる機会を虎視眈々と狙っていたそう。おそるべしauの執念!

●虚構新聞社主の悲痛な叫び

「INFOJAR企画当初に開発にあたっていたのは文系のFさんだけだったのに、ロボットを製品化しているユカイ工学さんが乗り込んでくるなんてズルじゃないんですかね」

「えいやと設定した7インチフルHDディスプレーというスペックに、“auにはAQUOS PADがあるじゃないですか”なんて持ってこられた日にはたまらなかった」

 au担当者の気迫に押された虚構新聞社主はどんどん質問ともつかない泣き言をこぼすようになったため、週アス取材班の私はいたたまれなくなりその場を去ろうと促した次第です。

●auを虚構新聞社主が撤退したその後

 さて、au未来研究所のサイトでINFOJARの完成が発表されたのは、その翌日のことでした。即座に社主は公式に謝罪記事を配信。今思えばauから虚構新聞社主が撤退したその瞬間まさにINFOJARが完成して初炊きのを迎えていたのかもしれません。

INFOJAR
虚構新聞社主とINFOJARが向かい合った瞬間。

 見事に現実となったINFOJARは、12月に開催されたFirefoxのイベントでメディアに披露され、後に京都に移動し虚構新聞社主を交えた試食会がしめやかに行なわれました。

INFOJAR
ついに、自前のお箸とお茶碗でINFOJARのお米を食べるに至った虚構新聞社主。

 今回のINFOJARの件では、auの執念に虚構新聞が屈服するという結果になりました。
 虚構新聞では、2013年には森永の『DARS(ダース)』が12個入った『GROS(グロス)』が製品化されてしまったため、2014年にはかなり警戒して実現可能かもしれない内容を避けていたということ。それにも関わらず、年末ギリギリにINFOJARが実現化されていまい、かなりのショックを受けた模様です。

「最近は、企業がちょっと信じられないような内容でもやっきになって現実にしてしまう」

 と、虚構新聞社主は嘆息交じりにつぶやいていました。

 2015年は謝罪ゼロを目指すと息巻いている虚構新聞を、我々として静かな気持ちで見守るばかりです。

INFOJAR
捨てゼリフを吐きながらも、応接室に展示されていた歴代のau携帯と記念撮影した写真。なんとしっかり見るとINFOBARも!

■関連サイト
特別コラム | au未来研究所
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