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DTMの世界に新しい風を吹き込む鍵盤付きiPadケース(藤本健氏寄稿)

2014年12月18日 21時30分更新

  “ポップアップする鍵盤”、“世界初のBluetooth MIDIを使った鍵盤”ということで、先日大きなニュースになったMIDIキーボード『Miselu C.24』を実際に使ってみました。

C.24

 なんといってもユニークなのは、普段はペタンコな板のようなものが、ボタンを押すとガシャンと飛び出して立体的なキーボードに変身するということ。ボタンといっても電気仕掛けでウィーンと出てくるのではなく、まさに飛び出す絵本のように勢いよく、ガシャン、と。

 これが電源を入れるスイッチにもなっており、電源オンにした状態でBluetooth接続すると約20時間使えるワイヤレスのキーボードとなっているのです。これだけ長時間使えるのは、本体内部にガムのような大きさのリチウムイオン電池が入っているのと、Bluetooth LE=低消費電力型Bluetoothを使っているため。バッテリーの充電はマイクロUSBの端子からの電源を供給するようになっています。

 このC.24をBluetooth接続できるのは、現時点ではiPadやiPhoneといったiOSデバイスとOS X 10.10 Yosemiteが入っているMac。ワイヤレスでという利用シーンを考えると、iOSデバイスがメインとなると思います。

C.24

 では、どうやってiOSデバイスと接続するのでしょうか?方法は2つあります。まずは販売元のMiseluが出している無料アプリ『Miselu Key』を利用する方法です。これを起動すると、C.24を自動的に見つけ出してくれます。そしてこのMiselu Keyを経由してシンセサイザーアプリや楽器アプリ、DAWアプリなどに演奏信号を送信できるのです。

 たとえば、AppleのGarageBandなどを操作可能です。詳しくはiOS標準の仕組みであるCoreMIDIというAPIを利用しているので、現在ある楽器系アプリの大半が利用できると考えてよさそうです。

C.24

 もう1つの使い方は、アプリと直接接続する方法です。実はGarageBandが備えている、Bluetooth対応のMIDIと直接接続する機能を使えば、Miselu Keyに頼ることなく使えるのです。こうした機能を装備したアプリは少しずつ増えてきており、日本の楽器メーカーであるKORGが11月に発売した『Module』というキーボード音源アプリや、日本人プログラマーであるbismarkさんが開発した『bs-16i』などがあります。

C.24

 では、実際に弾いてみるとどうなのでしょうか……。とっても変わった立体型キーボードであり磁石で反発するユニークな構造で、初めて触るとタッチ感などが不思議な感じもします。しかし、数分弾いて慣れてくると、なかなかいい弾き心地です。ベロシティー対応なので鍵盤を強く弾けば大きな音が出ます。ストリングス系の音色などはタッチしたあとに鍵盤をこすると、それに反応してくれる(アフタータッチ対応)など、小さいくせになかなか使えますよ。

C.24

 使い方としてユニークなのは、鍵盤の左右にある光センサーです。左側のセンサーを手をかざすとオクターブを上下させられるので、2オクターブの鍵盤ではあるけれど幅広い音域に対応できます。一方、右側のセンサーに手をかざすとピアノのペダルを踏んだ状態となってサステインが掛かるようになるんですね。ここも操作に慣れが必要にはなりますが、とってもよく考えられています。

 ただし、ひとつ気になったが反応のスピードです。DTMの世界ではレイテンシーなどと言いますが、鍵盤を押してから音が出るまでの間に0.03秒~0.05秒程度の遅れがある感じなのです。時間的にはごく短いものではあるのですが、弾いてみると少しもたつく感じ。この点は、今後改善していくということなので、ぜひ期待したいところですね。

 ちなみに、充電用のマイクロUSBの端子をLightning-USBカメラアダプター経由でiPadやiPhoneに接続して使うことも可能です。この場合はレイテンシーはほとんど感じなくなるので、やはりBluetooth経由での音の遅れということなんでしょうね。

C.24

 なお、このC.24は楽器メーカーが出すキーボードとは1つ大きな違いがあります。そう2オクターブのキーボードは普通は下のド~上のドまでの25鍵なのですが、これはド~シまでの24鍵となっているのです。

 実はここには大きな理由があります。それは2つのC.24を並べると48鍵のキーボード、3つ並べれば60鍵のキーボードとして使えるようになることです。この場合、別々のデバイスとしてiOSデバイスと接続した上で、前出のMiselu Keyが連結してくれるんですね。楽器メーカーでないベンチャー企業の開発だからこそできるユニークな発想なんだと思いますが、DTMの世界に新しい風が吹き込んできた感じで、楽しいですね。

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