週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

Windows情報局ななふぉ出張所

スマートデジカメではカメラ機能がアプリのひとつになる

2014年10月01日 17時00分更新

 ドイツ・ケルンで2014年9月16日から21日まで開催されたフォトキナ2014では、多数のカメラやレンズ、周辺機器などが発表されました。

 その中でも主役級の注目を集めたのが、パナソニックのLTE通信機能搭載デジタルカメラ『DMC-CM1』です。キャリア向けスマホ事業からの撤退後、モバイル業界から遠ざかっていたパナソニックが開発した製品でということもあり、デジカメ業界・スマホ業界の両方から熱い視線を集める、期待の新製品となっています。

スマートデジカメではカメラ機能がアプリのひとつになる
↑『DMC-CM1』。パナソニックは“コミュニケーションカメラ”と位置付ける。

■なかなか普及しなかったAndroidカメラ

 OSとしてAndroidを採用したデジタルカメラは、サムスンの『GALAXY Camera』や、ニコンの『COOLPIX S800c』など、すでにいくつか発売されています。また、スマホや携帯電話に大きなレンズを搭載した製品としては、ソニーモバイルの『Cyber-shot ケータイ』や、サムスンの『GALAXY K Zoom』などもあります。

スマートデジカメではカメラ機能がアプリのひとつになる
↑サムスンの『GALAXY Camera 2』。光学21倍ズーム搭載のAndroidデジカメとして知られる。

 ただ、カメラ業界全体を見ても、Androidの採用はそれほど進んでいない印象を受けます。Xperia Zシリーズのように、デジカメの技術をAndroidスマホに取り込むという事例はよくあるものの、その逆は少ないのが現状。Wi-Fiの搭載や、スマホアプリとの連携機能などにとどまっています。

 その一方で、カメラメーカー各社は、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)の需要が急速に落ち込んでいることを認めており、その背景にはスマホの普及があることも共通の見解です。このトレンドに対抗するため、今後のコンデジはAndroidの採用がどんどん進むのではないかと筆者は予想していました。

 しかしカメラメーカーはミラーレスや高級コンデジなど、より高級なカメラを追求することは得意としているものの、カメラのスマート化に踏み出したのはニコンなどごく少数のメーカーに限られています。そこで登場したのが、スマホベースのデジカメとしてのDMC-CM1です。

■なぜデジカメから直接ツイートできないのか?

 スマホのカメラで写真を撮ることに慣れてしまうと、一般的なデジカメが圧倒的に使いづらいことに気付きます。デジカメで写真を撮影し、クラウドに保存するという単純なタスクを考えても、いちいちPCやタブレットを経由させる必要があります。

 撮影した大量の写真の中から目的の1枚を素早く選び、TwitterやEvernoteに投稿するという機能もありません。タッチ対応の液晶を備えたデジカメは増えているものの、スマホのように大量の写真を高速にスクロールすることはできず、ストレスが溜まります。

 デジカメにありがちなこうした問題を一気に解決するがの、DMC-CM1です。パナソニックによれば、欧州ではカメラ店を通して販売し、家電量販店ならスマホではなくデジタルカメラ売り場に並ぶ商品としており、「あくまでデジタルカメラ」と主張しています。

 たしかにDMC-CM1は、外装こそデジカメの様式を採り入れているものの、電源を入れてみれば一般的なAndroidスマホそのものであることが分かります。Lumixシリーズの操作感を再現したというカメラ機能も、Android上で動作するカメラアプリをカスタマイズすることで実装されています。撮影した写真は、サードパーティのAndroidアプリを用いての編集やアップロードが可能です。

スマートデジカメではカメラ機能がアプリのひとつになる
↑液晶画面側は、Androidスマートフォンそのもの。操作もなめらかだ。
スマートデジカメではカメラ機能がアプリのひとつになる
↑外装にはカメラ的な様式を採り入れている。三脚穴はないが、スマホ用のグリップ式三脚などを利用できる。

 カメラ機能が”アプリ”として実装されているのは、なかなか興味深い点です。携帯電話がスマートフォンに進化することで、電話機能がアプリの1つになったことと似ています。スマートなデジカメにおいて、カメラ機能はアプリの1つになるといって良いでしょう。

スマートデジカメではカメラ機能がアプリのひとつになる
↑カメラアプリで撮影中の様子。ユーザーインターフェイスはLumix仕様となっているが、実装はAndroidのカメラアプリのカスタマイズとなっている。
スマートデジカメではカメラ機能がアプリのひとつになる
↑デジカメを名乗るだけあって、カメラアプリの設定項目も豊富だ。

■小さなDMC-CM1に感じる大きな不安

 DMC-CM1はこれまでにない製品である一方で、いくつか不安を感じる点もあります。

 まずは単焦点レンズです。DMC-CM1では大型の1インチセンサーを採用したにも関わらず、レンズは光学ズームではなく単焦点にとどまっています。しかも撮影時にはレンズがわずかに飛び出る仕様にも関わらず単焦点という点に、やや残念さを感じます。

スマートデジカメではカメラ機能がアプリのひとつになる
↑撮影時には飛び出るが、28mmの単焦点レンズとなる。レンズの周囲にはフィルター溝も切られており、いろいろな拡張ができそうだ。

 DMC-CM1は非常に薄型のデジカメとはいえ、ポケットに気軽に入れて持ち歩くには、かなり存在感のあるボリュームです。このサイズなら、むしろ光学ズームを搭載したほうがスマホとの差別化になったのでは、とも思えてきます。ただしパナソニックによれば、1インチセンサーなのでトリミングにも十分に耐えられるとのこと。

 もう1つは、販売方法です。パナソニックはキャリア向けのスマホ事業から撤退した経緯もあり、現在のスマホの販売モデルを否定的に見ているようです。その結果、DMC-CM1はキャリアを通すのではなくSIMフリーを基本に販売するとされています。

 ただ、日本での価格は未定とはいえ、欧州で税込899ユーロ(約12万4400)という価格から、日本では10万円以上になる可能性もあります。これほど高価な端末を買うとすれば、どうしてもキャリアによる毎月の割引に期待してしまうところです。

 保証についても、ドコモでは有料の『ケータイ補償サービス』により、水濡れや紛失、全損がカバーされます。しかしデジタルカメラではパナソニックや販売店が提供する保証に頼るなど、代わりの方法が必要です。

 こういった不安要素をクリアし、DMC-CM1は次世代のスマートデジカメになることができるでしょうか。まずは日本での発売時期の確定を待ちたいところです。

【2014年11月25日訂正】説明文にストラップホールもある、としていましたが、正しくはスピーカーの一部です。お詫びして訂正致します。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう