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“スマホの次”は“Pepperくん”になるのだろうか(石川温氏寄稿)

2014年09月24日 16時30分更新

Pepperくん

 iPhone6/6 Plus発売に沸いた翌20日、ソフトバンクが開発した感情認識ロボット『Pepper』の開発者向けイベントが開催された。Pepperは来年2月に一般発売が予定されているが、Pepper用のアプリを開発してもらおうと、アプリ開発者だけでなくクリエイターなども参加した。

Pepperくん
↑当日お持ち帰りを当選させたナナミさん(左)。

 Pepper開発を手がけるソフトバンクロボティクス・冨澤文秀社長は「ロボットは日本のお家芸であり、世界には絶対に負けられない。ここにいる開発者たちがPepperの可能性を切り拓く」と語り、アプリ開発への参加を促した。会場では開発キット(SDK)が配布され、さらに抽選で選ばれた1名にはPepperをその日のうちに宅配されたのだった。

 ソフトバンクがロボット事業に注力する背景にあるのは、同社の主力となる“スマホの次の事業”を育てるためだ。ソフトバンクは、80年代にパソコン用ソフトの流通業からスタートしている。以後、インターネット普及期である90年代には、ADSLを街角で配布して、Yahoo!を軸とした事業を展開。2000年代には、ボーダフォンを買収して携帯電話事業に参入。2010年代はiPhoneを中心としたスマホを舞台としてソフトバンクは成長している。

 IT業界において「スマホの次は何か」と聞かれて、自信を持って答えられる人はほとんどいない。アップルも参入した“ウェアラブル”の可能性もあるが、サムスン電子やソニーも手探りの中、ウェアラブル端末を市場に投入しており、いつごろ、ヒットするかもわからない状態にある。

 そんななか、ソフトバンクが大勝負に出たのが“ロボット事業”だ。ロボット開発ですでに実績のあったフランスのアルデバラン社を2012年に買収。“タロウ”というコードネームでPepperを開発し、iPhoneなど数多くのIT製品の製造を手がける中国・フォックスコンに製造を委託した。

 Pepperは単なるロボットではない。クラウドにつながっており、日々、進化するのだ。今回、ソフトバンクが開発者を集めてイベントを実施した背景にあるのは、Pepper向けの「アプリストア」を来年2月に立ち上げ、まるでスマホのようなビジネスモデルを展開したいという狙いがあるからだ。

 サービス開始当初は無料アプリのみの配布となるが、将来的には課金システムの導入も視野に入れている。
 
 アップルやグーグルが、アプリ配信プラットフォームで世界を支配しているが、ソフトバンクもロボット向けアプリの配信プラットフォームを先駆けて展開しようとしている。
 Pepperは「19万8000円(税抜き)で買える」というのが話題になっているが、部材や開発費などを考慮すれば、本来であれば20万円前後で買えるものではない。Pepperを利用するにはネットにつなぐ必要があり、毎月、利用料を支払う仕組みだ。

 今回、開発者向けに先行して200台が販売されることになったが、開発者向けの「デベロッパー特別パック」は、月額9800円(税込み)を36カ月支払うプランとなっている。

 一般向けの販売時にどれだけの月額料金が設定されるかは未定のようだが、デベロッパー向け特別パックに近いかたちにはなるだろう。

 これまでロボットと言えば、高価なものであり、一般家庭に普及するなど先のことだった。しかし、ソフトバンクは、ロボットに「初期投資は安く、月額課金で回収する」という“スマホ型の販売モデル”を導入してきた。

 ケータイやスマホが“実質0円”という売り方で爆発的に普及したように、Pepperもいずれ“実質0円”で一気に各家庭に普及するなんて可能性もあり得る。

Pepperくん

 アプリ開発者がPepperで儲かるには、大量のPepperが普及し、有料課金アプリが売れる必要がある。Pepperが売れなければ、面白アプリが揃わない。結果としてPepperの魅力は半減してしまう。Pepperを生かすも殺すもアプリ次第と言えるのだ。

 さまざまなIT企業が“スマホの次”を模索するなか、ソフトバンクのロボット事業は、“いかに急速にかつ大量にPepperを普及させて、アプリ開発者を集めるか”が急務だ。

 キャリアとして、端末を普及させるという点においては強いソフトバンクだけに、あとは“アプリ開発者が儲かる仕組み作り”が欠かせないと言えそうだ。

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