お盆休みも明けた8月18日より、ソフトバンクとKDDIによるスマホ・タブレットの新機種が相次いで披露されました。大型端末がいくつも登場するとみられる9月を前に、日本市場に登場したこの3つの端末について、発表会の模様を振り返ってみたいと思います。
■日米共同開発が特徴の『AQUOS CRYSTAL』
まずは8月18日のソフトバンクモバイルによる発表会。ここではスプリントと共同開発したという新モデル『AQUOS CRYSTAL』を発表しました。以前に孫社長は「大型の発表会はもうやらない」と宣言したものの、単発の製品については開催していくようです。
↑スプリントとの共同開発が特徴のAQUOS CRYSTAL。おサイフや防水といった日本的な機能が省略されたミドルレンジ端末だが、フレームレス構造などシャープの独自技術が光る。 |
これまでにもシャープは、画面周囲の3辺のベゼルが狭い“三辺狭額縁”の端末を得意としていました。そしてCRYSTALでは、それをさらに進化させた”フレームレス”が特徴となっています。国内ではともかく、海外の平均的なミドルレンジ端末と比べると、かなり凝った仕様といえます。
なぜシャープはここまで技術力がありながらグローバル市場で勝負しないのか、と筆者も残念に思っていただけに、今回の米国デビューは非常に楽しみな点です。
ただ疑問が残るのは、約5万円で単体販売している高級スピーカーを、標準で同梱するという点です。スマートフォン本体の価格は、スプリントでは239ドルであるのに対し、日本版はスピーカー込みで5万4480円と2倍以上。たしかにスピーカーの値段を考えれば“お買い得”であることは間違いないのですが、スマートフォン本体だけをもっと安く買いたいという声も、少なくないのではないでしょうか。
↑AQUOS CRYSTALと、標準同梱のharman/kardon ONYX STUDIO。なぜスピーカーなしで購入できないのか、という声も上がっている。 |
国内キャリアから発売されるミドルレンジ端末として、ユニークな存在になりそうな可能性を秘めているだけに、やや残念なところです。また、発表会に孫社長が登場しなかったこともあり、いまひとつ盛り上がりに欠けた感がありました。
↑“実質0円”を強調したが、質疑応答では端末価格を即答できない一幕も。なお広報担当者は当日資料をもっており、価格自体は決まっていたが、情報共有がされていなかったようだ。 |
ちなみに、交換可能なカバーのラインアップにはなかなか気合いが入っており、特に女性を意識したデザインが充実。その理由としては、画面は5インチと大きめながらもフレームレスのおかげで本体幅は67mmと細く、女性の手でも持ちやすい端末になっているため、としています。
↑AQUOS CRYSTAL用の、スワロフスキーのクリスタルをあしらったカバー。価格は1万2000円。 |
■女性ユーザーの多い『HTC J butterfly』が復活
翌8月19日にはHTCがイベントを開催し、新しい『HTC J butterfly』(HTL23)を発表しました。
↑台湾から来日したHTCのピーター・チョウCEO(左)と、KDDIの田中孝司社長(右)。最近はisaiシリーズでLG製品が増えたKDDIだが、HTCとの関係が良好なことをアピールした。 |
HTCといえば、初のAndroid端末である『T-Mobile G1』や、初のNexusシリーズ『Nexus One』など、アーリーアダプターのユーザーが多いという印象があります。金属ボディが特徴のフラグシップ機『HTC J One』でも、男性ユーザーがほとんどを占めていたとか。しかし、前モデルのHTC J butterflyに関して言えば、女性ユーザーの比率が高かったとしています。
↑前モデルHTL21でも印象的だったレッドは今回も健在。重厚で存在感のある美しいカラー。 |
2つのレンズにより3D要素を備えたカメラやJBLのイヤフォンを同梱。見た目にもおもしろいドットビューカバー、キャップ式ではないmicroUSBポートなど、着実に進化を遂げています。KDDIによれば「HTCユーザーはHTC機にこだわる傾向が強い」とのことから、後継機を辛抱強く待っていた人にとっては朗報といえるでしょう。プロモーションには前モデルに続き、乃木坂46を起用。HTCファンの期待にも応える形となっています。
↑ドットビューカバーなどの新要素を、プロモーションに起用された乃木坂46が紹介した。 |
個人的に気になっていたSIMフリー市場への参入について質問してみたものの、ピーター・チョウ氏は「キャリアとのビジネスを大事にしていく」との回答にとどめています。LGが日本市場に投入した『LG G2 mini』のように、HTCには日本未発売の『HTC One mini 2』があります。これを機にSIMフリー市場に参入してくれれば面白い勢力になるのですが、もう少し時間がかかりそうな印象です。
↑発表会は当初の予定をオーバーし、かなりの長丁場に。アジアから集まった海外メディアに、乃木坂46の魅力をこれでもかというほど伝えまくったともいえる。 |
■『MeMO Pad 8』で女性にもタブレットが普及?
さらに翌8月20日には、ASUSが『MeMO Pad 8』の発売記念イベントを開催。同社として初となるというKDDIからのキャリアモデルとなるタブレットを披露しました。
↑ASUSからはKDDIキャリアモデルのタブレット『MeMO Pad 8』を発表。同名のWi-Fiモデルより大幅にハイスペックだ。 |
ASUSといえばもともと自作PCなどの分野で知られており、タブレットについても男性ユーザーが多いとのこと。それに対して今回は女性ユーザーを意識、イベント自体も南青山の結婚式場を貸し切る形で行われるなど、ASUSの並々ならぬこだわりを感じるイベントとなりました。
↑7.7mm、約301gと、最新の8インチタブレットとして申し分ないレベルの薄型軽量な仕上がりとなっている。 |
もちろん国内初となる最新Atomプロセッサーの搭載や、インテル製とみられるLTEチップセットなど、基本仕様にも強く興味をひかれるところがあります。そのため、プレゼンテーションでもインテルによるベンチマーク結果のグラフが示される場面もありました。
↑ベンチマークのグラフは興味深いが、製品コンセプトからすれば関連性の低い情報ともいえる。 |
ASUSの発表会と聞いて集まったIT系のメディアにとっては興味深い情報ですが、やや製品の訴求ポイントとは合っていない印象を受けました。「多忙な女性の、就寝前や休日の“自分時間”に使ってもらいたい」という製品コンセプトは優れているだけに、結婚式場という会場をフルに活かし、もっとストレートに訴求したほうが良かったのではないかという印象を受けました。
■HTCはWindows Phone端末の開発を継続
Windows Phoneについて、ソフトバンクとスプリントの共同開発プラットフォームについては「将来の計画にはコメントできない」との回答にとどまりました。また、HTCのチョウCEOも今後の予定について明言を避けたものの、直後に米Verizon Wireless向けの『HTC One(M8)for Windows』を発表。ローエンド端末の発表が続いていたWindows Phone 8.1において、久しぶりに注目の端末となりそうです。
山口健太さんのオフィシャルサイト
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