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札幌国際芸術祭2014開催中!「都市がメディアとなって表現する」芸術の祭典

2014年08月26日 21時00分更新

札幌全体を舞台にした芸術祭

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 近年、世界各地や日本国内で、地方都市で開催される芸術祭が増えている。『横浜トリエンナーレ』を筆頭に、新潟県の『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』、瀬戸内海地域を舞台とした『瀬戸内国際芸術祭』──など、地域の風土とアートが結びつくことで、その場でしか味わえない驚きや興奮、そして癒しを与えてくれる。

 北海道札幌市で開催中の『札幌国際芸術祭2014』は、そうした大規模芸術祭のなかでも、特にメディアアートに大きなウエイトを置いたユニークなものだ。今年が初開催となるこのアートフェスティバルのテーマは、「都市と自然」。同市の歴史文化・風土、都市機能、地域経済や産業、暮らし方をアートの視点で見つめ直すことで、都市と自然の共生の在り方を問うというものだ。

 ゲストディレクターとして音楽家の坂本龍一氏が招待され、同氏にとっても初の取り組みということで期待を集めていた。実際にどんな作品群が展開されているのか、その一部を現地からレポートしよう。
 

公演・都市・森林・仮想空間に広がる展示

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 大規模芸術祭の多くは、1日では巡りきれない大規模な区域にまたがって開催される。札幌国際芸術祭もまた、市の北東にあるモエレ沼公園から、市街中心を抜け、南区の森の中にある「札幌芸術の森」までの広大なエリアで展開されている。まさに札幌市が持つ都市と自然を体験できる構成だ。
 

地下道がメディアアートのミュージアムに

 最初に向かったのは、札幌駅と大通公園を結ぶ地下道「札幌駅前地下歩行空間」。北海道で最も多くの人が行き交う場所だ。地下道といっても、商店街や薄暗い単なる通路といった、都市部によくあるものとは異なる。この空間の両側にはまるでイベントホールか高機能オフィスのような映像や音響、照明などの機能が実装されているのだ。平素は市民の活動の発表やマルシェ、さらにはハッカソンや勉強会まで開かれている。

 現在はこの地下歩行空間が、長さ500m超の巨大なアートギャラリーに生まれ変わっている。ここでは、インターネットをめぐる「リアル」をさまざまな側面から追及しているアートユニット、エキソニモの作品「DesktopBAM」や、菅野創氏とyang02「セミセンスレス・ドローイング・モジュールス」が目を引いた。

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 DesktopBAM(上)は、OS Xが標準で備えるサウンドエフェクトやVoiceOverなど音声と、アプリやFinderの動作を組み合わせて音と映像のユーモラスなショーを投影する作品だ。

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 セミセンスレス・ドローイング・モジュールス(上)は、色とりどりの自動筆記ペンが壁面に巨大なビジュアルを描く作品。センサーによって通行人の数を検知し、その情報を元に、上から吊されたロボットが壁面を彩っていく。
 

自然を感じさせるメディアアート群

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 モエレ沼公園の中のガラスピラミッド空間に設置された、4KのLEDディスプレイで展開する「センシング・ストリームズ-不可視、不可聴」は、坂本龍一氏と真鍋大度氏の共作だ(上)。真鍋氏はPerfumeのライブ演出など、データ可視化による斬新な表現で注目を集める気鋭のアーティスト。

 地下歩行空間に飛び交う電磁波をリアルタイムで検知し、そのデータを真鍋氏が映像化、坂本龍一氏音楽に変換し、巨大なディスプレイに出力する。電磁波という、普段は意識することのない存在を顕在化させる作品だ。
 

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 北海道のこの地を開拓し、巨大な都市へと成長させた背景には、豊かな湧水の存在とその流れがもたらす住みやすさがあった。そうした住みやすさを生む湧水地をアイヌ語で「メム」という。北海道で最も人の流れ(ストリーム)が多い地下歩行空間は、メムが生み出す豊かな水の流れと重なる。

 毛利悠子氏は、メムを求めて、当初の展示会場である「地下歩行空間」とは別の展示場所を探した。そこで発見したのは、明治時代の開拓初期から憩いの場となり、現在まで残る「精華亭」という歴史的建築物だ。その周辺だけが、近代の札幌の開拓都市プランである整然とした碁盤の目ではなく、自然の地形の流れに沿って建物と街路が今でも配されている。

 この館の中で毛利氏が展示したのが『サーカスの地中』(上)。世界各地で展示を続けながら、展示先で見つけた「もの」を蒐集し、モーターや太陽電池などと結びつけて動きを与える作品だ。札幌では、同地で数多く出土する貝の化石が加わった。
 

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 札幌芸術の森にある美術館では、中心地にある北海道立近代美術館とともに、メインテーマの「都市と自然」を題材にキュレーションされたアートが展示されている。圧巻なのは、中谷芙二子氏による霧の彫刻『FOGSCAPE #47412』(上)。人工的に噴出させた霧をコントロールすることで、幻想的な景色とひんやりとした感触を体感させる。
 

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 ドイツを拠点に活動するトマス・サラセーノ氏は、異なる種類のガラスケースの中に放ち、それぞれの模様のクモの巣を張らせることにより、ひとつの彫刻作品『孤立性、社会性、準社会性のハイブリッドな楽器「三角座」:1匹のシロホシヒメグモ(10日間)、イワガネグモ科のクモの小共同体(4カ月)、2匹のオオワレズミグモの子(2週間)によって制作されたもの』(仮題)をつくり出した(上)。

 そのほかにも、道立近代美術館で展示された、カールステン・ニコライ氏による雪の結晶を人工的に生成する作品など、自然現象を用いた表現が多数展示されている。天然の力をアートのための媒体とするこれらの作品は、観客に思いがけない体験として自然を実感させてくれるだろう。

 札幌国際芸術祭では、都市をかたちづくっている自然をメディアアートによって浮き上がらせる数々の作品が展開されている。都市を成立させている、その地が持つ力。このアートフェスは、テクノロジーを用いてそれを前景化し、五感で確認させてくれる場であり、プロジェクトなのだ。

札幌国際芸術祭2014
■開催期間 2014年7月19日〜9月28日まで開催
■主催 
創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会
■公式サイト http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/

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