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ロシアのラジオ放送でオタクを語る。by遠藤諭

2014年08月26日 16時00分更新

 週刊アスキー本誌では、角川アスキー総合研究所・遠藤諭による『神は雲の中にあられる』が好評連載中です。この連載の中で、とくに週アスPLUSの読者の皆様にご覧いただきたい記事を不定期に転載いたします。

 このコラムの私のイラストがピンバッジの写真に変わっていたのにお気づきだろうか? 最初は、アスキー総研関係者(当時)のWさん描き下ろしのイラストだったが、1年ほど前からナノブロックになり、4ヵ月前にピンバッジになった。ちなみに、Wさんはその後『週刊少年ジャンプ』の新人賞最終候補に入ったりしたので、みんなが毎週読むようになるかもしれませんね。

ピンバッチ
↑初代イラストバージョン。
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↑2代目ナノブロックバージョン。
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↑3代目ピンバッチバージョン。

 最近の私は、ピンバッジをジャケットの襟にさして歩いている。もともとピンバッジというものは好きで、80年代には、アロハにピンバッジが私の標準的ないでたちだった。神田神保町シアター付近にあった東京骨董会館でレアなものを探したり(昭和24年国旗掲揚許可記念の日ノ丸バッジなんてのもありました)、ことあるごとに買っておりました(オライリー・ジャパンのJohn Moore社長もコレクターだそうで私のバッジをさしあげました)。

 ここ数年だと、ロシアとの漁業交渉の担当者になった農水省の友人H氏を訪ねてモスクワに行ったとき、イズマイロボの自作アート作品まであるミラクルな骨董市で買った旧ソ連の宇宙バッジがお宝だ。彼らにとっては見飽きたものかもしれないが、中学生時代にモスクワ放送ウラジオストック支局の電波で、旧ソ連の宇宙開発ウォッチャーだった私にはたまらない。

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↑モスクワ市内のイズマイロボで買った旧ソ連宇宙開発バッジたち。ボストーク、ソユーズ、ルノホートと、薄いブルーの奴は、1959年ソ連国民経済達成博覧会。そして、編集部がつくってくれた私のピンバッジ。

 ちなみに、そのモスクワ旅行のときに私は日本大使館周辺の方々とお知り合いになれた(農林水産省も外務省も防衛省だって肩を寄せ合っていますからね)。それで、“エコー・モスクワ”という全国向けラジオ局で“日本のオタク文化”をしゃべるために出演することになった。ラジオ局に到着すると、廊下には、今までこのラジオ局で出演したリチャード・ニクソン元米大統領やらスーザン・ソンタグなど文化人やらの写真が何百枚も貼り出されている! スタジオに入ると、いかにも旧社会主義っぽい感じの女性キャスターと通訳として日本大使館の方が待っている。

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↑“エコー・モスクワ”の収録での風景。ちなみにこの日は、対独戦勝記念日の予行演習が行なわれていて市内はミグや戦車やミサイルがいっぱい(※1)。そちら系の方は、この日程で旅行するとよいでしょう。

 なんとなく、どこから話に入るのかカタ~イ雰囲気に包まれていたのだが、私が旧ソ連の宇宙ピンバッジをつけていたら一気に氷が解けたのだった。ちなみに、モスクワにはアニメ専門テレビ局もあって、日本製アニメも放送されている。MCの彼女は、今朝家を出るときに13歳の娘に「日本人に会うのならオススメのアニメを聞いてきて」と言われたそうだ。

 日本のオタク文化の専門家のはずだったが、13歳の娘って“美少女戦士セーラームーン”くらいしか思い浮かばず「ウッ」と詰まってしまう私。MCは気を利かして「それじゃあ、お気に入りのマンガはなんですか?」と聞いてくれるので、私は、当時読んでいた『ディアスポリス』(すぎむらしんいち著)を、東京に住む外国人が“裏都庁”をつくる話ですと説明した。すると、彼女は「日本のマンガには子供向けだけでなく社会的な中身のある作品もあると聞いています」とさすがにインテリらしいコメントをしてくる(あとで考えると悪いロシア人が出てくる作品なんですけどね)。

 その後、話はアスキーという社名についてになり(彼女はASCIIコードのことは知らずアスキーアートと関係すると思ったらしい)、私は、「あなたの国の“д”という文字が日本では焦ったときの顔文字に使われています」などと言ったか。ご興味があってロシア語のわかる方は、そのラジオ番組の録音が今もネット(※2)にあるので聞いてみてください。

※1 東京カレー日記“モスクワ上空ミグ──やっぱりこうでなくちゃ” http://go.ascii.jp/bta

※2 エコー・モスクワの私の出演した番組『Культура манга и аниме в России(ロシア文化とアニメとマンガ)』 http://go.ascii.jp/btb

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【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員。元『月刊アスキー』編集長。元“東京おとなクラブ”主宰。コミケから出版社取締役まで経験。現在は、ネット時代のライフスタイルに関しての分析・コンサルティングを企業に提供し、高い評価を得ているほか、デジタルやメディアに関するトレンド解説や執筆・講演などで活動。関連する委員会やイベント等での委員・審査員なども務める。著書に『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書)など多数。『週刊アスキー』巻末で“神は雲の中にあられる”を連載中。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

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