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人気を2分するチョコ菓子「きのこ」と「たけのこ」を自動分別する装置

2014年08月12日 07時00分更新

 今年の4~ 5月にさかのぼるが、ニコニコ技術部カテゴリーでチョコ菓子の自動分別装置が話題になった。どんな仕組みで、何に苦労したのか? 惜しみなく技術をムダづかいする制作者を直撃した。

※本記事は週刊アスキー6/24号の『中の人特捜部』を再編集したものです。

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カメラで形を判別してアームで丁寧に仕分ける

 “きのこ・たけのこ論争”といえば、ここ数年、ネット上でたびたび注目を集める話題だ。『きのこの山』と『たけのこの里』のどちらのチョコ菓子がおいしいか、派閥闘争を模して言い合いをするもので、これまで実際のお菓子どうしが戦う写真や、コマ撮りアニメも投稿されるほどの盛り上がりがある。
 今回取り上げる“きのこたけのこ判別器”は、そのネタを受けてつくられた“うそから出た誠”のような装置だ。仕組みは、2種類のチョコ菓子が置かれた台を小型カメラで上から撮影し、形を画像認識ソフトで判別。ロボットアームを動かし、“きのこ”と“たけのこ”を左右のカップに仕分けるというものだ。
 この装置がブレイクしたきっかけは、4月末に12万人以上もの来場者を集めた『ニコニコ超会議』に出展したことだった。“きのこたけのこ判別器”のあまりのユニークさのため、イベント出展前から注目され、ニュースサイトやネットの生放送番組が取り上げるまでに。ニコニコ技術部の作品は、投稿された動画をもとに「すごい」とネットで広まるパターンが多いが、この判別器は動画なしでネットを飛び出すまで話題になった、めずらしいしいケースだ。

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きりん
別名"カッチさんP"。中学生のころ趣味で電子工作をはじめ、大学時代にはロボット研究サークルでプログラムを書いていた。院生のころからニコニコ技術部のイベントに参加する古参の29歳。

 

きのこたけのこ判別器に生かされるムダな技術を見よ!

●画像処理をぜいたくに使う

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チョコとクッキー部分の色の比率や、形状をもとに、きのことたけのこを判別。関係ない ものを入れると無視するが、色や大きさが似ていると誤認識する。

●苦労したアームは1万円!

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総制作費は1万5000円だが、実に3分の2がこのアームのモーター代(@2500円×4台)にかかっている。

●事前にキャリブレーション

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正確に動かすために、まず方眼紙で位置を合わせる。超会議の場ではこの上に別の紙をのせて展示していたため、あまり人目に触れていないかも!?

●カメラ部

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アームの制御に苦労し超会議の直前まで調整

 開発者はニコニコ技術部に初期から参加し、『必ず6が出るサイコロを作ってみた』などの動画を投稿してきた“きりん”さん。「画像処理とアームを使った産業ロボットは、工場で当たり前に使われている。それを安価に自作して、おもしろいものをつくりたい」と思い立って、'13年から開発を始める。
 当初、お菓子の分別には、台を回転させてはじき出したり、ベルトコンベアーにのせて運ぶ構想もあったが、最終的に大学のロボット研究サークルで慣れ親しんでいたモーターで駆動するアームを採用した。
 しかし、この制御がたいへんだった。アームの構造はできるだけシンプルにしたものの、最初に使った安物のモーターの動きに個体差があり、思うように微調整できなかったのだ。ソフト側でモーターの特性を考慮して補正することも考えたが、結局、ひとつ2500円という高価なモーターに替えることで手っ取り早く安定させることができた。だが、さらにモーターの角度を制御するプログラムにバグが見つかるなど困難に出くわし、結局、人前で披露したのは4月に入ってからだった。

“たけのこ派”なのできのこ殲滅装置も付ける

 超会議を終えた今でも、アーム先端の材質を変えてお菓子をつかみやすくしたり、プログラムを修正したりと、やり残したことがまだあるそうだ。
 「プレーンなチョコが苦手なので“たけのこ派”」だという自分のために、“きのこ殲滅装置”も計画している。物騒な名前だが、お菓子が箱に入ると破壊音と振動で殲滅したように見せかけるしくみで、「あとでスタッフがおいしくいただく」ための取り出し口も用意する。まだ未完成なため、「なぜ“判別器”が盛り上がっているのかわからない」というのが本人の正直な気持ち。また、テレビで取り上げられたことで親戚一同にも知れ渡り、機械関係の仕事に就く父親から、「安くつくるというのはそれだけで意義がある。コンセプトが産業用ロボットっぽい」とほめられたという。

■関連サイト
必ず6が出るサイコロ
立体ミク小型化戦争

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