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音声定額で3キャリア横並び、au新料金プランの狙いは

2014年06月26日 07時00分更新

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定額通話で横並び 3キャリアの新料金プランの狙い

 auの新料金プラン『カケホとデジラ』が発表された。新プランの特徴は、音声定額とデータパックを組み合わせた仕組みにあり、発表済みのドコモやソフトバンクと大枠では同じ。金額も音声定額込みの基本使用料が2700円と、他社と横並びだ。
 一方で、データパックはauに特色がある。ドコモやソフトバンクは、データパックが2GB、5GB、10GB、15GB、20GB、30GBとなっているのに対し、auは2GB、3GB、5GB、8GB、10GB、13GBと「細かい段階をつけて、より選びやすくした」(KDDI代表取締役社長 田中孝司氏)。また、田中社長が「8GB以上については、より安い料金をご提案したい」と述べているように、大容量のデータパックの単価を、他社より安く設定している。

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↑新料金プランの比較。基本料は2700円と横並びだ。一方で、auはデータパックのきめ細やかさで差を出した。


auは固定回線とのセット割で差別化

 固定通信とのセット割である“auスマートバリュー”を利用できるのも、他社との大きな違いと言えるだろう。ドコモにはauスマートバリューに相当する割引がなく、ソフトバンクも新料金プランの「スマ放題」にはセット割の「スマホBB割」が適用されない。
 auスマートバリューで割り引かれる金額は、2GBの「データ定額2」と3GBの「データ定額3」が934円。5GB以上のプランでは、最大2年間1410円安くなる。固定回線とセットで契約しなければならないという敷居の高さはあるものの、この点は他社にないauの料金プランの強みと言えるだろう。

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↑固定回線とのセット割を用意しているのは、auだけのメリット。


パケットシェアとギフトでドコモとSB、auで分かれる

 家族でデータをシェアする点については、3社で違いがある。ドコモは家族向けの「シェアパック」を契約している場合、家族でひとつのデータ量を分け合って使う形になる。ただし、auの田中社長が「パケットシェアには課題がある」と述べ、データ量をきっちり4人で均等に分け合うのは難しいことを説明していたように、シェアだと家族の誰かがデータを使いすぎた際に、ほかの人にも影響が出てしまう。
 これについて、ソフトバンクはドコモと同じ家族でシェアする「家族データシェア」を取り入れつつ、複数回線を契約すると各回線が割引になる「家族おトク割」も用意した。また、余ったデータ量を翌月に繰り越すことができるのは、ソフトバンクだけだ。

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↑家族でのデータシェアには、使い方に応じて個々人に適切な割り振りができないという欠点がある。

 一方でauは、自動的にデータ量を共有する仕組み自体を取り入れず、「データギフト」という考え方を打ち出した。データギフトとは、家族に余ったデータ量を能動的に分け合う仕組みのこと。指定したグループに、500MBずつデータ量を贈ることが可能だ。データの共有だけのドコモ、共有か割引を選べるソフトバンク、データを意識的に贈るauと、3社の違いが色濃く出ているのはこの部分となる。

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↑auはデータ量を明示的に分け与える仕組みを導入した。これを「データギフト」と呼ぶ。


従来の料金プランも維持するauは受け皿となるか

 一見すると金額が似ている3社の料金プランだが、これらの点に違いがあることは注意しておきたい。特にauスマートバリューは金額的にも他社との差が大きく出る部分だ。

 とは言え、携帯電話単体で見た際の料金プランに、明快な差がないのも事実。3社とも基本料が2700円と横並びのうえ、auはやや違うが金額という点ではパケットパックにも極端な差はない。大きな枠組みで見れば、auとソフトバンクは音声定額とパケットパックの組み合わせを打ち出したドコモの後追いとも言える。
 auの田中社長は「もう少しゆっくりしようかと思っていたが、2社が出したことで、営業現場からも早く出せというプレッシャーがあった」と語っていたが、ドコモの料金プランが“ゲームチェンジャー”だった点は確かだ。
 実際、ドコモの料金プランはユーザーには好評で、申し込み数は6月18日時点で「365万を超えている」(ドコモ代表取締役社長 加藤薫氏)という。ドコモには料金の勝負に打って出たというプラスのイメージがついた半面、ほか2社は逆にドコモに翻弄されているようにも見える。

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↑音声通話の完全定額を打ち出したのは3キャリアではドコモが初めて。他社が後追いに見える感は否めない。

 ただし、各社新料金プランは音声定額が主軸で、金額も音声通話が多い人ほど得をする設定だ。従来プランで通話料を半額にするオプションを利用していたようなユーザーには向いているかもしれないが、スマホをデータ端末として利用し、たまにかかってくる電話を受けるために通話も必要というユーザーには料金が割高に感じられる。
 ドコモの株主総会でも、この点を指摘する質問が株主から相次いで寄せられていた。ドコモの新料金プランは好調に契約者を増やしているが、もともと通話が多かったユーザーが飛びついているという見方もある。
 その点では、既存の料金プランの新規受付を「そのまま継続する」(KDDI広報部)auは、他社よりも選択肢が広くなる。ドコモとソフトバンクは既存の料金プランの新規受付を8月末で停止する予定で、新料金プランに一本化される。
 実はauの新料金プランが発表された直後に、同社のLTEプラン(既存プラン)のウェブページに「2015年2月末で新規受付を停止する」との記載が加わっていたが、発表会終了までの間にこの文言は削除された。
 上記のように、しばらくは新規受付を続けるというのが同社の正式な見解だ。元々検討していた2015年2月までという時期を、うっかりウェブにアップしてしまったのかもしれない。このことから、auは音声通話の少ないユーザーの「値上げになる」という声が思った以上に大きく、判断に迷っている様子がうかがえる。
 他社で新料金プランに変えてみたものの、思ったより通話せず、料金が上がってしまったというユーザーの受け皿になる可能性もありそうだ。

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