いよいよ来週より台湾の台北市にて、PC業界最大級のイベントCOMPUTEX TAIPEI 2014が始まります。2013年に引き続き、インテルやマイクロソフトが大型のイベントを予定しており、PCメーカー各社からの新製品も期待できる注目のイベントです。そしてもちろん筆者も、現地から取材レポートをお届けする予定です。
今回はそれに先駆けて、COMPUTEX直前のトレンドを整理しておきたいと思います。
■SurfaceイベントをCOMPUTEXに“ぶつけてきた”日本MS
そろそろCOMPUTEXの準備を始めようかという5月26日、日本マイクロソフトがSurfaceに関する記者会見の案内を報道関係者向けに発送しました。
↑6月2日に東京で開催するという“New Surface Press Conference”の案内状。 |
↑Surface Pro 3の日本での発売日と価格に注目が集まる。 |
案内状の内容とタイミングから言って、5月20日(現地時間)に米国で発表された『Surface Pro 3』(関連記事)の、日本での発売日や価格に関するアナウンスであることは間違いないでしょう。
注目すべきは、6月2日に東京で開催する、という日程です。この日はCOMPUTEX TAIPEI 2014の前日で、台湾ではさまざまなプレスイベントが行なわれる予定です。実際、東京でSurfaceのイベントが開催された1時間後には、台北でASUSのプレスカンファレンスが始まります。
PC業界をカバーしている記者にとって、東京でSurface Pro 3に触れるか、それとも台北でASUSを始めとするPCメーカー各社の最新製品に触れるかという“踏み絵”を迫られる事態となっています。
もちろん、実際には米国から来日するブライアン・ホール氏(関連記事)のスケジュールなど、さまざまな要因によって決まったと思われるものの、Surface Pro 3は“ノートPCを置き換えるタブレット”というメッセージを強調していることも事実。私にとってみれば「Surface Pro 3が登場したからには、もはやCOMPUTEXは不要」というメッセージにすら感じます。
↑Surface 2の発表時に来日したブライアン・ホール氏も再び登壇予定となっている。 |
8月末までには日本でも発売する、とアナウンスされたSurface Pro 3ですが、今夏のボーナス商戦に間に合うことを期待したいものです。
■AndroidタブレットによるPC置き換えは可能?
米国でのSurface Pro 3の発表会ではプレス席でのMacBookに注目(関連記事)が集まりましたが、ライバルのタブレットとして取り上げられたのはiPadでした。最近では、市場の拡大に伴い、安価なモデルを中心としたAndroidタブレットのシェア向上が目立つものの、ユーザー体験やアプリの豊富さといった点でiPadの存在感はまだまだ圧倒的です。
これに対して、AndroidタブレットをPCを置き換えるという提案をしてきたのが、NTTドコモです。ドコモの夏モデル発表会の一角には“パソコン代わりに使えるタブレット”というコーナーが設けられ、そこには夏モデルである『Xperia Z2 Tablet』や『AQUOS Pad』が展示されました。
↑NTTドコモがAndroidタブレットによるPC置き換えを提案。 |
具体的には、Xperia Z2 Tablet専用の別売Bluetoothキーボード¥が置かれ、Office互換アプリを無料でバンドルし、夏モデル共通機能のプリンター連携、Evernoteのプレミアムアカウントのバンドルなどをセットにした展示です。
↑Xperia Z2 Tabletにカバー兼用のBluetoothキーボードを装着。Office互換アプリで文書の編集もできるというデモ。 |
個々の要素を見ていけば、既存のAndroidタブレットで実現しているものばかりで、目新しさはありません。しかしこのような形でドコモが訴求するからには、これらの組み合わせが一般ユーザーでも使える程度に成熟しており、また市場において一定の需要が見込まれることを示唆しているといえます。
単純に“PCの置き換え”という用途なら、まだまだWindowsタブレットのほうが適しているように思うのですが、ドコモの担当者によれば、「最近ではWindowsにこだわらないユーザーが増えている」とのこと。つまり、PCで慣れ親しんだWindowsをそのままタブレットで使いたいというユーザーがいる半面、スマートフォンやタブレットでAndroidを日常的に利用しているユーザーから、Android環境上でPCのような作業をこなしたい、という要望が急増しているというのです。
夏モデル発表会の時点でドコモは、まだiPad発売開始のリリース(関連記事)を出していませんでした。そのせいで、Androidタブレットに注力せざるを得なかったという見方もできるでしょう。しかしSurface Pro 3の発表会でPanos Panay氏が指摘したように、iPadがPCに置き換わるかといえば、そうはなっていません。カスタマイズやアプリ間の連携について自由度が低い上に、日本では日本語入力の使い勝手がいま一歩という問題もあります。優れた日本語入力アプリとして『ATOK Pad』があるものの、ATOK Padを使えば使うほど、他のアプリとの使い勝手の違いに悩むことになります。
では、そのほかのタブレットなら置き換わるかと言われると難しいところですが、iPadよりも柔軟性があり、タブレット用のアプリもそれなりに揃っているのはAndroidタブレットです。そこにメーカーやキャリアからの支援が加われば、おもしろい展開にはなりそうです。
■ASUSから手書きが特徴の薄型タブレットが登場か?
とはいえ、Windowsタブレットにもまだ反撃の機会があると筆者は考えています。特に日本ではWindowsタブレットのシェアが異常なまでに高いのが特徴です。日本マイクロソフト関係者によれば、このシェアの高さに米国本社も並々ならぬ関心を寄せているようです。
そこでCOMPUTEXではメーカー各社からの新デバイスを期待したいところですが、残念ながら姿を消す企業もあります。それがVAIO事業からの撤退を発表した、ソニーです。
昨年のプレスイベントでは、VAIO ProやVAIO Duo 13などの新機種を発表して話題を集めたものの、今年はプレス向けの発表は予定しておりません。VAIO事業を引き継いだVAIO株式会社は7月1日からの事業開始となっており、COMPUTEXとはタイミングが合わなかったようです。
また、VAIOについても「当面の間、法人向けに注力する。ソニーマーケティングと協力し、法人需要に沿った32ビット版のWindows 7モデルなどを展開していく」(ソニー関係者)との情報もあり、従来のコンシューマー向けVAIOとはやや異なる路線となりそうです。
一方で、例年通りの勢いがあるのがインテルと、地元台湾のASUSです。とくにASUSはCOMPUTEXに先駆けてティザー動画を公開し、発表内容を予告しています。
↑封筒から取り出した紙に手書きするティザー動画。薄型の手書きタブレット?
この動画では封筒から取り出した紙に、“The Next Incredible Thing”とペンで手書き。その“Thing”の文字が“Thin”(薄い)に変化するというエフェクトが付けられています。これをそのまま解釈すれば、手書き対応の薄型タブレットが登場するものと読み取れます。
6月2日、東京でのSurface Pro 3と台北でのCOMPUTEXプレスデーが終わった後には、サンフランシスコでアップルによるWWDCの基調講演が予定されています。ASUSの新製品はSurface Pro 3のライバルになりそうですが、同時にアップルに対抗する頼もしい同志になるかもしれません。
そんな注目の台北国際コンピュータ見本市COMPUTEX2014は、6月3日(火)~6月7日(土)に開催される予定です(関連サイト)。
山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ
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