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プロのイラストレーターが筆圧感知対応タブレット6機種を試す!

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 昨年から数多く発売されているWindowsタブレットですが、その中でもいくつかの機種は筆圧感知に対応したペン入力機能に対応しています。

 一方で、イラスト制作やお絵描きを趣味としている人の間でも、これまでのペンタブレット(いわゆる板タブ)に変わって、ワコム製の液晶ペンタブレット(いわゆる液タブ)『Cintiq 13HD』(実売価格8万9000円前後)など、液晶にペンで直接イラストを描ける機器に注目が集まっています。

 そこで、液晶ペンタブレットのように直接ペンで絵が描ける筆圧感知対応のペン搭載Windowsタブレット6機種を集めて、プロのイラストレーターとして活躍されている木村樹崇さんにすべての機種を実際に試してもらいました。

■実際に試した筆圧感知対応タブレット
マイクロソフト 『Surface Pro2(128GB)』
富士通 『ARROWS Tab QH55/M』
ASUS 『Vivotab Note8 M80TA-DL64S』
ソニー 『VAIO Duo13 SVD13238EJB』
レノボ 『ThinkPad Helix(BTOでデジタイザー・ペン対応を選択)』
ワコム 『Cintiq Companion(256GB)』

プロフィール:木村樹崇(きむらしげたか)

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↑『BLAZBLUE』(アークシステムワークス)などのコンシューマーゲームや『カードファイト!ヴァンガード』(ブシロード)などTCGでのイラスト制作を中心に活躍。『終末領域のネメシス 』 (このライトノベルがすごい! 文庫) や『シロクロネクロ』 (電撃文庫)などライトノベルの挿絵も手がける。

 木村樹崇さんは、通常のイラスト制作の場合はまず紙で線画を起こしたあと、デスクトップ環境(Mac Pro)のペンタブレット『intuos』と『Photoshop』で彩色や仕上げを進めるスタイルをとっているとのこと。今回はタブレット上での下書きに加えて、イラスト制作ソフトも『CLIP STUDIO PAINT』を使ってもらうなど、ふだんとは異なる環境でしたが、ある程度触ると「以前に触ったタブレット製品よりもかなり良くなっている」と評価しています。

CLIP STUDIO PAINT PRO
セルシス(関連サイト
実売価格5000円

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 PC以外にもタブレットにも対応したイラスト制作ソフト。マルチタッチ対応のUI搭載に加え、ペン入力対応タブレットの筆圧感知にも対応。イラスト制作でも、ベクター描画対応ペンによる滑らかな描線のペン入れが可能なほか、パース定規や3Dのキャラクターモデルを使ったデッサンなどイラスト制作の補助機能を数多く搭載。PhotshopやSAIのファイルも扱える。

 筆圧感知対応タブレットの評価では、ペン先とカーソルの誤差はもちろん「いくら筆圧感知の段階が良くても、繊細なタッチを認識できない製品はイラスト向けに使うのは厳しいように感じる。」とのこと。6機種を比較すると、Surface Pro2、ARROWS Tab QH55/M、ThinkPad Helix、Cintiq Companionの4機種はペンの入りと抜きなどに発生する軽い筆圧にも自然な反応で描きやすかったということです。

 ちなみに、この4機種はいずれもペン入力モジュールにワコム製のものを採用していますが、スペック表の筆圧検知の段階を見ると、Cintiq Companionは筆圧が2048段階、Surface Pro2とARROWS Tab QH55/Mは1024段階、ThinkPad Helixは256段階と違いがあります。

 この点について、ペン入力モジュールを製造しているワコム広報室の菅野氏に問い合わせたところ「筆圧感知の段階の数値が多いと、感知できる筆圧の幅を広げられます。ですが、どの強さの筆圧から入力を感知するのかというしきい値については、タブレット端末の設計によって異なることはあります。」という回答を得られました。筆圧の感度が気になる人は実際にタブレット端末を触って試した方がよさそうです。
 

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↑タブレットでのペン入力テスト中。手の下の布はタッチ操作への反応防止ではなく、手のすべりを安定させるために使っているものということです。

 このほか、画面サイズやペンの持ちやすさなどを比較したところ、やはりプロ向けのCintiq Companionの評価が高く「ノングレアパネルで映り込みが少なく、ペン先の滑りも少ないなど細かい部分はさすが。」という評価でした。一方で、Surface Pro2についても「ペン先とポインターの誤差が少なく応答性が良好。Cintiq Companionと比べても書き心地に大きな差はなく、製品としてのバランスが良い」と高評価でした。

 ThinkPad Helixもペン入力の描きやすさはSurface Pro2なみという評価で、11.6インチという画面サイズの大きさも高評価でした。ですが、搭載しているペンがしなってしまうのが気になったとのこと。裏技的に、Surface Pro2の付属ペンと組み合わせるとかなり使いやすいという評価でした。ARROWS Tab QH55/Mについては、CPUがAtomということもあり、レイヤーを重ねると処理が重たくなる点が気になったとのことです。

 ということで、編集部で評価を進めてもらった6機種のうち、実際にイラスト制作で使ってみたいというSurface Pro2を実際の制作環境に組み込んで、短時間ながら1枚イラストを描いていただきました。
 

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↑編集部で描いた色つきのラフをもとに、イラスト制作を開始。
 

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↑ペン入れまではSurface Pro2で。彩色は正確な発色の液晶で作業できるデスクトップ環境へ移行。
 

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↑春っぽいさわやかさとガジェット好きというテーマで、実際に描いていただいたイラスト。ガジェットをよく見ると意外とマニアックな……。

 紙での下書きではなくタブレットで作業をしていただきましたが、「以前に触った製品と違って、プロ向けのCintiq Companionに限らずどれも使えるレベルに達していると感じました。描き直しが効くのでラフ画を起こすのはとても重宝しますし、これぐらいなら乗り換えても良い。」とのこと。

 ですが、一方で「紙と比べると、ペン先の細かなニュアンスの取り漏らしなど気になる部分はあります。そのまま仕事で活用できるかというと、私自身の慣れも必要ですが、タブレットにもまだまだ改善の余地を感じます。」と評価。タブレットは気軽に持ち運べる点は便利ですが、イラスト制作で本格的に利用するなら、どこからどの作業まで活用するかという点は考えた方がよさそうですね。

 また、週刊アスキー5/27号 No.979(5月13日発売)の特集『筆圧感知で手書きしたい お絵描きタブレット選び』では、この記事で取り上げた筆圧感知対応ペン搭載タブレットPC6機種の紹介と、詳細なクロスレビュー、描いていただいたイラストの制作順序などを紹介してます。イラスト制作向けにペン入力対応の液晶タブレットの購入を考えている人は要チェックです!

■関連サイト
Digi-force.net(木村樹崇さんのHP)

 

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