鳴り物入りでサービスが始まった『LINE電話』。実際に使ってみて、その仕組みが見えてきた。
LINE電話とは、LINEのプラットフォーム上で携帯電話や固定電話といった、電話番号に発信ができるサービスのこと。インターネット回線を用いており、仕組み的にはIP電話に近いが、電話番号を持たずLINE電話への着信はできない。代わりに、電話を発信した相手には、LINEに登録した携帯電話番号が表示される。
『30日プラン』を使用した場合、携帯電話への発信は1分6.5円と格安だ。では、この料金をなぜ実現できているのだろうか。 サービス発表時にLINEは「複数の大手回線事業者のプレミアム回線を採用」したとのリリースを出していたが、LINE電話から発信された電話番号の表示を見るとその謎の一端がわかる。
↑LINE電話の料金。プレスリリースに掲載された比較にもあるように、通話料は他社より割安だ。
LINE電話にかかってきた番号の頭につく、“+81”がそれだ。“+81”は日本の国番号。本来、国内通話同士だと、“+81”ではなく、国内であることを識別するための“0”から電話番号が始まる。“+81”がつくのは、海外に発信した場合だ。
つまり、国内電話からの国際発信になっているというわけだ。通話料に消費税が加算されていないことも、これを裏づける。このことから、どこか海外の通話料が安い地域から電話を転送して国内に発信していることがうかがえる。日本より料金が割安に設定されている国にインターネット経由でつなぎ、そこから電話回線に乗せて日本に接続しているのであれば、料金の安さにもうなずける。国内から直接発信しないという点では、電話を割安にするコールバックサービスに発想は近いだろう。
↑LINE電話から発信すると、電話番号の頭に“81”がつく。
では、なぜ登録した携帯電話の番号が表示されるのか。キャリア関係者によると、「着信表示される電話番号を変えること自体は、それほど難しくはない」という。海外には発信に表示させる電話番号を自由に設定できるサービスが存在する。過去には“110”に偽装した着信を表示させ、振り込め詐欺の電話をかけるといった悪用例もあり、社会問題に発展した。用途が違い、ユーザーが自分で表示させる電話番号を設定できるわけではないが、LINE電話も、大枠ではこれに近い仕組みを使っているようだ。
LINE電話からドコモ宛てに発信すると、電話番号が通知できないのはそのため。ドコモによると、その理由は以下のようになる。
「ドコモでは、社団法人電気通信事業者協会が策定した『発信番号偽装表示対策ガイドライン』に基づき、一定の条件により発信者電話番号が偽装された疑いのある通話を識別し、その通話の発信者電話番号を非表示とする対策を施している。(LINE電話の電話番号が通知されないのは)そのことによるものと想定している」
すなわち、ドコモ側が偽装された電話番号を一律で拒否しているために、電話番号が通知されないというロジックだ。一方で、auやソフトバンク宛ての場合は電話番号が通知されるが、ドコモ以外が何も対策をしていないわけではない。KDDIが「電話番号の偽装に関するガイドラインは遵守している」というように、各社、偽装された電話番号を防ぐ仕組み自体は取り入れているそうだ。
↑ドコモ宛てに発信すると、電話番号が表示されない。
ここから、LINE電話が、KDDIやソフトバンクからは偽装と見なされない方法を使っていたと推測できる。各社とも他社の情報が関係するため詳細は回答できないとのことだったが、上で紹介したような、(振り込め詐欺などで使われていた)単純な仕組みではない可能性が高い。逆にいえば、ドコモだけが通知を受け付けないのは、偽装電話番号対策が他社より一段強力だったためと考えられる。
どちらの対応がいいのかは一概にはいえないが、本来キャリアが管理する電話番号を別の事業者が利用するという点で、LINE電話には少々危うい面もある。たとえば、LINEの認証に使ったのとは別のSIMカードを挿せば、1台で2つの電話番号が持ててしまう。それだけならまだ便利な機能で済ませられるかもしれないが、この仕様だと、SIMカードを抜いても同じ電話番号を使い続けることが可能になる。キャリアの回線を解約したあと、別の人の手に渡る可能性がある電話番号で発信できるとなると、悪用されるおそれもある。
↑SIMカードを抜いても発信できてしまった。
LINE電話のアプリ側でSIMカードの抜き差しを検知して、差し替えた場合は再度認証を求めたり、モバイルネットワークを通じて回線契約の有無を確認したりなど、複数の方法を組み合わせた対策が必要になってくるだろう。
●関連サイト
LINE電話
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