羽田空港を運営する東京国際空港ターミナル(TIAT)は、サテライトの搭乗口やチェックインカウンターを増設し、3月30日、羽田空港国際線ターミナルの供用を開始します。
↑羽田空港国際線ターミナル。3月30日よりターミナルが拡張される。 |
羽田空港は都心から近く、地方都市からの乗り換えも便利ということもあって、国際線の使い勝手の向上は気になるところです。早速、先行公開に潜入してきました。
■羽田空港国際線ターミナルの拡張とは?
国内線が中心の羽田空港において、国際線は徐々に拡大を続けてきた格好になります。2010年10月には、それまで使われていた暫定ターミナルビルに代わり、現在の国際線ターミナルがオープン。さらに2012年11月にはターミナルの増築を開始、3月30日に正式オープンする運びとなりました。
この増築の背景は、羽田空港における国際線の発着枠の拡大です。昼間の発着枠は年間3万回から6万回へ倍増、夜間の3万回と合わせると年間9万回の発着が可能となりました。これに伴い、“昼間の発着枠はアジア路線に限定”という制限も撤廃され、昼間でも欧米への長距離線が就航できるようになります。
↑現在の羽田国際線では、昼間はアジア線のみ、長距離線は深夜早朝という制限があるが、今後は撤廃される見込みだ。 |
この発着枠の拡大に対し、全日空は現在の10路線13便から17路線23便へ拡大。ロンドン、パリ、フランクフルト線などを増便し、ハノイ、バンクーバー線を新規就航します。日本航空はホーチミン線を新規就航、シンガポール、バンコク線を増便。他にもルフトハンザ ドイツ航空やエールフランスが羽田空港への新規就航を発表しています。
そこで注目されるのが、ターミナルビルの拡張です。東京国際空港ターミナル株式会社 常務取締役の田口繁敬氏は、「2020年のオリンピック開催決定や、訪日外国人が年間1000万人を突破するなど、良いニュースが増えてきた。発着枠の拡大に対応し、本格的な24時間旅客ターミナルの魅力を強化していきたい」と意気込みを語りました。
↑羽田空港の拡張について語る、東京国際空港ターミナル株式会社 常務取締役の田口繁敬氏(写真右)。 |
■搭乗口は8カ所追加、24時間フードコートもオープン
それでは具体的なターミナルの拡張について見ていきましょう。現在の国際線ターミナル北側の駐機場だった土地に、“サテライト”を増築。従来の“本館”と合わせて、L字に近いT字型のターミナルとなります。
↑国際線ターミナルの完成予想図。本館の北側にサテライトを増築した。屋上にはソーラーパネルが並ぶ。 |
↑増築されたサテライトの2F到着コンコースから“本館”を見た様子。 |
増築部分には、新たな搭乗口や到着口、ラウンジに加え、空港内ホテルを追加。建物屋上には出力1000kWのソーラーパネルを設置し、太陽光発電を行なうしくみです。固定スポット(バスなどを使わず、ターミナルビルから直接ボーディングブリッジで接続されるスポット)は8ヵ所増設され、全18スポットに。うち6ヵ所はゲートと待合室が2階に設置されているのが特徴です。
↑サテライトには、新たに141〜148番の搭乗ゲートが固定スポットとして追加された。 |
↑搭乗ゲートの一部は、3Fの出発ロビーではなく2Fに降りたところに位置する。 |
↑新しい固定スポットには、もちろんボーディングブリッジが用意される。 |
↑乗客からはなかなか見ることのできない、ゲート側からの写真。端末として配置されていたPCはHP製。 |
↑キーボードはカードリーダーを備えた特注品。旧タイプのWindowsロゴが目立つ。キー配列は米国で一般的なUS-ASCII配列。 |
3Fの出発ロビーには、チェックインカウンターを増設。保安検査場も2ヵ所になり、到着ターンテーブルは2基を増設。駐車場も2階層ほど増え、3000台が収容できるようになります。
↑従来のチェックインカウンター“H”の奥に、新たに“I、J、K”を設置。 |
これまでになかった“祈祷室”も3階出発ロビーに設置されます。4階、5階にはTIATによるラウンジが、日本航空および全日空が上級会員向けのラウンジの設置を発表しています。
↑海外の空港ではよく見かける祈祷室。さまざまな宗教に対応する。 |
本館とサテライトを結ぶ通路には、大型ディスプレイを設置。60型(1366×768ドット)のディスプレイを12列×3段の計36台配置することで、4Kの4倍となる16K(16392×2304ドット)の映像を表示できます。こちらでは主に羽田から行くことのできる世界各地の世界遺産を紹介する予定とのことでした。
↑36基のディスプレイを連動した16Kの映像。12台のPCでコントロールしている。 |
サテライトには出国審査後の保安エリアに、新たに免税店、専門店、外貨両替所を設置。さらに24時間営業のフードコート『TOKYO SKY KITCHEN』がオープン。高級焼肉屋『叙々苑』の単品専門店や、1貫100円からの寿司店『魚がし日本一』、羽田空港には欠かせないカレー店としては欧風カレーで知られる『ドンピエール ジェット』など8店舗が入居します。
↑保安エリアに内には236席のフードコートがオープン。年中無休の24時間営業なので、深夜便の出発前にもしっかり食事できるのがポイント。 |
ほかにも3F出発ロビーには、携帯レンタル『ドコモ・ワールドカウンター羽田』や、エクスコムグローバルによるWi-Fiルーターのレンタル店が新設。海外における通信需要の高まりにも対応できそうです。
■日本初のトランジット用客室が9月末オープン
今回の国際線ターミナルの拡張部分には、空港内ホテルとして『ロイヤルパークホテル ザ 羽田』も建設中です。説明会では、そのモデルルームが披露されました。
ホテルは地上8階建てで、国際線ターミナルビル3階の出発ロビーから直通となります。客室は全313室ですが、そのうち17室は乗り継ぎ客用の客室として、保安エリア内に設置。これは羽田空港において国際線から国際線へと乗り継ぐ際に、日本に入国することなく宿泊できるというもの。このようなホテルは日本初です。
↑フロアプラン。青い部分は日本初となる保安エリア内のトランジット用客室。日本に入国することなく宿泊できる。 |
乗り継ぎ客用以外の296室に関しては、国際線利用者だけでなく、国内線の利用者でも、あるいは飛行機に乗らなくとも誰でも泊まることができる通常のホテルとなっています。
↑スイートルームの例。大きなソファが特徴。ベッドルームとの仕切りはカーテン状になており、部屋を広く使える。 |
日本空港ビルデング 執行役員 運営本部 施設部長の徳武大介氏は、「ロイヤルパークホテルは箱崎や汐留、横浜などで定評がある。その良さを空港でも生かしたい」と背景を説明。ホテルの運営にあたるロイヤルパークホテルズアンドリゾーツの朝倉博行氏は、「国際線の出発ロビーに近く、出発直前までくつろいでいただける。エアポートホテルにありがちな”寝るだけ”のイメージを脱し、”わざわざ泊まりたくなる”品質のホテルを目指す」と意気込みを語りました。
特にスイートルームはカラーリングや家具にこだわっており、ミニバーや洗面台、バスルームも一般的なシティホテルに近い雰囲気。ホテル側は「VIPクラスの客にも利用していただけるグレード」と自信を見せています。スイートルームが配置される8階のプレミアムフロアからは、離発着する飛行機も見えるそうです。
↑ミニバーなど、一般的なシティホテルのスイートルームに近い雰囲気。“寝るだけ”のホテルではない。 |
↑洗面台は2基設置。忙しい朝でも同時並行で身支度ができて捗るしくみだ。 |
シングルルームは14.98㎡とそれほど広くないものの、バスルームを窓際に設置したことにより、数字以上に開放感のあるレイアウトとなっています。
↑シングルルームの例。あえて窓際にバスルームを配置するという斬新なレイアウトにより、部屋が広く感じる。 |
ツインルームはいくつかタイプがあるものの、最もコンパクトなのが18.44㎡の部屋。シングルルームとは異なり、バスルームを入り口近くに配置したオーソドックスなレイアウトとなります。
↑オーソドックスなツインルーム。荷物を広げるスペースなどは考慮されているものの、ベッドが2台あるため手狭に感じる。 |
客室はシングル・ツイン・スイートの3種類で、正規料金はシングルが2万円、ツインが2万5000円、スイートが15万円を予定。3階には女性専用のレディースフロアがあり、2階にはシャワーなど、個室で休めるリフレッシュルームも設置されます。カフェラウンジは朝5時から深夜1時までの、20時間営業とのこと。
ホテルは7月から一般客の予約受付を開始し、8月の竣工後、9月末のオープンが予定されています。
■羽田空港国際線の存在感向上に期待
今回のターミナル拡張により、羽田国際線の固定スポットは18に増加します。たしかにこれは成田空港の67、羽田国内線の47と比べてもまだ小規模なものであり、成田空港の重要性は変わっていないといえます。
ただし、24時間営業は羽田国際線の大きな魅力のひとつです。都心から近いこともあり、羽田発の深夜便なら仕事帰りに空港に向かっても確実に間に合います。さらに今回の拡張により、24時間営業のフードコートや空港内ホテルなど、24時間の運用が強化されるのも嬉しいところ。
個人的には深夜時間帯の公共交通機関にはまだ不満を感じるものの、まずはターミナルの拡張を素直に歓迎したいところです。
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羽田空港国際線旅客ターミナル
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