ラスベガスで開催された2014 International CES(2014年1月7日~10日)では、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスの増加が話題となりました。その一方で減ってきたのが、PCに関する展示です。マイクロソフトは2012年を最後にCESへの出展を見合わせており、レノボやデル、HPといった大手メーカーも一般ブースとしての出展はありません。
↑CES2014でPCをメインとしたブースは減ってきた。 |
果たして2014年のPCはどのように進化するのか、CES2014の展示を振り返りながら考えてみましょう。
■レノボは小型タブレットを含むPC製品を多数発表
PCメーカーとして世界No.1になったレノボは、CES会場へのブースこそ出さなかったものの、例年通り関係者向けのプライベート展示を行ない、PCやタブレット、そして日本では展開していないスマートフォン製品を多数発表しました。
↑レノボのプライベート展示。CES2014に合わせて発表した多数のPCやタブレット、スマートフォンが並んだ。 |
最も注目が高かったのは、画面解像度がフルHDに向上した8インチWindowsタブレット『ThinkPad 8』です。すでに発売済みの『Miix 2 8』が人気を博している中で、今度はThinkPadブランドでの投入という展開の早さに驚きます。
↑ThinkPadシリーズとしては初の小型タブレット『ThinkPad 8』。Miix 2 8が出たばかりなのに早くも新製品が。 |
ThinkPad 8の面白いオプションとして、“QuickShot”に対応したカバーが用意されています。一見すると何の変哲もないタブレット用のカバーですが、カメラのレンズ部分だけをめくることで、Windows 8.1のカメラアプリが自動的に立ち上がるのです。
↑QuickShotカバー。内部には磁石を仕込んでいるという。 |
これはレノボの独自実装による機能で、カバー内に仕込んだ磁石を利用して“めくられた”ことを検出、カメラアプリを起動しているとのことで、非常に凝ったしくみといえます。
Windowsタブレットとしては、Miix 2シリーズの新モデルも発表しました。すでにお馴染みの8インチタブレットに続き、今度は10インチと11インチのタブレットとなります。
↑Miix 2シリーズに新モデルを追加。10インチがAtom、11インチがCoreプロセッサを搭載。冷却機能も微妙に違う。 |
いずれも単体でWindows 8.1タブレットとして利用できるほか、キーボードとドッキングすることで、“ノートPCモード”や“ビューモード”で利用できる点が特徴です。変形が特徴のYogaシリーズを展開する、レノボらしい”2-in-1”製品といえます。
ほかにも先週レポート(関連記事)した『ThinkPad X1 Carbon』の新機種は、ソフトウェアキーボードによるファンクションキー“Adaptive Keyboard”や独特のキー配列を採用したことで話題になりました。WQHD(2560×1440ドット)という高解像度パネルのオプションも魅力的です。
↑ThinkPad X1 Carbonの新モデル。キーボードに賛否両論が集まった。 |
■ソニーはVAIO Fit 11Aを投入。注目色はピンク
CES2014の中でも最大級の規模となったソニーブースには、2013年9月のIFA2013で参考出展された『VAIO Fit 11A』の実機が展示されました。
注目は、シルバー、ブラックに加えて、ピンクカラーのVAIOです。“red edition”の真っ赤なボディに匹敵するメタリック・ピンクのボディが印象的で、ブースでも「この色がステキ!」と感激する人が続出していました。
↑ついに登場した11インチの『VAIO Fit 11A』。VAIO Fitシリーズの特徴でもあるピンク色が、11インチにも採用された。 |
↑red editionにも匹敵するピンク色。カフェで自慢気に広げてみたくなるような存在感がある。 |
ただし、既存のVAIO Fit 13Aに比べて確実にコンパクトになっている反面、キーボードのピッチも狭くなっている点には注意が必要です。
■東芝はPCにも4Kを採用。5モードのコンセプトモデルも
テレビ事業において“4Kのリーディングカンパニー”を目指しているという東芝は、以前から“4K出力”が可能なノートPCをリリースしてきました。今年はさらに、ノートPCのディスプレイ自体にも4K(3840×2160ドット)を採用した、モバイルワークステーションを展示しています。外部GPUにはNVIDIAのQuadro K2100Mを搭載しており、高解像度ディスプレーに十分な描画性能があるとのこと。
↑モバイルワークステーション『TECRA W50』に4Kディスプレイモデルを追加。 |
また、東芝は“5-in-1”のコンセプトPCも披露しています。ディスプレーとキーボードが分離するデザインとなっており、ディスプレー側のスタンドの角度を変えることにより、おもしろい使い方ができるのが特徴です。
↑様々なモードに変形する東芝の”5-in-1”コンセプト。将来的にdynabookシリーズとして発売されるのだろうか。 |
↑ディスプレイとキーボードを分離することが可能で、ディスプレイはスタンドで自立できる。 |
↑ペン入力に適した角度で置くこともできる。 |
■LGは狭額縁のノートPCを展示
LGブースで注目を集めていたのが、これまでにない狭額縁を採用した『Ultra PC 13Z940』。4.4mmという非常に細いベゼルを採用しており、13.3インチ・フルHDの画面を搭載しているにも関わらず、本体はコンパクトにまとまっています。
↑狭額縁が特徴の『Ultra PC 13Z940』。見た目のインパクトは抜群だ。 |
↑ベゼルはわずか4.4mmという細さ。 |
ほかにもLGはディスプレー製品として、34インチの“ウルトラワイドQHD”解像度の製品を展示。3440×1440ドットという、これまでにない横長の高解像度ディスプレイです。インターフェイスは“Thunderbolt 2”にも対応しており、最新のMacBook ProやMac Proを接続できるほか、Windows PCからは“DisplayPort 1.2”としても利用できます。
↑21:9のウルトラワイドディスプレイに、高解像度モデルが登場。 |
■パナソニックは業務用Windowsタブレットを強化
パナソニックは“TOUGHPAD”シリーズとして7インチの小型タブレットを発表しました。通常の小型タブレットのように薄型軽量のものではなく、非常に分厚く重いものの、落としても大丈夫という耐衝撃性など名前の通り“タフ”な仕様となっています。
↑TOUGHPADに7インチモデルが登場。落としても壊れない耐久性が魅力。 |
↑ほかにも業務用の20インチ4Kタブレットに、CPUやGPUを強化した上位モデルが加わった。 |
■2014年のPC市場は“2-in-1”の低価格化に期待
このようにCES2014では、全体的にPCの存在感が薄れてきたとはいえ、なんだかんだで新製品の発表があったことが分かります。今後の市場予測としても、Windowsタブレットはビジネス向けタブレット市場で反撃を開始するとみられています。また、企業内に残っているWindows XPマシンについても、2014年4月までに移行を完了することは難しいものの、確実にWindows 7やWindows 8に置き換わっていくとの見方が有力です。
一方で個人や家庭向けのPCは今後も冷え込みが続くとみられています。また、“2-in-1”のような次世代型のPCは比較的高価なものが多いこともあり、安価でタッチ非対応のノートPCが売れ続けているようです。
Windows XPからの置き換えについても、PCを買い換えるのではなく、スマートフォンやタブレットで代用することが増えそうです。これはPCの魅力がなくなったというよりも、スマートフォンやタブレットの機能が成熟したことで、相対的にPCは割高でオーバースペックなデバイスになったといえます。
2014年のPC市場は、昨年同様にスマートフォンやタブレットへのシフトが大きな逆風となるでしょう。タブレットとしても使える“2-in-1”なら、これを追い風として利用できる可能性はあります。そのためには“2-in-1”を、ミドルレンジやローエンドの価格帯に向けて広げていけるかどうかが鍵になりそうです。
山口健太さんのオフィシャルサイト
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