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Windows情報局ななふぉ出張所

2014年のWindows Phoneはどうなる?

2014年01月08日 17時00分更新

 2013年末にはWindows Phone 8の最新アップデート“Update 3”が提供され、Lumia 1520(関連記事)という、これまでにないファブレット級の端末も実現するなど、Windows Phoneの進化は続いています。その一方で、低価格端末の好調さを除けば、全体的なシェアも微増にとどまるという点で、苦戦も続いているのも事実です。

2014年のWindows Phoneはどうなる?
↑アメリカのAT&Tストアで売られているLumia 1520。初のフルHD・ファブレット級端末として注目度が高い。

 そこで2014年にはWindows Phoneがどのように進化するのか予想してみたいと思います。

■大きなアップデートがなかった2013年

 2013年を振り返ってみると、Windows Phoneに大きな変化はありませんでした。

 2011年にはWindows Phone 7の使い勝手を大きく改善したWindows Phone 7.5、2012年にはOSのコアをWindows 8と共通化したWindows Phone 8へのメジャーバージョンアップを果たしてものの、2013年にはフルHDやクアッドコア端末を新たにサポートする“Update 3”の提供にとどまっています。Windows OSでは、Windows 8の問題点を多数改善したWindows 8.1が登場したものの、Windows Phone 8.1については、ついに発表されませんでした。

 そこで俄然、期待されるのが、2月24日から開催されるMobile World Congress 2014と、4月2日から開催されるBUILD 2014です。開発者向けのアップデートとして、Windows Phoneのアプリ基盤がどのように進化するのかが注目されます。

2014年のWindows Phoneはどうなる?
↑BUILD 2014。昨年は6月だったが、今年は4月と早まった。

 Windows Phone 8では従来のWindows Phone 7と互換性を保ちつつ、アプリ基盤も一新されました。その一方で、技術的にも共通点の多い“Windowsストアアプリ”とは共通化されなかったのが残念な点として指摘されています。

 2013年7月のWorldwide Partner Conference 2013で、マイクロソフトCOOのケビン・ターナー氏は、Windows Phoneに対するアップデートとして“Common App Platform With Windows”というヒントを示しています。このことから、今後のWindows Phoneではアプリ基盤がWindows 8と共通化され、同じ開発環境やアプリストアを使えるようになることが期待できます。

2014年のWindows Phoneはどうなる?
↑WPC 2013で、3日目の基調講演の最後にケビン・ターナー氏は多数のヒントを出した。その中に、Windows PhoneとWindowsのアプリ基盤を共通化するという項目があった。

 もちろん、画面サイズの異なるPC・タブレット・スマートフォンにアプリを提供する上では、UIや振る舞いを適切にカスタマイズする必要はありますが、同じアプリがすべてのWindowsデバイスで動作するというのは、なかなか魅力的です。

■端末メーカーはついてくるだろうか

 次に気になるのは、端末メーカーについてです。Windows Phone 8発売当時のパートナーとしてはSamsung、HTC、Huaweiがいたものの、現在も積極的に端末をリリースしているのは、ノキアのみとなっています。

2014年のWindows Phoneはどうなる?
↑フランスのOrangeストアで売られているWindows Phone。端末はノキアが中心。

 さらに2014年には、マイクロソフトによるノキアの携帯電話部門の買収が完了するものとみられており、いよいよ他メーカーによる参入は難しくなります。OSメーカーと端末メーカーが一体となって開発するスマートフォンに、他メーカーが太刀打ちすることは難しいでしょう。

 そういう意味では、一部で報道のあったように、マイクロソフトが端末メーカーに開発費を提供するというオファーは魅力的です。マイクロソフトが自己資金を投入するのであれば、端末メーカーとしても“好待遇”を期待できることになるからです。

 ただ、端末メーカーにWindows Phoneを作ってもらうために、そこまでマイクロソフトがお膳立てをしなければならないというのは、ちょっとした異常事態にも思えます。その背景には、Windows Phoneの魅力がないというよりも、業界全体のトレンドがあると筆者は考えています。

■Windows Phoneをいかに差別化するかが焦点

 そのトレンドとは、端末メーカーやキャリアが、端末を差別化したいという方向性です。たとえばAndroidでは、余計なカスタマイズがされていないGoogleのNexusシリーズや、幅広い価格帯で大きなシェアがあるGALAXYシリーズが存在します。それ以外の端末メーカーは、これらの有力機種との差別化を図っていく必要があります。

2014年のWindows Phoneはどうなる?
↑アメリカのFry'sで売られているWindows Phone。これらの端末との差別化が課題となる。

 有力な端末メーカーは、自社独自のユーザー体験を、複数のOSにまたがって提供しようと考え始めています。たとえばソニーモバイルはXperiaシリーズにAndroidを採用しているものの、将来的にはOSに依存しないHTML5のような標準技術により、ソニー独自のユーザー体験を、どのOS上でも実現したいという意向を示しています。

 さらに、キャリアも差別化を進める傾向に向かうと考えられます。2013年2月のMWCでは、NTTドコモの加藤社長が同社が提供してきた独自サービスの有効性を講演し、海外キャリアから大きな注目を集めました。その背景には、GoogleやAmazonなど、プラットフォームをまたがってサービスを提供する“OTT”に対抗し、キャリア自らがコンテンツ配信や物販を運営することで、収益性を高めたいという狙いがあるのです。今後は海外キャリアでも、日本のキャリアを“お手本”とした差別化が進んでいくものと思われます。

第3のOSとしてのTizenの可能性とは?
↑Web標準技術を中心に、様々なデバイス間での連携を実現。

 このような差別化の要求に対し、Androidはかなり柔軟に対応してきたといえるでしょう。それでもAndroidはGoogleのサービスが大きな存在感を示すことになり、これを嫌うキャリアが、もっと自由にプラットフォームをコントロールできる“第3のOS”に目を向け始めたというのが、2013年の状況です。

 残念ながらWindows Phoneは、通信業界のこうしたトレンドにうまく対応できていない印象があります。実際には、ファームウェアレベルでの差別化により、オーディオの高音質化やカメラ性能の高い端末を実現できるほか、カラフルな端末や防水端末を作ることは可能なのですが、これらは結局、マイクロソフトが想定した範囲内での差別化に過ぎず、端末メーカーやキャリアの要求に十分に応えるものとはなっていないのが現状なのです。

■ビジネスユーザーを取り込めるか

 一方、こうしたWindows Phoneの特徴は、ビジネスユーザーには歓迎される可能性が高いといえます。すでにビジネスユーザーは、どの製品を購入しても同じ操作性や管理性を得られるWindows PCに慣れているからです。

 ビジネス用途では、Windows Phone用Officeの動向にも注目したいところです。これまでのWindows Phone用のOfficeは機能的に大きく制限されていました。これは8インチクラスのWindows 8タブレットが、フル機能のOfficeを搭載していることとは対照的です。

 もちろん、5インチのスマートフォンにフル機能のデスクトップ版Officeを搭載するのは現実的ではありません。そこで期待されるのが、2014年の公開が期待されるストアアプリ版のOfficeです。もしこれをWindowsとWindows Phoneの両方に対応させることができれば、PC・タブレット・スマートフォンにまたがって一貫性のあるOfficeを提供できることになります。

 この場合のライバルはiPadとなるでしょう。現在のところ、ビジネス環境においてiPhoneの人気が高いこともあり、同じiOSであるiPadを導入する事例が多いように思います。しかしiPadでは、たとえキーボードを接続したとしても、Windowsのような生産性は発揮できないことが弱点となっています。もしアップルが今後のアップデートにおいて、iPadにおける生産性を改善したとすると、WindowsタブレットとWindows Phoneの普及にあたって強力なライバルになるでしょう。

■“Phone”の枠を超えられるか

 Windows Phoneはその名のとおり、まず”電話”として機能することを設計の出発点としており、逆に電話として不要と思われる機能は徹底的に取り除かれた”シンプル”なプラットフォームです。

 ただ、今日のスマートフォンには電話以上の機能が期待されており、Windows Phoneは機能を削りすぎている感は否めません。たとえばWindows Phone 8まで搭載されなかった画面キャプチャー機能は、たしかに画面を共有したり保存する手段としてあまり優れたものではないものの、現実的には必要な機能です。HDMIなどを利用したディスプレイの外部出力については、現在に至っても標準では搭載されていません。これも一般ユーザーが”電話”として使う上では不要な機能ですが、Windows Phoneを多くの人に広めていく上で、なくてはならない機能といえます。

 こういった”高度”な機能は、これまでWindows PCの守備範囲でした。しかしLumia 1520のように、簡単なタブレットとしても使える端末が出てきたことで、必ずしもWindows Phoneを”電話に特化した”端末に押し込めておく理由は弱まってきたといえます。

 このように、Windows Phoneがこれまでの”Phone”の枠を超えて進化していくかどうかが、今後のバージョンアップの重要なカギとなるでしょう。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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