3Dの世界に自分が入り込んでるように錯覚し、仮想現実を体験できる話題のヘッドマウントディスプレー『Oculus Rift』。
↑Oculus RiftはHMD内に魚眼レンズのようなものが入っています。魚眼レンズなので歪みが発生しますが、これをパソコン側で逆補正することで安価かつ広い視野角を実現しています。
今回、Oculus Riftについて日本の“私設”伝道師である“GOROman”さんを突撃して、Oculus Riftの新システムの体験と、夢のデバイスが切り開く世界をインタビューしてきました。
GOROmanさんが開発した『Miku Miku Living』は、Oculus Riftと2013年11月末に開発版がリリースされたばかりの『Kinect 2 for Windows』を組み合わせたシステムです。
3Dのミクさんの部屋を……
↑単にミクさんがソファーに座ってるだけに見えますが……。
実際の動作と連動してヴァーチャルで歩ける!
↑既存のKinectからスキャン精度が格段に上がったKinect 2でユーザーの位置を特定し、3Dの世界に反映させています。ちなみに背中のカバンには、Oculus Riftに映像を送り込んでいるノートPCが入ってます。
今までOculus Riftで3Dの世界を動き回るために、コントローラーの操作が必要だったのが、これからは普通に歩けばオーケー。ユーザーがしゃがめば視点も下がります。筆者も体験しましたが、今までOculus Riftでひどかった映像酔いがほとんどなかった点で素晴らしいと実感しました。
自分の部屋を3D化 フィギュアの3D自炊も
Oculus RiftとKinect 2のシステムを連携させることで、例えば、自分の部屋をスキャンして、3Dモデル化した仮装空間に入って歩くことが可能。GOROmanさんによれば「買い物のときにソファーをスキャンして仮想空間に置いてみて、サイズ的に入るかどうか、色が好みであるかをチェックできる。ネット通販でも、家具の3Dデータをダウンロードしてチェックしてもらうことができます」とのこと。
フィギュアを“3D自炊”して、仮想空間に隠せるのもポイント。「部屋がせまくてフィギュアが置けない!」とお嘆きのアナタでも、3Dのセカンドルームならいくらでも拡張できてしまいます。
そもそもOculus Riftとは
Oculus Riftはクラウドファンディング“Kickstarter”で資金を集めて起業した米OculusVRが、2013年5月頃から開発者向けキットの配布を始めました。
世の中にあるHMDとOculus Riftが大きく違うのは、300ドルという低価格でヘッドトラッキングまで実現したこと。市販のHMDというと、目の先に四角いスクリーンがあるような感じに見えるものが多いですが、Oculus Riftは視界全体が画面に覆われます。さらに内蔵のジャイロ・加速度・地磁気センサーで、頭の角度を検知。上を向けば空が、下なら地面といった感じで視界を切り替えてくれるので、3Dの世界に自分が入り込んでるように錯覚してしまいます。
『Unity』という一般にも公開されているゲーム開発環境でOculus Rift対応のソフトウェアを制作できます。
↑装着例はこんな感じ。
↑ジェットコースターに搭乗した感覚になれます。顏に扇風機の風を当てると、より臨場感がアップ。
Oculus Riftの価格は約3万(送料とか関税は別ですヨ)。おもしろい上に低価格なので、飛びつかない手はない!と、 開発者向けキットにも関わらずゲーム業界でもFPSなどのジャンルで対応が相次いでます。日本でも多くの技術者がゲットして、初音ミクと握手したり、添い寝したりと、エッジなソフトがわんさか生み出されております。
Oculus Riftで話題になったこと
↑GOROmanさんがOculus Riftをゲットし、ソッコーで2013年5月に投稿した動画。手の動きをとれる『Razer Hydra』を動かして髪をなでるというデモを見せて話題になった。
↑その後、Nao_uさんが3Dの世界に入り込み、『進撃の巨人』ばりの巨大ミクダヨーさんと戦う(?)動画を投稿。これもOculusを着けたら見応えがヤバそう。
↑Oculus Riftをかぶった状態でお見せできないのが残念です。
↑ねぎぽよしさん(Twitter ID“@CST_negi”)の『MikuMikuSoine』。
↑「3Dキャラと握手できない? ならば作ろう!」とGOROmanさんが生み出した『Miuku Miku Akushu』。Oculus Riftを装着し、三次元触覚インターフェース『Novint Falcon』に付いてるシリコンの手を握って動かすと、3D世界のキャラの手も動いて、笑うなどのリアクションをとってくれる。
↑360度の全天球写真が撮れるリコーの『THETA』。Oculu RiftとMIROさんが作ったフォトビューワー『RICOH THETA sphere photo viewer for Oculus Rift』(関連サイト)を併用すれば、その写真を撮った空間の中に入って鑑賞できます。
GOROmanさんいわく「今までも大学の研究室とかで同じようなシステムはあったけど、高額なのでちゃんとした用途の研究にしか使えなかった。一般人でも買えるOculus Riftが登場したこととUnityのようなエンジンの登場で、役に立つかどうかわからない、単に面白いだけでもソフトがつくれるようになり、多くの人が参加できるようになってきた」とのこと。
2014年にはOculus Riftはどうなるか
夢のガジェットOculus Riftは2014年にはどのように展開するのか、GOROmanさんに訊いてみました。
・開発者キット2の登場
2014年はOculus Rift開発者キット2も登場する予定。
「解像度がHDになって、恐らく位置トラッキングにも対応するのでは。あとは『今まで2分で映像酔いしていたが、最新版では45分も耐えられた』とOculus VRのCEOが発言していました(関連サイト)」
・Android対応
id softwareで『DOOM』をつくったジョン・D・カーマックがOculus VRのCTOに就任し、Android対応を担当している。
「現状はPCが必須だが、将来的にはモバイル環境でも使えるようになれば、新幹線で映画館の空間に入り込んで新作を見たり、満員電車で周囲の人々を好きなキャラに書き換えたりといったことができるかも?」
・360度ライブカメラ「Bublcam」のKickstarterでプロジェクトなど
ほかにも、Oculus Rift対応をうたう360度ライブカメラ「Bublcam」がKickstarterでプロジェクトを成立させてます。 THETAは静止画ですが、こちらはライブカメラというのがポイント。孫の運動会を生配信し、遠隔地の“じじばば”にOculus Riftを着けてもらって現地にいるように体験してもらう、みたいなことができちゃいます。
「映像は平面という常識が、球面に変わっていきます」
さらに将来は……
「アトム(原子)からビット(電子)へのコンバート社会の到来。しかも日本は土地が狭いので、物質的なもののビット化は加速するはず。今もソーシャルゲームで、JPEG画像のために100万単位でお金を投じる人もいますし、その傾向がさらに進むと思います」とGOROmanさんは予言しました。
↑GOROmanさん(Twitter ID“@GOROman”)。最近では、主婦にゲーム開発環境の『Unity』を教える“主婦ゆに!”(関連サイト)プロジェクトをでも脚光を浴びました。
↑伝道師らしく、10台以上のOculus Riftがズラり……。別に代理店としてハードやソフトを売っている訳ではなく、好きでOculus Rift用のプログラムを書いてる感じです。学生にも無償で貸し出しているとのこと。
Oculus Riftに興味がある人は『Oculus Festival in Japan』(通称“Ocufes”)(関連サイト)など、関連のイベントは頻繁に実施されていますので、2014年からぜひ体験してみませんか?
また、現在発売中の週刊アスキー1/7-14合併号 No.961(12月24日発売)では、“2014年に出るっ デジタル製品完全予測”という特集を掲載しています。Mac、タブレット、スマホなど、各業界の未来を予想する内容です。その中の“仮想現実”のカテゴリーでOculus Riftについて取り上げています。こちらもぜひ読んでみてくださいね!
●関連サイト
Oculus VR
(C) Crypton Future Media, INC. www.piapro.net
3D modeled by Tda (C)Crypton Future Media,INC.www.piapro.net
(2013年12月27日12:30追記)記事初出時、記事中リンクの動画サイトの作品と説明文が異なっている誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
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