週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

NTTドコモのiPhone導入で国内シェアはどう変わるのか?

 2008年、国内でiPhoneが発売されたときに通信事業者はNTTドコモになるのではないかという説が有力だった。それ以来、くすぶり続けている同社からの発売が、いよいよ現実のものとなると一部で報道されている。ここでは、この秋にNTTドコモからiPhoneが発売された場合に、国内シェアにはどのように影響するかをデータから検討してみる。

 スマートフォン市場そのものが、急成長している段階なので正確な予想は困難だが、手元にある数字でイメージをつかむことはできそうた。というのも、通信事業者ごとの“1~2年以内に導入したい端末”(角川アスキー総合研究所 メディア&コンテンツサーベイ 2013)を見ると、端末による差別化の影響は風雲急を告げている。

 このデータについては、一度、『週刊アスキー』2013年5月21日発売=931号の私の連載“神は雲の中にあられる”で一度触れているが、電気通信事業者協会(TCA)による契約数と掛け合わせてみることにする。通信事業者の契約者数を、NTTドコモを6150万人、auを3800万人、ソフトバンクを3300万人として集計するとグラフ1のようになった。

通信事業者別の利用者が“1〜2年以内に導入したい端末”
NTTドコモのiPhone導入で国内シェアはどう変わるのか?

 角川アスキー総研の調査では、ドコモ利用者の6.4%がiPhoneの導入意思がある。これを人数に置き換えた上のグラフでは、NTTドコモ利用者でiPhoneを買いたい人の推定人数は394万人となる。これは、auのそれよりも多く、ソフトバンクのiPhone購入希望者の82%に達する人数だ。つまり、“NTTドコモ利用者はiPhoneを買いたがっている”。

 この人たちは、(1)iPhoneを買わずに待つ、(2)ドコモでAndroidや従来型を導入する、(3)他キャリアに移る、(4)ドコモの契約を残しなから他キャリアも契約するのどれかを選ぶことになる。(4)については、やはり角川アスキー総研の調査で、NTTドコモとauの両方を契約している人は0.9%、同ソフトバンクは1.1%、3キャリアを契約している人は0.2%と少ないので、ここでは無視することにする(いずれかを契約している人を100%として計算)。

 394万人は、“1~2年以内に導入したい”人だが、2012年のスマートフォンの出荷台数を4000万台として計算すると、これに近い数がiPhoneを買いたい人たちとも概算できる。一方、2012年度のMNPの転入出状況でドコモは141万件の転出超過となったが、これの主要因はiPhoneだと仮定する(これ以外にキャリア間の差別化要因は少ない)。上記の(3)がこれに当たるわけだが、iPhone購入意向者に比べ十分に少ない数値なので転出はストップすることが予想できる。

 それでは、今年、NTTドコモでは約400万台のiPhoneが上乗せになるのか? これには、プラスとマイナスの2つの要因が作用するものと思われる。プラス面としては、この数値の根拠はアンケート調査で、NTTドコモからはiPhoneが出ない前提で答えられたはずである。したがって、「NTTドコモからiPhoneが出るなら私もiPhoneにする」という人が、上記グラフのNTTドコモのAndroidや従来型携帯の導入希望者に含まれることが予想される。

 一方、マイナス面としては、iPhoneが買われるぶんだけ、いままでAndroidや従来型を買っていた(2)の層は減少するはずである。過去4年の調査においてAndroidのほうが導入希望者に比して実際に買われる端末数が大きくなる傾向があった。これは、“とくに欲しい端末を決めていない人”がショップに行くとAndroidを買うケースが多いからだ。この層がどう動くかがカギとも言える。

 iPhoneは、2008年の国内発売のあと、ソフトバンクの“iPhone for everybody”キャンペーンでの底辺拡大、白モデルの登場での女性客増、auからの発売といったトピックがあったが、もしNTTドコモから発売されることになればさらに大きな転換点を迎えることになる。ドコモからのMNPの転出はストップ、ドコモ内でのiPhoneとAndroidのシェア変化などもある。もうひとつ、世界市場ではAndroidがiPhoneの6倍のシェアを獲得しているが、日本は世界でももっともiPhoneのシェアの高い国だと言われる。それが、出荷ベースでは1~2年の間に世界的にも稀なiPhoneがAndroidを逆転する状況となる可能性がある。さらに2~3年後にはシェアでの逆転も考えられる。

※角川アスキー総合研究所 http://www.lab-kadokawa.com/
※メディア&コンテンツ・サーベイ 2013(n=10,007)調査時期:2013年1月
※あくまで現状の数値をもとにした概算で、iPhoneの新モデルの内容(ゴールドモデルや廉価版が登場すると噂されるほかドコモ独自のフィーチャーなど)、そのほかの外部要因を配慮していない。
※ドコモからiPhoneが発売されない場合は黒矢印のようにユーザーが流れる可能性がある。

(2013年9月6日16時2分追記)図のなかの黒矢印についての説明を追加しました
(2013年9月6日20時55分追記)iPhone購入意向者の1年間ぶんの概算シュミレーションに関連して原稿の一部を訂正いたしました
 

【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員。元『月刊アスキー』編集長。元“東京おとなクラブ”主宰。コミケから出版社取締役まで経験。現在は、ネット時代のライフスタイルに関しての分析・コンサルティングを企業に提供し、高い評価を得ているほか、デジタルやメディアに関するトレンド解説や執筆・講演などで活動。関連する委員会やイベント等での委員・審査員なども務める。著書に『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書)など多数。『週刊アスキー』巻末で“神は雲の中にあられる”を連載中。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう