8月26日、ユビキタスエンターテインメント(UEI)は、独自OSを搭載した手書きタブレット『enchantMOON』の開発者イベントを東京 五反田のゲンロンカフェで開催。そこでは、OS『MOONPhase』の仕様と、搭載するプログラミングツール『MOONBlock』の新機能、そしてenchantMOONの今後などについて語られた。
当日の参加者は30人前後だったが、参加希望者は120人に及んだとのこと。また、当日の様子はUstreamで中継されており、現在のところ600回前後の視聴がされるほどの人気だ。
■苦戦するもenchantMOONの出荷は順調
最初にUEI社代表取締役社長兼CEO 清水亮氏より、enchantMOONの出荷状況について発表があった。現在週に500台近い台数を出荷しており、8月26日の出荷分で注文の88パーセントが出荷され、未出荷は残り8パーセントほどになったという(予備の5パーセントはサポート用の端末)。当初は週に1000台前後を出荷予定だったが、歩留まりの悪さで週500台前後に留まっている。
■独自OS『MOONPhase』は、月へ向かうロケットである
続いて濱津氏から、OSの仕様について語られた。独自OS『MOONPhase』は、基幹部分のカーネルにLinuxを使い、そこにAndroid ICS、つまりスマホで使われているAndroidの制御部分を改良した“Saturn V(サターン5)”というユニットがOSの全体制御部分として搭載されている。そう聞くと一瞬、Androidの改良版のようにも思えるが、UIはもちろん、データとアプリケーションの関係自体がAndroidとは根本的に違うため、ベース部分は同じだったとしても別物だ。MacOSXとFreeBSDを同一視する開発者はあまり居ないと思うが、それと同じレベルと考えて良いだろう。
Saturn V上で動く画面全体の管理やペンの挙動、ページの管理、コマンドの実行、シールの管理などを制御する部分が“Columbia(コロンビア)”と呼ばれるユニット(UEIオリジナル)で、Columbiaと連動し、HTMLの実行や画面の描画、タッチされたときの挙動処理などを行なうのが“Eagle(イーグル)”ユニットだ。『MOONPhase』は、ベースとなるLinuxカーネル上にこの“Saturn V”、“Columbia”、“Eagle”の3つのユニットが動作することで、独特のペン操作を実現している。
ちなみに、人類を最初に月へと運んだアポロ11号は、打ち上げロケットがSaturn V、司令船がColumbia、月着陸船がEagleだった。『MOONPhase』においても、それぞれの機能がアポロ11号と似たような役割を持っているのが興味深い。もちろん、この分野に造詣が深い清水氏が意図的に付けた名前であろうことは容易に想像できる。
■毎月追加される新ブロック
次に布留川氏より、プログラミングツール『MOONBlock』についての解説が行なわれた。『MOONBlock』とは、『enchantMOON』で書かれた絵や文字を起動トリガーにし、プログラムの作成と実行を行なうものだ。
特徴的なのは、ブロックを並べるだけでプログラミングができる点だ。既に条件分岐やキャラクタの配置、キャラクタの移動など様々なブロックが収録されている。とはいえ、まだブロックは基本的な部分しかないため、今後はOSのアップデートで様々なブロックが追加される。ブロックの追加は毎月行われ、記念すべき最初のブロックの追加内容が、会場で発表された。
今回追加されるのは、“サウンド”、“確率”、“グローバル変数”の3つ。“サウンド”は予め用意された音を選択して鳴らすブロックだ。ユーザーが自分で用意した音は選択できないが、既存のファイルに上書きすればできなくはないとのこと。“確率”とは、おみくじなどのアプリで使えるように、処理結果を指定した確率で割り振るというもの。“グローバル変数”は、ゲーム全体のスコア処理など、プログラム内どのブロックからも参照できるようにしたもの。
また、他にもUEIが開発したJavaScriptベースのゲーム開発言語『enchant.js』で作られたゲームをenchantMOONで動かす方法や、enchantMOONの機能を追加する“シール”を作るためのデータ形式の解説などが行なわれた。一通りの情報が開示されたおかげで、少しJavaScriptなどの言語の経験がある開発者ならば、enchantMOONの機能を追加するシールが作れそうだ。
■enchantMOONのシールコンテストを開催
最後に清水氏から、enchantMOONの今後のアップデート計画がプレゼンされた。中でも目を引いたのが、賞金総額100万円のenchantMOONのシールコンテストだ。“シール”とは、enchantMOONの機能を追加するアプリのようなもので、開発コンテストは10月1日~12月1日までエントリーを受け付ける。入選作品はInternationalCESのUEIブースで公開するとのことで、詳しい内容は9月に改めて発表になる。
なお、enchantMOONのシールは既に一般ユーザーが作成した、twitterへの投稿シール(esmasui氏作)や、罫線シール(TOMO氏作)、グリッドシール(永野哲久氏作)などがあるとのこと。
※これらのシールを使うためには、OSをVer2.4.0以降にアップデートする必要がある。
今後の『enchantMOON』のアップデート予定は以下の通り。
9月 パフォーマンス改善、EagleVM 2.0搭載
10月 ページダウンロード機能追加
11月 パフォーマンス改善
12月 シール/ページアップロード機能追加
清水氏は今後、まずは、ユーザーがいじれないSaturn VやColumbiaなどのバグフィクスやパフォーマンス改善を優先していくと宣言。UEI自身はシールの機能追加は積極的に行なわず、ユーザーの開発コミュニティの力を借りて進化を進めていくつもりのようだ。これを清水氏は“共想”と呼んでいた。
また、こういった開発者のためのイベントは今後とも開催される予定だ。
10月 MOONBlockハッカソン
11月 TOKYO DESIGNERS WEEKに出展
12月 Crew&Developers Conference
2014年1月 InternationalCES
2014年7月 1周年記念イベント
2014年8月 Crew&Developers Conference
『enchantMOON』は発売されてそれで終わりのデバイスではなく、むしろこれからユーザーとUEIが育て上げていくものだ。おそらく、今の『MOONPhase』と1年後の『MOONPhase』は、ベースの部分は同じだとしても、全く別の印象を受けるOSに成長しているだろう。どのような進化を遂げるのか、今後が楽しみなところだ。
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