Surface RTの売れ行きについて様々な話題が盛り上がるなか、Coreプロセッサーを搭載した『Surface Pro』の存在も気になるところです。
日本におけるSurface Proは海外から遅れる形で投入されたものの、日本だけの256GB版やOffice標準搭載などで差別化されており、米国よりも割安な価格設定が魅力となっています。
一方で、Surface ProはWindows 8を前提に最適化されたタブレットですが、「Windows 8だから買いたくない」という声も少なからずあります。Windows 8に魅力を感じない人は、Surface Proにも関心を持てないはずです。
逆に言えば、もしもSurface ProにWindows 7をインストールする手法を確立できたなら、Surface Proの売上に貢献できるかもしれません。
↑Surface ProにWindows 7はインストールできるのか? |
そこで今回は、昨年に引き続き、夏休みの自由研究と題して、Surface ProとWindows 7について調査してみました。
■Surface ProにWindows 7はインストールできない
結論から先に述べると、残念ながらSurface ProでWindows 7を起動することはできませんでした。
具体的には、“UEFIモード”に対応している64ビット版のWindows 7を用意し、FAT32でフォーマットしたUSBメモリーに所定のブートローダーを配置。Surface ProをUSBメモリーから起動してみたものの、Windows 7のインストーラは起動しませんでした。
また、Surface Proとは別のPCにUEFIモードでWindows 7をインストールし、そのパーティションをバックアップした上で、Surface Proにリカバリーするという方法も試してみましたが、やはりWindows 7は起動しませんでした。
その原因について、以下に解説していきます。
■UEFIモードとは
UEFIは、従来のPCに搭載されていたBIOSに代わる新しいファームウェアとして普及しつつあります。BIOSに比べて起動が高速になっているほか、MBRに代わるGPT(GUIDパーティションテーブル)に対応したことで、2TBを超えるドライブから起動が可能となっています。
また、Windows 8対応PCではUEFIモードに加えて、セキュアブートにも対応しています。セキュアブートとは、OS起動時に使用するプログラムのデジタル署名を検証することにより、OS起動前に悪意のあるプログラムが実行されることを防止する技術です。Surface Proの出荷時の設定ではセキュアブートが有効な状態となっています。これは手動で無効にすることができます。
↑Surface Proの設定メニュー。Volume Upボタンを押しながら電源を投入すると表示される。 |
64ビット版のWindows 7はセキュアブートには対応していないものの、UEFIには対応しています。このことから、Surface Proのセキュアブートを無効にすれば、Windows 7をインストールできそうに思えます。しかしUEFIモードでWindows 7を起動するためには、後述する“CSM”が必要なのです。
■Windows 7の動作にはCSMが必要
ところで、Surface ProにWindows 7をインストールできない理由は、マイクロソフトのサポート情報にも掲載されています。その原因は、Surface ProがBIOS割り込み“INT 10H”をサポートしていないため、と説明されています。
INT 10Hは、PC/AT互換機のビデオBIOSを用いたVGA操作に関する割り込み番号です。具体的には、PCを起動したあと、OSの初期化段階において画面に文字やグラフィックを表示するために使われています。こういった古典的なBIOS割り込みに依存しているという意味で、Windows 7は“レガシー”なOSと言えます。
UEFIモードはBIOS割り込み機能を提供しないため、“レガシー”OSは動作できません。そこでUEFIモードでは、互換性維持のためのCompatibility Support Module(CSM)というモジュールを利用できます。CSMが有効な状態では、UEFIモードにおいて64ビット版のWindows 7やWindows Vistaといった“レガシー”OSを動作させることができます。逆に言えば、UEFIモードでWindows 7を動作させるためには、CSMが必須となります。
↑ThinkPad X230のBIOS。UEFIモードでCSMの有効/無効を設定できる。 |
↑同じThinkPad X230の例。セキュアブートを有効化しようとすると、CSMは自動的に無効となる。 |
しかしSurface Proでは、セキュアブートを無効化することはできても、CSMを利用することはできません。このように、CSMを搭載していない純粋なUEFIの実装は“クラス3”のUEFIと呼ばれています。これに対してCSMによりレガシーOSをサポートする実装は、“クラス2”のUEFIと呼ばれています。
Surface Proは、セキュアブートとWindows 8に最適化されたクラス3のUEFI実装を採用しています。これこそが、Surface ProでWindows 7が動作しない理由と言えます。
■Surface ProはWindows 8専用タブレット?
64ビット版のWindows 7同様に、64ビット版のWindows VistaやWindows Server 2008もUEFIモードをサポートしています。しかしWindows 7と同様の理由で、CSMに対応していないSurface ProにこれらのOSをインストールすることはできません。
パーティションを直接操作した場合も同様です。試しにUEFIモードでCSMが有効な状態の別のPCにWindows 7をインストールし、Acronisの『True Image 2013』でバックアップしたGPTパーティションをSurface Proにリカバリーしてみたものの、やはり起動しませんでした。
このことから、Surface Proで動作するOSは、クラス3のUEFIに対応したWindows 8およびWindows Server 2012ということになります。あるいは、この条件をクリアーしたLinuxも動作する可能性があります。たとえばUbuntu 13.04をSurface Proで実行することができました。
↑Surface ProでUSBメモリーからUbuntu 13.04を起動した様子。 |
このように、Surface Proは完全にWindows 8専用のタブレットというわけではありません。とはいえ、今後マイクロソフトがWindows 7をクラス3のUEFIに対応するようアップデートすることも考えにくいと言えます。Surface Proにおいて実行できるWindowsは、実質的にWindows 8以降のバージョンと考えてよいでしょう。
山口健太さんのオフィシャルサイト
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