2013年08月14日17時00分

Windows情報局ななふぉ出張所

Surface RTの“値下げ”が続く理由とは?

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 8月9日より、iPadユーザーがSurface RTを購入することで最大1万円のキャッシュバックを受け取れるキャンペーンが始まっています。

Surface RTの“値下げ”が続く理由とは?
↑iPadユーザー向けに最大1万円をキャッシュバックするキャンペーンが開始。

 Surface RTは7月12日に本体価格が1万円値下げされ、それまでのキャンペーン価格を通常価格にすることが発表されたばかり。今回のキャンペーンはiPadを所有していることをシリアル番号で確認するなど、やや条件が厳しいものの、“値下げ”施策が相次いでいるという印象を与えるものとなっています。

 このようにSurface RTの“値下げ”が行なわれる背景について考えてみたいと思います。

■マイクロソフトはSurface RTを作りすぎた?

 米マイクロソフトの第4四半期(4~6月期)決算では、Surface RTの在庫調整費用として9億ドル(約866億円)が計上されたことが明らかになりました。その後、スティーブ・バルマーCEOは社内向けに、Surface RTを販売見込みよりも多く生産してしまったと明かしたと海外で報じられています。

 日本においては、Surface RTの1万円値下げにより量販店での販売台数がiPadを一時的に上回っており、やや状況は異なる可能性はあります。しかし世界的に見てSurface RTは在庫が余っており、値下げによって在庫を一掃する必要に迫られているものと考えられます。

 たとえば米国ではTechEdやWPCといったイベントにおいて、参加者向けにSurface RTを99ドルで販売したことが話題となりました。

Surface RTの“値下げ”が続く理由とは?
↑WPC 2013ではSurface RT(タイプカバー付き)が99ドル、Surface Proが399ドルで販売された。

 その後、7月中旬には世界各国でSurface RTの価格が見直され、米国では約30%の値下げとなりました。現在はSurface Proについても期間限定で100ドルの値下げが行なわれています。

Surface RTの“値下げ”が続く理由とは?
↑米国でのSurface RTの最小構成は349ドル(約3万4000円)。

 このようにSurface RTの売れ行きは不振が続いているとはいえ、筆者はSurface RTが完全に失敗だったとは考えていません。マイクロソフトは従来の“ソフトウェア会社”から、“デバイス+サービス”の会社に進化するという方針を打ち出しています。その第1弾であるSurface RTには、マイクロソフトという会社が新たにデバイスを作り始めたという事実を世界中にアピールする役割もあったはずです。そういう意味では、大きく話題になっただけでも、一定の成功を収めたと言ってよいでしょう。

■iPadを狙い撃ちにした理由とは?

 それでは、今回のキャンペーンはどれくらい話題となったのでしょうか。SurfaceのFacebookページを見てみると、8月8日現在で、告知に対して1万8000人以上からの“いいね!”が付いています。Surfaceのページにおける“いいね!数”は多くても100~300程度だったことと比べると、かなりの盛り上がりと言えます。

 しかしそのコメントを見てみると、必ずしもキャンペーンを歓迎するコメントばかりではありません。iPadユーザーにメリットがあるキャンペーンにも関わらずiPadユーザーが不快感を表明していたり、その背景に在庫の山があることを指摘するコメントも見られます。

 あえてiPadを狙い撃ちした背景には、Surface RTのどのような点がiPadより優れているのかを周知したいというマイクロソフトの意図が感じられます。具体的には、“Office搭載”や“キーボード”、“スタンド”といった特徴がiPadに対する優位性として挙げられています。

 ほかにも海外では、iPadとWindowsタブレットを比較したCMが制作されており、その最新作としてiPadとSurface RTを直接比較したCMも公開されています。

Surface RT vs. iPad

↑iPadとSurface RTを直接比較するマイクロソフトによるCM。

Dell Tablet vs. iPad

↑以前に公開された、DellのWindows RTタブレットをiPadと比較するCM。

 このようにマイクロソフトは“対iPad”にこだわっていますが、その一方でAndroidタブレットのユーザーや、普通にSurface RTを購入したい非iPadユーザーから反感を買った可能性もあります。たとえばタブレットを見せるだけでキャッシュバックの対象とするなど、キャンペーンの適用対象をもっと一般化したほうがよかったのではないかとも感じます。

 また、マイクロソフト製品のファンに向けて、より多くのSurface RTを販売するというアプローチも考えられます。すでにSurface RTやSurface Proを持っている人にもう1台Surface RTを売ることは、マイクロソフトに懐疑的なiPadユーザーを説得するよりずっと容易かもしれません。あるいはWindows Phoneを所有しているユーザーも、キャンペーンの対象にしてほしかったところです。

■タブレットで仕事ができるのは本当にメリットなのか?

 iPadからの乗り換えキャンペーンのサイトでは、“Surface RTに乗り換えをすすめる5つの理由”の筆頭に、Officeの標準搭載を理由として挙げています。

Surface RTの“値下げ”が続く理由とは?
↑キャンペーンサイトが説明する5つの理由。

 Windows RTに標準搭載された『Office 2013 RT』は、マクロやVBA、アドインに未対応など、細かな制限はあるものの、ほとんどの機能はWindows 7や8向けのOfficeと同等で、文書にももちろん互換性があります。

 そこにタッチカバーとタイプカバーという2種類の純正キーボードが加わることで、Surface RTにはPC並みの生産性が期待できます。このことからキャンペーンサイトでは、「仕事にもエンターテイメントにも使える」とアピールしています。

 エンターテイメント性という点ではiPadも十分に優れているため、Surface RT独自の優位性は、「仕事に使える」という点にあると考えてよいでしょう。しかしこの点について、筆者は2つの不安を覚えています。

 1つめは、本当に仕事に使うならば、Windows RTではなく、Windows 8タブレットのほうが向いているのではないかという点です。タブレットで仕事をしようと思い立ったユーザーの多くは、Windows RTではなく、まずWindows 8タブレットを検討するのではないでしょうか。

 もうひとつの不安は、タブレットで仕事をしたいというユーザーがどれくらい存在するのかという点です。たとえば日本マイクロソフトの従業員のなかには、「自宅や外出先、休暇中であっても、Surface RTなら時と場所を選ばす仕事ができる」ことを嬉々として語る人がいます。

 しかし平均的なユーザーにとってそれは必ずしもメリットではなく、逆にデメリットと受け取られるかもしれません。帰宅後や休暇中には仕事のことを考えたくないという人のほうが、むしろ一般的ではないでしょうか。

 このように、Surface RTを「仕事に使える」とアピールすることは、iPadに対して独自の強みを築き上げる可能性があります。その一方で、"Windows 8タブレット"の魅力を引き立ててしまう可能性や、会社以外で仕事をしたくないユーザーを遠ざけてしまう可能性もあるのです。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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