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「Nexus7は本当にiPadより売れていたのか?」を石川温氏が読み解く

2013年08月15日 19時30分更新

 7月24日、グーグルは『新Nexus7』をサンフランシスコで発表した。その際、グーグルでAndroidとChromeを統括するスンダル・ピチャイ氏が行なったプレゼンの一言に耳を疑った部分がある。

「Nexus7は日本ではiPadよりも売れている」
 

 Nexus7は、日本でも人気のあるタブレットだ。最大の魅力はスペックと比較してコストパフォーマンスが優れている点だ。昨年9月の発売当時、16GBモデルで1万9800円というのはかなりのインパクトがあった。WiFiルーターとの契約を組み合わせれば、本体価格はさらに下がるだけに、当然よく売れていたのは確かだ。

新Nexus7
↑新しい『Nexus7』は、Android4.3を搭載。米国では16GB版が229ドル(約2万3000円)で発売している。国内販売もまもなく発売予定。

 実際、昨年12月には、ある「調査会社」の調べとして、Nexus7がこれまで首位をキープしていたiPadを逆転し、トップシェアに踊り出たという報道があったほどだ。今回のピチャイ氏のプレゼンは、この「調査会社」のデータもしくは報道を引用したものと思われる。
 しかし、その後もiPad以上にNexus7が売れ続けているかと言えばかなり微妙だ。

 実はもうひとつ興味深い発言がある。日本マイクロソフトが7月2日に開催した経営方針説明会にて、同社の樋口泰行社長が「Surface RTは量販店で4週連続、iPadを上回る販売実績となっている。量販店での展示スペースは小さいにも関わらず、このような実績に我々も驚いている」と語ったのだ。

ここでも、「売れている」比較対象になったのはアップル iPadだ。

日本マイクロソフト樋口社長
↑『Surface RT』についてiPadの販売実績を上回ると説明する日本マイクロソフト・樋口社長。

 タブレット市場は、一昔前まではアップル iPadの独壇場であり、「タブレット市場=iPad」という雰囲気すらあった。しかし、昨年登場した『Nexus7』や『Surface』などによって、選択肢が増えてきたことは間違いない。

 発売当初の瞬間風速で、それらの新しいタブレット端末がiPadを上回る販売台数を記録することもあり得るはずだ。確かに、そのような調査結果や報道が出るものの、調査データが、限られた家電量販店のみを計測したものだったケースが多い。Surfaceも、取り扱う家電量販店は大手数社に限定されている、といったことも考慮しなくてはいけない。

iPad retina
↑タブレット市場で、多くの端末からライバル視されるiPad。
Nexus7と比較されがちなiPad mini
↑「タブレット=iPad」というイメージを崩す端末は出てくるのか?

 その点、アップル iPadに関しては、家電量販店のみならず、アップルの直営店やWebストア、さらにLTEモデルであれば、全国に数千店舗あるKDDIとソフトバンクのキャリアショップで取り扱われている。
 調査会社が公表するデータは家電量販店のみが調査対象となっており、アップルストアやキャリアショップの数値は反映されていない。そのため、どうしても実態を反映したものにはなりにくいのだ。
 

 かつては音楽プレーヤー市場において『iPod』も比較対象とされた時期があり、「ソニーのWalkmanがシェアで逆転した」と何度も報道されてきたが、iPodが新製品発表前で売り上げが一時的に落ちただけで、新製品が発売されれば、すぐにiPodのシェアが首位になるということを繰り返してきた。

 本来であれば、アップルも積極的に販売数を開示してくれればいいのだが、同社の決算では全体の数字しか公表しない。KDDIやソフトバンクもアップル製品の販売実績となると、なぜか無口になってしまう(アメリカのキャリアは比較的、アップル関連製品の数字を公表している)。

アップルも積極的に販売数を開示してほしい
↑アップルは全体の数字はキーノートなどで公表するが、詳細な販売実績は明らかにしていない。

 現状の調査データだけでは、どうしてもどの商品が売れ筋なのかの状況は見えにくい。アップルは「iPadは売れている」と自信を持っているのなら、ぜひとも積極的にデータを開示してもらいたいものだ。

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