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歴史を振り返れば見えてくるNFCの未来

NFC25年間のあゆみ:NFC付録号特別企画

2013年08月09日 17時00分更新

 NFC登場までになにが起こり、そして先になにが待っているのか? NFCがもたらす魅惑の未来を大胆予測する!

■2013年はNFCの爆発的普及期

 NFCと同じ近距離無線通信技術FeliCaの研究が始まったのが1988年。それが日本でEdy、Suicaとして登場したのが2001年だが、実用化に時間がかかったのはすでに鉄道網で磁気カード採用が決まっていた(1991年から)ためで、技術障壁があったわけではない。2004年にドコモがFeliCa対応携帯電話を発表したときには、すでにSuicaが普及していたため、“おサイフケータイ”が世界に先駆けて急速に広まった。

 NFC対応携帯電話は2007年ノキアから、NFC対応スマートフォンは2011年にグーグルからリリースされるが、日本でNFC搭載端末普及がやや遅れたのは、あまりにおサイフケータイが普及していたためとも言えるだろう。しかし、2011年11月にNFCとFeliCaの両方に対応した無線通信LSIが商品化され、2013年5月に4大キャリアが発表したスマホの多くがNFCに対応した。2013年はNFCにとって爆発的普及期なのだ。

FeliCa内部写真
NFC25年間のあゆみ
↑非接触ICカードであるFeliCaは、Suicaによって一気に普及した。無線通信チップと不揮発メモリーが内蔵されている。
初のNFC搭載端末
NFC25年間のあゆみ
↑NFCを搭載した初めての携帯電話は、ノキアの『Nokia 6131 NFC』。
FeliCaとNFCが統合
NFC25年間のあゆみ
↑2011年11月にソニーがFeliCaとNFCに両対応した無線通信LSIを商品化し、両規格を同時に搭載することが容易になった。

■近距離無線通信史

1988年
 FeliCaの基礎技術研究をソニーが開始
1997年9月
 香港『オクトパスカード』がFeliCaを初めて採用
2001年11月
 Edyの実用サービスが開始
2001年11月
 JR東日本がSuicaを導入
2003年12月
 NFC IP-1規格制定
2004年3月
 ノキア、フィリップス、ソニーがNFC Forumを設立
2004年6月
 FeliCa対応携帯電話をドコモが発表
2005年1月 
 NFC IP-2規格制定
2007年1月
 NFC対応携帯電話『Nokia 6131 NFC』発表
2007年3月
 PASMOサービス開始
2010年10月
 FeliCa対応スマホ『IS03』をauが発表
2011年6月
 AES暗号対応の次世代FeliCaチップをソニーが発表
2011年10月
 NFC対応スマホ『GALAXY Nexus』発表
2011年11月
 NFCとFeliCaの両方に対応した無線通信LSIをソニーが商品化
2011年12月
 『GALAXY Nexus』をドコモが発売
2012年5月
 NFCとFeliCaの両方に対応した『ISW16SH』をauが発表
2013年5月
 イー・モバイル、au、ドコモ、ソフトバンクが発表した夏モデル22機種中16機種がNFCを搭載

おサイフケータイはドコモから
NFC25年間のあゆみ
↑2004年6月におサイフケータイ『F900iC』、『P506iC』、『SH506iC』、『SO506iC』が発表。
夏スマホのほとんどがNFC搭載
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↑ドコモ2013年夏モデルは『AQUOS PAD SH-08E』、『らくらくスマートフォン2 F-08E』以外はNFCを搭載した。

■2013年の予測 ウェアラブルデバイスへの実装

 Fitbit、FuelBand、UPなどヘルスケアを目的にしたウェアラブルデバイスにNFCが搭載されることのメリットは大きい。スマートフォンやタブレットとの設定・同期作業が簡略化されるのはもちろん、たとかった年齢層がユーザーとなり、市場の大幅拡大が期待できる。スマートフォンとレコーダー、PCとデジカメ、タブレットとテレビなどを専門知識なしに接続できれば、それだけで買い替え需要を掘り起こせる。えば飲食店で食事する際に、メニューに埋め込まれたICタグをウェアラブルデバイスでタッチするだけで、品目、原材料、栄養素、カロリーなどを読み込めるようになれば、よりきめ細かく健康管理を行なえる。

ユーザビリティーが向上する
NFC25年間のあゆみ
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↑UPの現行機では、飲食物のデータ入力はスマホで行なう必要がある。ウェアラブルデバイスでタッチするだけで入力できれば利便性は飛躍的に高まる。

■2014年の予測 PC・家電・AV機器のセットアップがなくなる

 スマートフォン周辺機器の一部では利用が始まっているが、PC・家電・AV機器のすべてにNFCが実装され、それぞれを接触するだけで相互データ通信が可能となれば、設定作業が障壁となって利用できなかった年齢層がユーザーとなり、市場の大幅拡大が期待できる。スマートフォンとレコーダー、PCとデジカメ、タブレットとテレビなどを専門知識なしに接続できれば、それだけで買い替え需要を掘り起こせる。

LGの『ポケットフォト』ですでに実現
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↑『ポケットフォト』は専用アプリ導入後、NFCを有効にしてタッチするだけで使い始められる。印刷はBluetooth経由なので1分以内と高速だ。

■2015年の予測(1) 乗用車がドライバーにパーソナライズ化される

 車載電子制御システム標準化のため設立されたJASPARは、数年以内の実用化を目指し、車載制御システムにおけるNFC利用のための標準仕様策定を進めている。仕様には、鍵の解除やエンジン始動などNFCを使ったキーシステムだけでなく、ドライバー好みのシートポジションやオーディオの自動設定、スマートポスターから目的地情報を読み込みナビゲーションへ転送するなど、具体的かつ広範囲に及んでいる。利便性だけでなく安全性にもかかわるだけに、NFCの早期普及が期待される分野のひとつだ。

NFC活用を進めるJASPAR
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↑JASPARのワークグループに所属しているトヨタ自動車の花岡健介氏(左)、本田技術研究所の古川英夫氏(右)に話を伺った。
NFCを使ったキーシステム
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↑スマートフォンが鍵の機能を取り込むことで乗車時にキーを取り出す必要はない。複数のキーをまとめることも可能だ。※イラスト提供 JASPAR
好みの設定に自動変更
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↑ドライバーが代わるたびに体格に合わせてハンドルやシートのポジションを細かく変更する必要がなくなる。※イラスト提供 JASPAR
カーナビに情報を転送
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↑サービスエリアや道の駅などに貼られたスマートポスターから目的地情報を取り込み、カーナビにすぐ転送可能となる。※イラスト提供 JASPAR

■2015年の予測(2) スマートデバイスのマナー設定が自動化

 映画館、美術館、病院、飛行機機内などで、スマートフォンやタブレットを利用する際のマナー設定・電源オフの操作は、ユーザーの良識にまかされているのが現状だ。上記のようなスペースに入る際に、入場口のICタグにスマートデバイスをタッチすることを義務付けることで、映画館や美術館ではマナーモード、病院や飛行機機内では電源オフといった設定変更を一律に実施することが可能となる。NFCを利用したマナー設定自動化に対応していない端末は、係員による目視確認が必要になるが、その手間は大幅に削減できる。

入館時にタグをタッチ
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↑サウンド、WiFi、機内モードのオン・オフが、その空間のポリシーに合わせてすぐに切り替えられれば、ユーザーのメリットも大きい。※イラスト 前野正子

■2016年の予測 マイナンバー(個人番号)カードへの搭載

 共通番号(マイナンバー)法案が2013年5月24日に参院本会議で可決、成立しており、2016年1月から番号の利用が開始する。それまでに希望者には、氏名、住所、顔写真などを記載したICチップ入りの"個人番号カード"が配られる予定だ。この個人番号カード自体の仕様は現時点では不明。フェーズⅠ"社会保障及び税の分野"、フェーズⅡ"幅広い行政分野"、フェーズⅢ"民間のサービス等"と、段階的に利用範囲を拡大していくことが検討されているが、プライバシーや費用対効果において、問題を指摘されている。

免許証・住基カードに続く第3のICカード
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↑運転免許証、住民基本台帳カードはすでにICカード化されているが、縦割り行政のなかでは、有効活用されているとは言えない。

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