“第20回東京国際ブックフェア”が2013年7月3日、東京ビッグサイトで開催。テープカットにはブックフェア名誉総裁の秋篠宮、同妃両殿下をはじめ、KADOKAWAの角川歴彦会長、主催団体の日本書籍出版協会の理事長で小学館の相賀昌宏社長、大規模書店、後援団体、海外関係者など51名が参加した。
基調講演は“出版業界のトランスフォーメーション~Changing Times, Changing Publishing~”の題で電子書籍、Amazonなどの海外勢を前に出版業界がどう変わっていくべきかをテーマにKADOKAWAの角川歴彦会長が務めた。
出版業界の売り上げ減は13年間続いている。出版社、書店、取次の出版三者による委託制度、再販制度や著作権制度と“堅牢な出版エコシステム”があり、「すばらしい制度があったため、出版社は変われなかった」と、出版業界を支えたきた体制だが“制度疲労”を起こしているとした。現在、出版三者がそれぞれ深刻な問題を抱えており、そこに電子書籍が本格化した2012年から2013年に外からのチカラにより、パラダイムシフトが起こることになった。
「書籍をネットにつなげたAmazonジェフ・ベゾスの発明。スティーブ・ジョブズのiPadの発明。時間は掛かったが、2012年に本格的な電子書籍が生まれた。フォーマットはEPUB 3.0」と、電子書籍のキープレーヤーの存在と制度の補完、それにより2012年に日本が電子書籍元年となり、パラダイムシフトが起こった理由に説明。2012年にはKADOKAWA自身も、「黒船が日本マーケットに完全上陸を果たした。カナダのkobo、Google、Amazon、アップルと海外勢4社と半年間に契約を交わしたのは記憶に残る大仕事だった」とした。
また、「パラダイムシフトは偶然ではない。背景にデジタル化がある。アナログ体制からデジタル体制に変わる。真剣に考えないといけない。音楽、映画、ゲーム業界はデジタル化が果たされている。最後のコンテンツ業界、出版界のデジタル化が始まった」とデジタル化によるコンテンツ産業の変化は出版界も避けられないと説明。そのうえで「音楽、放送、映画、ゲーム、デジタルデータとどう付き合っていくかが重要なテーマになる。各業界に学ぶことがいっぱいある」と先行する業界に手を組み進めていく必要性を説いた。
さらにその業界も音楽はアップル、書籍はAmazonのシステムが独占しているとし、1995年から始まるAmazonのeコマース事業の変遷を説明。「15年の間に消費者を相手にするBtoCからBtoBで企業をサポートするようなビジネス、注文した翌日には個人の自宅に届けられるまでに変わっている」と変化の速さを紹介し出版業界をもう一度見つめ直すとした。
そして、「出版界のルールを変えるにはどうしたら良いか」、内側からのイノベーションを起こすには「出版社の権利を獲得するためにはITを使う」と説明。「流されるのか、業界のルールを変えることに踏み込めるのか大変な決断がいる。Amazonにできることは出版業界もできる。Amazonが大きくなってしまったのは出版業界に欠点があった。Amazonは新刊書店だけでなく、中古、古本屋の仕事、ロングテールもやっている。対抗軸ができないか。余生の中で、こういうことに時間を割いていきたい」とAmazonのできることに出版界がひとつになって対応することの必要性を説明。
書店も“座して売る”からデジタル化し、O2Oを活用して、店頭をアップルのプラットフォーム“iTunes Store”のように、人、モノ、お金が集まる場所“プラットフォーム”にしたいとした。
最後の事例として発表したのが、“図書館への電子書籍のレンダリング(図書館向けのフォーマットへのデータ変換)システムを構築する”ことだ。図書館向けの電子書籍の制作、プラットフォームを構築することで、米国ではOverdrive社が先行している。現在、「図書館が新刊のベストセラーを大量購入して、大量に貸し出していること」が、出版社及び著者への還元が少なくなると問題視。「出版社が主体的に活動でき、権利に基づいた電子書籍を貸し出せる、レンタル事業が重要だと思う」とした。
この図書館への電子書籍レンダリングシステムの構築には、KADOKAWA、講談社、紀伊國屋書店の3社協同で進めることに同意。さらに小学館にも賛同をもらっている。基調講演の最後には紀伊國屋書店の高井昌史社長、講談社の野間省伸社長が登場し新しい制度をともに推し進めていくこととをアピールした。
紀伊國屋書店の高井社長は「米国ではOverdriveのレンダリングシステムが普及している」とそのシステムが日本へ普及することを怖れ、また講談社の野間社長も「勝手にルールを決められて良いようにやられてしまう。歩みの遅い業界だが、何事もスピーディーに進めていかないと滅亡する」(講談社・野間社長)と危機感をあらわにしていた。
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