6月7日よりいよいよ日本でも発売されたSurface Pro。そして6月13日にはSurface RTの期間限定値下げが発表されるなど、Surfaceに関するニュースが相次いでいます。
↑Surface Proの発売やSurface RTの値下げなど、なにかと話題が多いSurfaceシリーズ。 |
そこで今回はそれぞれの発表会での取材から得られたSurfaceに関する雑多な疑問について、整理しておきたいと思います。
■Surface RTの値下げは在庫処分なのか?
Surface RTが日本で発売されたのは3月15日。それから約3ヵ月後の6月13日、日本マイクロソフトはSurface RTを期間限定で値下げすることを発表しました。
↑Surface RTの期間限定値下げを発表する日本マイクロソフトの樋口泰行社長。 |
↑32GB版は3万9800円、64GB版は4万9800円と、それぞれ1万円ずつ値下げされる。 |
最近ではアップルが5月末にiPadなどを一斉値上げしたように、為替レートが円安に傾いていることからガジェットの値上げが相次いでいます。しかしSurface RTは、逆に値下げに踏み切るという“サプライズ”を仕掛けた格好になります。日本マイクロソフトの樋口泰行社長はSurface RTの値下げについて、「アップルの値上げをきっかけに、iPadに対抗するため値下げした」と背景を語っています。
この値下げの結果、Surface RTはiPad Retinaディスプレイモデルはもちろん、iPad miniよりも安くなり、大幅に買いやすくなりました。その反面、「売れていないのでは?」、「在庫処分なのでは?」という疑問の声が聞かれるのも事実です。
Surface RTの売れ行きについて樋口社長は「絶好調」と強調しつつも、「具体的な販売台数は公表しない方針を採っている」として、具体的な数字には言及していません。この点について記者からは、「売れているなら台数を公表しても問題ないのでは?」との突っ込みが入っています。ただ、海外でもSurfaceの販売台数は公表されていないことから、日本でも同じスタンスを採っている可能性はあります。
もうひとつ気になるのは、1万円の値下げが6月14日から7月14日の1ヵ月間という点です。この値下げ期間中となる6月26日からは、マイクロソフトの開発者向けカンファレンス『BUILD 2013』が予定されており、Windows 8.1に関する詳細情報の発表が予定されています。また、現行のSurfaceが発表されたのはちょうど1年前の2012年6月。新機種発表の期待が高まる時期とも重なります。
海外ではどうでしょうか。今回のSurface RTの値下げは日本限定のキャンペーンですが、開発者向けカンファレンス『TechEd North America』では、参加者向けにSurface RTを100ドル、Surface Proを400ドルで販売したことが話題となりました。教育関係者向けカンファレンスの参加者に1万台のSurface RTを配布するなど、Surfaceシリーズは大盤振る舞いされているように見えます。
1万円の値下げによりダメージは最小限になるとはいえ“Surface RTを買った直後に新機種発表”という事態は悲しいものです。この点を日本マイクロソフト関係者に確認したところ、「BUILDのメインはあくまでWindows 8.1のはず。Surfaceの新機種があるとしても、まだ先だろう」との見方が有力とのこと。とはいえ米国で最初にSurfaceが発表された際には、発表直前までリーク情報がほとんどないという極秘体制だったことから、今後も油断できないことはたしかです。
■円安による日本版Surface Proの値上げはあるのか?
6月7日に日本でも発売されたSurface Proについて、発表時に話題となったのが価格の“安さ”です。128GBモデルで比較すると、日本版が9万9800円なのに対して米国版は999ドル。この点だけを比較すると、為替レートに近い価格に見えますが、日本版は2~3万円相当の『Office Home and Business 2013』がバンドルされているという違いがあります。
↑日本版Surface Proの価格。米国に比べて2割ほどお買い得。 |
それでは日本版はマイクロソフト製タブレットの利点を活かして、Officeを格安でバンドルしているのではないか? と疑いたくなるところです。この点について日本マイクロソフトでは「WindowsやOfficeのライセンス価格はほかのPCメーカー向けと同じ。マイクロソフトだから有利、ということはない」と断言しています。
日本版が海外版に比べて安い理由として日本マイクロソフト執行役の横井伸好氏は、日本向けの価格を決めた当時の為替レートが“1ドル=80円”だったため、現在の為替レートから見れば約2割お買い得になっていると説明しています。
↑日本版Surface Proの詳細について説明する日本マイクロソフト執行役の横井伸好氏。 |
マイクロソフトのような外資系企業では、為替レートの変動が業績に与える影響を取り除くため、為替予約のようなデリバティブ取引によってリスクをヘッジすることがあります。この取引により、為替が有利に動いた場合の差益をあきらめるかわりに、為替が不利な方向に動いた場合の損失を回避することができます。
しかしマイクロソフトの会計年度が変わる7月には、Surface Proの価格について何らかの見直しが入るのではないかと筆者は予測していました。しかし6月13日に樋口社長は「為替の上下によって価格が変わるのは、消費者に理解されないのではないか」と発言。為替に応じて価格を引き上げたAppleを牽制するかのような発言をしています。このことから、Surface Proについても当面の間、値上げはないと考えてよいのではないでしょうか。
■Surface ProにOffice非搭載モデルはないのか?
日本版Surface Proの特徴は、Officeをプリインストールしていることです。ほかには中国でも似たような販売形態を採っていますが、世界的にはOfficeは別売りで、必要に応じてパッケージを購入したり『Office 365 Home Premium』を契約することが前提となっています。
海外で提供されているOffice 365 Home Premiumは、クラウド版Officeの家庭向けバージョン。特徴として、デスクトップ用Officeアプリのライセンスが付属し、家庭内の5台のPCまたはMacにOffice 2013相当をインストールできます。毎月9.99ドルの月額制ではあるものの、PCやMacそれぞれにOfficeを買うよりは大幅にお得なプランとなっています。
Office 365 Home Premiumは日本でも導入が検討されているものの、OfficeをプリインストールしたPCが一般的となっている日本市場において、いまひとつ合致しないのも事実です。結果的に日本版Surface Proは、Office Home and Business 2013がプリインストールされています。
気になるのは、Officeなしモデルを選択できない点です。ほかのPCメーカーでも店頭モデルではOffice搭載モデルが一般的ですが、オンラインストアのカスタマイズでOfficeを外せる機種が少なくありません。Officeのプリインストールを希望するユーザーが主流だとしても、必ずしもすべてのユーザーがOfficeを必要としているわけではないはずです。
これに対してSurface Proは、オンライン版でもOfficeを外すことはできず、必ずOfficeプリインストールの状態で購入しなければなりません。たしかに海外に比べて割安なSurface Proですが、もしOfficeなしモデルが実現すれば、さらにお買い得になるのではないでしょうか。
しかしいまのところ日本マイクロソフトでは、Officeなしモデルを用意することは考えていないようです。「OfficeがあるからこそSurface RTは売れたと考えている。そこでSurface Proにもバンドルすることを決めた」(横井氏)とコメントしており、Officeを含めることの重要性を強調しています。
■Haswell版Surface Proはまだ?
IntelはCOMPUTEX TAIPEI 2013で第4世代Coreプロセッサー(Haswell)を正式発表し、これを搭載したVAIOやLet'snote、MacBook Airの新機種が次々と発表されました。
そのため、第3世代Coreプロセッサーを搭載するSurface Proにも新機種が期待されるところです。しかし5月29日の発表会時点で樋口社長は、「今後、Haswellを搭載したSurfaceも出てくるとは思うが、もう少し先になるのではないか」と見通しを語っています。また、横井氏も「第3世代Core(Ivy Bridge)はまだまだ現役」と発言しており、次世代機の登場までにはまだ少し時間があることがうかがえます。
次世代のSurface RTはどうでしょうか。QualcommはSnapdragon 800を搭載した“Windows RT 8.1”タブレットをデモしており、マイクロソフトもSnapdragon 800やTegra 4への対応を表明しています。ただ、これらは2013年内に配布されるWindows RT 8.1アップデートを前提としています。これらの新プロセッサーを搭載したSurface RTが計画されているとしても、発表はもう少し先になりそうです。
山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります