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テレビより全然おもしろいApple基調講演はどれ? MacPeople編集人編|Mac

2013年06月02日 21時00分更新

ジョブズがプレゼンし続けてきた製品ロードマップの終わり

 iPadが大好きです。大好きすぎます。愛しています。愛しすぎています。iPadの全世代、もちろんiPad miniも、発売日にゲットしました。さすがにたまに、ですが、電源も入れずにiPad(4thG)のガラス面につつっと指を走らせていることがあります。「変態!」と罵られても「えぇ!」と、大きな声でうなづくことができます。古い言葉でいえば僕はApple信者で、スティーブ・ジョブズの信奉者で、あの長大な伝記も通しで5回は読み返していますが、なかでもiPadに関するチャプターだけは何度読み返したかわからないくらいです。

 そんな愛してやまないiPadを、僕はほぼ24時間使い倒しています。そもそも僕が毎日持ち歩いている小さなカバンには、iPad(4thG)とiPad miniが入ってます。「なんで両方持ち歩いてんの?」と訝しがられることもありますが、会議会議の連続で、さすがにiPadでも勤務時間中に電源が切れてしまうことがあるのです(満充電で持ってくるわけでもありませんし、Bluetoothでキーボードをつなぎ、明るさを最大にして使ってもいますから)。そのための大小2台持ちです。当然です。バカだと思われるかもしれませんが、開き直り切っていますので、どうぞ、あたたかい目で見てください。

 さて。この企画は「WWDCあわせでAppleの基調講演を振り返りましょう!」というのが主旨です。そろそろ本題に入りますが、そんなiPadアディクトの僕なので、基調講演の見どころとしてとりあげさせていただくのもiPadに関するもの……というかですね、もうね、毎週末のように見返してるわけですよ、それを。iPad発表、iPad2発表、iPad(3thG、新しかったiPad)発表。この3本をiPad miniで流しながらiPad(4thG)でMailbox(アプリ)を使い、溜まりに溜まった(先送りに先送った)メールを処理したりしてるわけですよ。

Apple基調講演

 この病いは、医者もクスリも治せない。

 あぁ、前置きが長い。職業ライターやらブロガーやらではなくなってひさしいので、もうだいぶ息があがってまいりました。

Apple Announces iPad
Apple基調講演

 はい、こちら。こちらは2010年1月28日(現地)に開かれましたiPad発表のスペシャルイベントからの1枚です。この時はすごかったですよね、開催前からギーク系/うわさ系ブログだけでなく、一般のマスメディアまでが「AppleからiPadってタブレットコンピュータが発表されるぞ!」という記事をがんがん掲載してました。その異様な熱狂の通りに、この時も、ステージにはル・コルビュジエの椅子が置かれ、ゆったりとした姿勢でジョブズがメールを送信したり、直前の号で聖者がタブレットを掲げている表紙を掲載したウォール・ストリート・ジャーナル誌を、苦笑まじりにジョブズが紹介したり、「ネットブックには、結局、なにもできない。なにもかも中途半端だ」とこきおろしたり、伝説的なプレゼンテーションになりましたが、僕のイチ押しはここです。

Apple is the No.1 mobile device company......

 サムスン、ソニー、ノキアといった名だたる企業よりも、Appleはモバイルデバイスを売っている、これはすごいことだとジョブズは真顔で語りました(サムスンに言及する語調はやや強いものでしたが、ソニーに対しては「ソニーにはすばらしいビデオカメラがある」と語り、年季の入ったソニー好きっぷりを見せました)。そして、「Apple is the No.1 mobile device company......」に続けて一言、ぼそっとつぶやいたのです。

in the world.

 たまりません。このジョブズのつぶやきは何度聞いてもたまらない気持ちになります。

 かつて自ら創業しながらも追われたAppleに復帰した時、ジョブズはAppleの取締役会を解体しました。解任した取締役には、Apple創業時に最初の投資家になったマイク・マークラも含まれていました。さすがに彼を解任するのは心苦しかったのか、ジョブズはわざわざその豪邸を訪ねて、直接、解任を告げたのですが、その時、マークラは「長続きする企業は自らその姿を変えるのだ」と語り、ジョブズは深くうなづいたそうです。この時はまだ、ジョブズの頭にiPhoneはおろかiPodすらなかったかもしれませんが、自らが起こしたコンピュータメーカーが、音楽関連企業になり、携帯電話メーカーになり、それらすべてをひっくるめてポストPCというコンピュータを置き換えていく革命をリードする企業に生まれ変わった、そのことを広く世界に宣言した瞬間だったのです。「in the world.」という一言には、特別な感慨があったに違いありません。「in the world.」と、一言、つぶやかずにはいられなかったのでしょう。

Apple Special Event, March 2011
Apple基調講演

 なんだかしんみりするような、なんというかいい話を紹介してしまったふうですが、もちろんジョブズはそんな簡単な人間ではございません。2枚目のこちらはiPad2を発表した時(2011年3月2日)のものですが、もうばっさりですね。このばっさり感にも、ぞくぞくさせられます。僕らはiPadを発売したよ、思惑通り、うまくいって世界中で大ヒットだぜ、2010年はiPadの年だったと言ってもいいんじゃない? それでさ、また、みんなあわててタブレット出してるね、大変だね、まぁ、いっぱい出てくるよね、でもね……2011年がそんなまがいものの年になると思う? もちろんノーだ、なぜなら、僕らがiPad2を発売するからね……という宣言に続けて、大幅に薄くなったiPad本体とユニークなスマートカバーを発表したのですが、このシーンでも、思い出させられることがあります。

 2007年、iPhoneを発表した時にジョブズは「他社は5年は追いつけないだろう」と語りました。他「社」ではありませんが、これをAndroidと考えると5年というのはまったくあっていません。AndroidはiPhoneから遅れること数か月で発表されており、その何年も前からアンディ・ルービンらによってコンセプトは練られ続けてきたわけですから。となると、ここでいう他「社」とは、やはりコンピュータ/電機メーカーのことではないでしょうか。つまりは、製品です。OSやアプリではなく、ブツの話です。やはりジョブズはビジネスの基本を製品と考えていたのでしょう。

 発表以降、Androidもどんどん進化しましたが、一定以上の評価を得て、はじめてiPhoneキラーと呼ばれるようになったAndroid端末、Galaxy Sシリーズの登場は2010年3月、iPad発表の時のことでした。この事実を考えると、ジョブズの言った「5年」は2段階だったのだなということがわかります。iPhoneは他社がすぐにはマネできない高い完成度をもって発売する、他社が追いつくのは(感覚的には5年後と言えるような)3年後だ、そのタイミングではAppleはiPadを投入し、また他社を引き離すことができる、でも、3年でiPhoneに追いついたヤツらは、タブレットについては2年で追いついてくるのではないか……ジョブズは、そんな5年間の製品ロードマップを持っていたのではないでしょうか?(まさか、そのロードマップの終わりに、自らが世を去ることになるとは思いもよらなかったでしょうが……)iPadも、初代機から2にかけては大きな変化がありましたが、その後は、Retinaディスプレイ搭載等のトピックこそあったものの、形状は大きく変わっていません。

 iPhone〜iPadで5年間、2007年から2011年までは圧倒的なリードタイムを確保、2012年は市場を整地するかのようなリードタイム終了後の競争を行い、その間に、次の「魔法のような」製品を計画、発売する、あるいはそこで製品ではなく、いよいよクラウドサービスやOS、アプリでビジネスを展開する方向に舵を切る……その先を、ジョブズはどう描いていて、Appleはどう描くのでしょう? あぁ、やっぱりWWDCが楽しみでなりません。

 長ぇな、この駄文、しかし。まぁ、いっか、このまま書き上げて送信してしまおう。

Apple Special Event, October 2012
Apple基調講演

 さて、最後の1枚です。「iPad発表、iPad2発表、iPad(3thG、新しかったiPad)発表。この3本」と書きましたが、これ、違います、すいません。昨年10月23日に行われたスペシャルイベントのものです。iPad(4thG)、iPad miniが発表されたという点では、iPad関係の発表と言えるのですが、僕がとりあげさせていただきましたのは、終了間際、2012年末は、Appleにとってものすごいホリディシーズンになるという〆を語っているティム・クックです。

 僕は、ティム・クックのプレゼンテーションも嫌いではありません。いや、むしろ好きなくらいです。ジョブズに比べればはるかに役者ではありませんし、あまり気の利いたこともいいませんが、時折、ふっと差し込むジョークや笑いには、誠実さやあたたかみも感じます。もちろん、ジョブズとクックという組み合わせがいいなとは思いますが、それはいまさら望みようもありません。そんなクックが、こう言いました。

to making best products on earth.

 Appleのチームは、この地上で最高の製品を作ると決意し、それを遂行した。最後にこう語り、一息ついたクックは会場からの拍手に応え、上を向いて左手を挙げました。事実としては、2階の観客に視線を向けたということなのでしょうが、このなんともいえない表情、当然、考えてしまいますよね。クックは天国のジョブズに向かって手を挙げ、微笑んだのではないかと。この日の製品プレゼンテーションを担当したフィル・シラーも、iPad miniを手に持った時に、一瞬、視線を上に向けるんですよ。クック以上に、シラーは上を、2階よりも上を見ていたような気がします。

 もしかしたらジョブズが持っていたかもしれない5年間の製品ロードマップは終わり、いよいよ刈り取りの時が来た(実際、2012年末は、Appleにとって歴史的な大きな売上がもたらされました。株価こそ下がりましたけど)、この後は、ジョブズが戦略立案には関わっただろうけれども存在しないという不測の事態の中、Appleは次のステージに歩を進めようとしている。そんな万感の思いを感じさせる1枚です。

 ……ん〜、なに書いてんだろ? すいません、長々と書き続けて参りましたが、全部妄想じゃねぇかと、いまさらのように気づきました。ちょっとヤバイんじゃないの、こいつ……とか、自分で読み返してみて思いもしましたが、これくらいのことを感じさせてくれる、考えさせてくれるのがAppleの基調講演なのです。これでもまだまだ書き切れてはいませんからね! この2年を振り返ると、テレビを視聴していた時間よりもAppleの基調講演見てた時間の方が圧倒的に長いですからね! なんというか、ほんとすいません。

Apple基調講演

 最後に。ここまでこの駄文をお読みくださった方の中には、そんな方はいらっしゃらないのではないかと思うのですが、ただいま現在発売中のMacPeopleでは、WWDCをきっちり楽しむための特集ページを掲載させていただいております。iPhone、iPadは持ってるけどMacは使ったことないんだよね、でも、なんかTwitterとか見てるともりあがってるよね、深夜に、みんな、WWDCってなんだろ? 新しいなんか発表されるっぽいけど、どうなの? 楽しいの? という方はぜひ! 6月10日深夜までにMacPeopleをお買い求めいただいて(Newsstandをはじめ、電子版もございます!)、それを片手におそらくはあるんじゃないかなと思われる基調講演をライヴ配信をお楽しみいただければと思います。たぶん登壇するんじゃないか、ビデオに登場するんじゃないかと思われるAppleの経営陣を紹介したページもございますし、こんなことが発表されるんじゃないかというポイントも押さえさせていただきまして、はじめての方でも御安心いただける内容になっております。

 最後を宣伝でしめると「仕事した!」という気になって気分がいいです。よろしくお願いいたします。

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 好評発売中のMacPeople7月号の連動企画として、皆さんが印象に残っているApple基調講演を大募集中です。投票していただいたユーザーの中から抽選で5名の方にiTunes Store/App Store/Mac App Storeで利用できるデジタルコード3000円ぶんをプレゼントします。みなさんどうぞ奮ってご応募ください!!(関連サイト

■iTunesデジタルコード3000円ぶんプレゼント(5名様)

本当はこんな歌

【応募方法】

1.MacPeopleの公式アカウント@macpeople1995をフォロー

2.基調講演を紹介している記事ページ(関連サイト)にあるTwitterの書き込み機能からRT(※)

3.投票する基調講演の番号を入れてツイート

応募期限は2013年6月7日(金)24時まで。発送をもって当選と代えさせていただきます。

※当選連絡にツイッターのDMを使いますので、フォローを忘れないようお願いします。

※このページのツイートボタンでツイートすると、専用のハッシュタグ(#macpeople)がつきます。これがない場合は、応募が無効となります。

※お寄せいただいたコメントは、週アスPLUS|Mac上に掲載する可能性があります。

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 選んだ基調講演のこのシーンがお勧めという場合は、「No.23 29:31」などと基調講演ナンバーのあとに再生時間やコメントを入れてください。

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