吉田編集長が思い入れのあるのは、ジョブズが最期に登壇した2011年6月に開催されたWWDC 2011の基調講演。番号でいうと「No.7」です。この基調講演は、OS X Lion、iOS 5、そしてiCloudという3本立ての発表となりましたが、体調が悪いにもかかわらずiCloudのプレゼンをスティーブ・ジョブズがやり抜いたところが強く印象に残ったようです。
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Lion、iOS 5、iCloudという基調講演の流れをジョブズが説明 |
私が推すのは、やはり2011年のWWDCの基調講演ですね。もちろん、ジョブズ最期の基調講演というのが最大の理由です。登壇した途端、会場はスタンディングオベーションの嵐なんですが、声は弱々しい。このときの体調を考えると、とてもじゃないですが基調講演のホスト役を務められる状態じゃないはずです。
フィル・シラーがOS X Lionについて語る |
このころはジョブズは最初だけ出てきて、ティム・クックやフィル・シラーを紹介して舞台を降りるというスタイルが定着していましたが、今見直すとジョブズに紹介されて出てきたフィル・シラーの表情がいつになくこわばっているように感じました。
クレイグ・フェデリギがOS X Lionについてデモを実施 |
古くから基調講演を観ている者にとっては、本来はそのあとにデモを見せるために登壇するクレイグ・フェデリギが、本来のフィル・シラーの役だったのになぁと感じました。
スコット・フォーストールがiOS 5を約40分にわたって力説 |
OS X Lionの紹介のあと、iOS 5の紹介をスコット・フォーストールが行いますが、彼を紹介するのも本来はジョブズのところを、フィル・シラーが代行します。このときのスコット・フォーストールも、どこかぎこちないですね。この基調講演は全体で2時間程度なのですが、スコット・フォーストールは最も長い約40分の時間をかけてiOS 5について語ります。
ジョブズへバトンタッチする直前のスコット・フォーストール |
iOS 5の説明のあと、ジョブズが最初に出したスライドが再度表示され、なんとスコット・フォーストールからジョブズへバトンタッチが行われます。この直前のスコット・フォーストールの表情がなんともいえない緊張感に包まれていることがわかります。
スライド用リモコンをジョブズに手渡すスコット・フォーストール |
壇上でジョブズとスコット・フォーストールが入れ替わる |
この再生時間1時間18分58秒から59秒の間は必見です。当時は、この二人が新旧のアップルの代表者だと感じたのですが、残念ながらこの1年半後に、スコット・フォーストールはAppleを去ることになってしまいます。
iCloudについて語るジョブズ |
ここでジョブズが渾身の力を振り絞って紹介するのがiCloud。Appleのウェブサービス/クラウドサービスは、iTools→.mac→MobileMe→iCloudと進化してきましたが、よほど熱烈なAppleユーザーでない限り、正直いって積極的に使うメリットは少なかった。でも、iCloudはいまや空気みたいな存在でiOSデバイスやMacを包み込んでいます。不具合や障害はときどき発生するものの、iTunes StoreやApp Storeからはじまり、Mac App Store、iTunes in the Cloudなどを下支えしているのは、紛れもなくiCloudなんです。
この基調講演を見直すたびに、最期のジョブズがこのプレゼンを敢行した理由はここにあったんだと改めて感じますね。
WWDC 2011の基調講演を総括するジョブズ |
WWDC 2013では、このiCloudを基盤とした新たなサービス「iRadio」が発表されるかもしれません。すでに米グーグル社が、同様のクラウド型音楽ストリーミングサービスを発表済みですが、iOSもiPhoneもクラウドもすべてを1社で開発しているAppleなら、類似のサービスに比べて頭一つ抜けるようなユーザー体験をもたらしてくれるでしょう。ちなみに、6月10日に開催されるWWDC 2013は、このWWDC 2011の基調講演のように、OS X、iOS、iCloud(iRadio)という流れで進行していく思います。
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