週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ソニーPS4は「軽いビジネスモデル」——決算説明で取締役が語った理由

2013年05月10日 12時30分更新

ソニー2012年度本決算 PS4

 5月9日に行われたソニーの2012年度の本決算説明会。前年度のマイナス673億円から大きく回復し、2012年度の営業利益は2301億円となった。とはいえ、一方でゲーム事業は大幅な減益となる営業利益17億円(2011年度は同293億円)、PCやスマホなどの一般向け電子機器分野は営業利益972億円のマイナス(2011年度は72億円のプラス)と、依然として意欲的な改革を進めて行く必要があることが見て取れる。

 そのような概況のなか、ソニーは2013年度の見通しとしてゲーム分野はPS4の導入による増収を見込む、とコメントしている。

2013年度に「プレイステーション 4」(以下「PS4TM」)を導入する予定であることなどにより、大幅な増収を見込んでいます。営業利益については、増収による改善要因があるものの、主に、PS4TM導入にともなう研究費や広告宣伝費の増加によりほぼ 前年度並みを見込んでいます。
(2013年度業績見通しより抜粋/本決算プレゼンテーション資料PDFへのリンクはコチラ

 決算説明のあとの質疑応答では、「PS3デビュー時は、当初多くの(投資のための)損失があった。PS4では初年度から営業利益も黒字になるのはなぜか?」との質問が出た。「軽いビジネスモデル」というコメントは、これに対して回答したソニー 取締役 執行役の加藤優氏によるものだ。

 加藤氏によれば、PS4とPS3のコスト構造はこのように異なるという。

PS4_0221

【PS4】
・チップセットのコア部分はすでにある基盤技術を使う(コア半導体から開発する必要がない)
・製造に関しても自社では行わず、ファウンダリー(外部の生産工場。fab)がかなりの技術と資本力を注いでいるので、ソニー側の大きな投資が必要ない
・(そのぶん)研究費や広告宣伝費などを積極的にやっていく
【PS3】
・現象から言うと、PS3のときは当初ハードのコストが非常に高く逆ざや状態だった(注:これはゲーム事業では一般的なモデル)。
・その理由は、PS3はアーキテクチャーに先端的な技術を意欲的に盛り込んでいた。代表的なものはCellプロセッサー。当時世の中になかったものを、三社共同とはいえ自分たちでスクラッチでつくり、プロセス技術開発、設備投資もあり数年単位で4桁億円の投資が必要だった

 この比較の中で、「一言でいうとPS4はPS3に比べると軽いビジネスモデルだ」という発言につながった。
 PS4の“すでにある基盤技術を使う”とは、発表済みのAMDの8コアCPU Jaguarの採用や、同じくAMDの次世代RADEONベースのGPUの搭載による、開発コストの効率化のことを指している。

発表済みの『プレイステーション 4』SPEC
Main Processor  Single-chip custom processor
CPU:x86-64 AMD “Jaguar”, 8cores
GPU:1.84TFLOPS,AMD next-generation  Radeon  based  graphics engine
メモリー:GDDR5 8GB 
ハードディスク:内蔵
光学ドライブ(読み出し専用):BD 6 倍速 CAV/DVD 8 倍速 CAV
入出力:USB 3.0、AUX
通信:Ethernet (10BASE-T, 100BASE-TX, 1000BASE-T)、IEEE 802.11 b/g/n、BluetoothR 2.1(EDR)
AV 出力:HDMI出力、アナログAV出力、光デジタル出力

 こうした設計思想が、ゲーム事業でローンチ初年度から大幅増収で営業利益もあげる、という見込みを発表できるだけの地盤をつくったということになる。

 PCやスマホなどの一般向け電子機器分野は、2013年度はXperiaシリーズが中心となるスマートフォンの販売台数大幅増加と高付加価値モデルの導入、PCについても高付加価値モデルを導入し営業損益についても大幅改善を見込む、と前向きな見通しを発表している。

ソニー2012年度本決算 PS4
発表会の壇上で決算説明を行なう加藤優 執行役 EVP CFO(右)、神戸司郎 業務執行役員 SVP/広報・CSR担当(左)
ソニー2012年度本決算 PS4

 金融も含めたグローバル企業・ソニーのV字回復に、コンシューマー向け事業が大きく寄与できるかは、まずは5月15日のドコモ夏モデル発表に含まれるだろう新型Xperia、夏商戦のVAIOシリーズ、そしてE3の展開に期待が高まるPS4の詳細やタイトル群などプラットフォームの実力を見れば、おのずと見えてくるはずだ。

●関連リンク
ソニー 投資家情報

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります