「私の死亡説がずいぶんと話題になったね」――スティーブ・ジョブズのジョークでイベントは幕を開けた。この2週間ほど前に、米国のブルームバーグ通信社がジョブズの死亡記事を誤配信し、世間を騒がせたことを皮肉ったものだ。最近のAppleの講演では、ジョブズはスピーチの大部分をほかの幹部に任せることが多かった。しかしこの日は、自分はまだまだ健康体だと言わんばかりに、1時間近いイベントのほぼすべてをジョブズ自らが取り仕切った。
■ホリデーシーズンに向けて
米国では11月の終わりに感謝祭(Thanksgiving Day)と呼ばれる祝日以降、「ホリデーシーズン」と呼ばれる年末商戦の時期に入る。つまり、秋に発表される新製品は、ホリデーシーズンに向けたものということだ。今回の発表のテーマは「MUSIC」、つまりiPodやiTunesに関連したものだ。主な発表内容は以下の通り。
(1)iTunes 8と新機能「Genius」
(2)第4世代iPod nano
(3)第2世代iPod touch
まずは、Appleの音楽ビジネスが順調であることを報告。iTunes Storeで850万曲がダウンロードされ、Amazonやウォルマートを抜き、音楽販売の事業者としてトップに立ったと述べた。その勢いをさらに加速するべく、音楽関連のソフト、ハードをアップデートするというわけだ。
iTunes 8の注目機能として大きく取り上げられたのは、「Genius」だ。ライブラリ内の曲情報を分析し、その情報を基にユーザーが選んだ1曲と相性のいい楽曲を抽出して自動的にプレイリストを作成してくれる機能。また、個々のユーザーのライブラリ情報をAppleが収集してデータベースを作成することで、iTunes Storeで販売されている楽曲でそのユーザーが好みそうなものを提案してくれるもの。画期的な機能かと期待されたが、実際にはあまり活用されなかったようだ。現行iTunesにも搭載されてはいるが、あまり目立たない機能になっている。
■カラバリ豊富な第4世代nano
続いて、期待のニューiPodの発表。中でも大きく変わったのはiPod nanoだ。画面が横長でずんぐりした形状の旧モデルから、再度縦長の形状へと回帰した。曲面を用いたデザインとなり、カラーバリエーションも過去最多の8色に増加。また、加速度センサーを内蔵し、画面を横向きにするとアルバムアートワークがCover Flow表示に変わる、シェイク操作でシャッフル再生が可能になるなど、新しい要素も付け加えられた。
■touchのゲーム機としての側面を強調
第2世代のiPod touchは、基本的な性能は旧モデルを踏襲しているものの、価格が大幅に引き下げられた。具体的には、第1世代が8GB(3万4000円)、16GB(4万6000円)、32GB(5万8800円)だったのに対し、8GB(2万7800円)、16GB(3万5800円)、32GB(4万7800円)と、同じ容量のモデルが最大で1万円近く安くなっている。さらに、音量調節ボタンやスピーカーを内蔵したほか、「Nike+iPod」のセンサーも組み込まれた。
印象的だったのは、iPod touchゲーム機としての性格が強調された点だ。スピーチはフィル・シラーにバトンタッチされ、3種類のゲームのデモが実施された。タッチ入力や加速度センサーなどのiPod touchの機能を利用して操作するゲームは、いかにも楽しそうに見えた。実際にiPod touchは、その後携帯ゲーム機の市場を脅かす存在へと成長していく。
Apple主催の音楽系イベントのお約束として、最後にはミュージシャンのジャック・ジョンソンが生演奏を披露した。演奏後に再度登壇したジョブズは、iPod touchを指して「これまでで最高に面白いiPodだ」と述べ、スピーチを締めくくった。
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