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気鋭のクリエーターが集結!第肆回天下一カウボーイ大会詳細レポート

2013年02月08日 16時30分更新

 2月3日、ユビキタスエンターテインメント(UEI)は秋葉原にて『第肆回天下一カウボーイ大会』を実施。4年ぶりの開催となった(肆は”4”の意味)。今回は、”Essentials&Beyond”というテーマで、様々なジャンルのスピーカーによる講演が行われたほか、9leap、Openleapの最優秀賞の授賞式などが行われた。ちなみに、司会進行はアニメ『タッチ』の浅倉南役などで有名な声優の日高のり子さん。まるでアニメで演じているキャラがそのまま喋っているような伸びのある声と間合いのいいツッコミは、会場からは”名司会”と好評だった。

■あの”光学迷彩”を実現させた研究者が仮想現実について語る!

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート

 最初の基調講演は、バーチャル・リアリティ(VR)や、拡張現実感(AR)技術の専門家、東京大学名誉教授・慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 舘 暲(たち すすむ)教授が『人間能力の拡張とテレイグジスタンス』というテーマで講演。
”人間能力の拡張”とは、ITやロボット技術を使うことで、人間の感覚、知覚、運動能力をいかに拡張、もしくは回復できるかという内容だ。つまり、目の不自由な方に対して視覚の補助をしたり、運動能力の補助をする機器の研究。また、”テレイグジスタンス”というのは、遠隔地にある物体を通信ネットワークを通して、あたかも手近にあるように操作する技術。これらの舘教授による最新の研究成果が披露された。その中には、あの攻殻機動隊などで有名な”光学迷彩”も含まれており、非常に興味深い内容となった。

 “人間能力の拡張”とは、ITやロボット技術を使うことで、人間の感覚、知覚、運動能力をいかに拡張、もしくは回復できるかという内容だ。つまり、目の不自由な方に対して視覚の補助をしたり、運動能力の補助をする機器の研究。また、”テレイグジスタンス”というのは、遠隔地にある物体を通信ネットワークを通して、あたかも手近にあるように操作する技術。これらの舘教授による最新の研究成果が披露された。その中には、あの攻殻機動隊などで有名な”光学迷彩”も含まれており、非常に興味深い内容となった。

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート
第肆回天下一カウボーイ大会 レポート

 動画が話題となった光学迷彩。実は“再帰性投影技術”という、プロジェクターと透過可能なハーフミラーを使い、反射材で作られた衣服にカメラで撮影したリアルタイムの背景映像を投影することで実現している。

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 “再帰性投影技術”をより現実的に活用したのが、”透明コックピット”。ドアやシートなど、視界を遮る部分に外部の映像を投影することで、運転時の視野が広げられる。

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 “未来のテレビ電話”として研究が進められている『TWISTER』。円形状のブースに入ることで、全周囲に遠隔地の映像が再生され、あたかも自分がその場に居るような視野になる。また、『TWISTER』を使えば、カメラやモーションセンサーにより、ブース内で実際に動いた様子がそのまま仮想の3D空間に反映することもできる。これでMMORPGをプレーすれば、自分がゲームの世界に本当に入り込んだような感覚が味わえて面白そうだ。

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート

 開発中のテレイグジスタンスロボット。視覚や聴覚のほか、人間が装着したグローブに対し、ロボットが触った触覚も遠隔で感じることができる。

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 テレイグジスタンスロボットを使えば、災害現場での救助活動や危険な場所で人間が行うのと同じような作業を行ったり、ダイビングの技能がない人でも海底を泳いだり、小型のロボットが実用化できれば、動物の世界が体験できるなど、利用範囲は幅広く想定できる。また、テレイグジスタンロボットを使えば、ロボット操縦者の動作を記録できるため、操縦者が持っている技や癖などをライフログのようにして保存できるのもメリット。

■イグノーベル賞受賞者のユニークすぎる研究成果

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 産業技術総合研究所研究員の栗原一貴氏は『物議を醸すシステム開発研究』というタイトルで講演。栗原氏自身は人々の利便性を追求して取り組んでいる研究が、なぜか物議を醸してしまうことが多いため、このタイトルになったという。衛星写真から人面岩を探したり、映像コンテンツを高速で見るための再生システム、録番組を見るためのスケジュール帳、おしゃべりな人を黙らせる装置など、どれもユニークな内容だった。

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 Google Mapの衛星写真とOpenCVの顔認証で地球上のあらゆる人面岩を見つけるシステム。これを応用して”ハート型の島”や”えさを食べるパックマン”など様々な形が探せるとのこと。

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 『TimeFiller』という録画したテレビ番組をスケジュール帳の空いている時間に入れるメディアプラットフォーム。スケジュールの空いている時間にフィットする録画時間の番組を自動的に入れ、空いている時間に無駄なく録画した番組を見られるというもの。他にも、『CinemaGazer』という、人間がしゃべっているシーンでは2倍速、それ以外の部分を6倍速で再生して視聴時間を短縮しつつ内容が理解できる技術も披露。”見たいけど時間がない”というコンテンツ過多な時代にいかにコンテンツを楽しむかというテーマについて取り組んでいる。

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 “人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究”に対して授与される『イグノーベル賞』を受賞した研究がこの『SpeechJammer』。”おしゃべりが過ぎる人をどう黙らせるかという人類の根源的な欲求にこたえようとした”というもの。おしゃべりな人に向かって指向性マイクの付いたユニットを向けると、その人の声が遅延して聞こえるようになり、しゃべりにくくなる。これにより、閉口させようというものだ。

■CGのパイオニアが語るCGの歴史

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 東京大学の西田 友是教授はコンピューターグラフィックスの日本におけるパイオニアと言える存在。アジア人で初めて、CGに対する功労者に贈られる“クーンズ賞”を受賞している。西田教授は1970年代のCG黎明期より研究を進めており、今では当たり前のように使われている、半影表現や相互反射表現、光跡表現、曲面のレイトレーシング、大気拡散表現などは西田教授による研究成果だ。講演ではそれぞれの技術の解説が行なわれた。

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 蛍光灯のような光源が線形をしていると、それに照らされた影は境界線がボケたような“半影”になる。これをCGで表現できるようになったのは西田教授の研究の成果。

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 一見すると、実物のグランドキャニオンのようだが、実はコレは全てCGによるもの。特に空の表現は実物の写真と見間違うリアルさがあるが、西田教授の『大気の散乱光の計算』を使ってCGで表現されている。

■IT業界の最先端キーマンたちが語る

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート
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 電通の細金正隆氏と井戸真紀子さんは、次世代広告のコミュニケーション手段として、ゲームを活用した”ゲーミフィケーション”を研究している。その成果として『BANG!』という地雷除去ゲームのアプリを発表。このゲームはプレイヤーが地雷除去を行うと、その成果に応じてゲームの収益がカンボジアの地雷除去の費用に充てられるとのこと。

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート
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 関西大学総合情報学部の米澤朋子教授はヒューマンインターフェースや音声情報処理技術の研究者。空間に音声による付箋を張るシステムや案内看板を見ている人の視線に応じてぬいぐるみが案内をするシステムを開発。ぬいぐるみという疑似人格を案内看板に置くことで、より案内を見る人が案内の内容を受け入れやすくなるという。

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート
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 ARを活用した開発ユニット『AR三兄弟』の川田十夢氏はARを使った様々なエンターテインメントや広告への活用事例を紹介。漢字の書かれたARタグを回転させることで、PCの音量が操作できる"カンジブルコンピューティング"には会場から驚きの声が上がっていた。

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート
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 慶應義塾大学教授でコンセプターの坂井直樹氏は、auの外部デザインディレクターを務めるプロダクトデザイナーの草分け的存在。飛行機や自動車分野に進出しているロボット技術について解説。飛行する自動車や、太陽光で自給自足できる電気飛行機、ジャイロにより絶対に転倒しないバイクなど、興味深いコンセプト技術が多く紹介された。

■コンピューターカウボーイたちが3分で語る!

 ITやロボット技術に造詣の深い技術者たちが自分の技術を披露する、公募プレゼン『180 Rodeo』。ユニークなロボットやシステムが展示された。

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 小倉氏のチームが作成したテレイクジスタンスロボット。お掃除ロボットの移動機構を活用し、顔部分のタブレットPCで遠隔地のユーザーの様子や全体の制御を行っている。遠隔操作で手を動かすこともできる。また、顔部分の高さを上下に調整できるのもポイント。

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート

 笹本博文氏の植物に触ると、映像や音が連動して変化するシステム。植物を静電方式触ることで得られる静電容量の変化を制御基板に伝えて、スイッチとしている。

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 トゥギャッターを運営している吉田俊明氏は、”視聴者参加型プレゼンテーションの実践と検証”ということで、リアルタイムに参加者とクイズを行って、正解者を集計するシステムをデモ。ちなみに、トゥギャッターは、前回の同大会が元に生まれたサービスだ。

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 安達真氏は、”ビックデータ解析”として、タンブラーの”like”を解析し同じ”like”を付けたユーザーと関連づけるツールを開発。

■9leap・Openleap授賞式

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート

 学生向けオリジナルゲーム開発コンテスト『9leap』の12年度の最優秀作品が発表された。最優秀賞の受賞者には、世界最大のゲーム開発者会議『Game Developers Conference』への視察旅行に、無料で参加できる権利が贈られた。最優秀賞は以下の3作品。

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート
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『にゃっきVSドロイド君』外部サイト
作者:金丸修也さん

『妹は成長期』外部サイト
作者:足立勇介さん

『ワイヤーアクション -彼女のために-』外部サイト
作者:加島直弥さん

 また、参加資格制限のないゲーム開発コンテスト『Openleap』の最優秀賞は、Hassoukyutobi氏が受賞。優勝賞金100万円が贈られた。

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『ラウンドナイツ』外部サイト
作者:Hassoukyutobi

 選考委員のひとり、モバイル&ゲームスタジオ 取締役会長 遠藤 雅伸氏に、コンテストの入選のコツを伺ったところ、プログラミングのテクニックもさることながら、以下のようなポイントに注意して欲しいとのこと。

・新規性
 既存のゲームを自分なりの解釈で作ってみたという作品が多いので、何らかの新規要素を入れる。
・テーマ
 他の人が驚くようなテーマやプレー内容を考える。 
・テストプレー
 すぐに必勝法が見つかるゲームがあるので、十分にテストプレーをしてゲームバランスとバグを潰していく。
・インターフェース
 ゲームとしての遊びやすさが重要。率直な意見をもらうには女性にプレーしてもらうと良いとのこと。
・グラフィック
 見た目の綺麗さや画面の見やすさを注意する。

■そのほかにも見所がたくさん!

第肆回天下一カウボーイ大会 レポート

 ほかにも、9分で“13”というテーマでゲームを作る『9 Minutes Coding Battle』やUEIが開発中のタブレット『enchantMOON』のデモを兼ねた座談会などが行われ、参加者を飽きさせない盛りだくさんの内容となった。参加者からは「参加して良かった」「十分に参加費の元が取れた!」と満足した様子だった。次は何年後にあるか分からないが、ぜひ今回同様の濃い内容で開催して欲しいところだ。

 なお、『マクロスF』や『創聖のアクエリオン』で有名なアニメ監督 河森正治氏の基調講演もこの大会で行なわれたが、こちらは別途詳細をレポートするのでお楽しみに!

●関連サイト
ユビキタスエンターテインメント

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