週刊アスキーの連載ページ『ネット早耳かわら版』に掲載している“ニコニコ動画 今昔物語”クロス連載。前号からニコニコ生放送のユーザー配信者(生主)で、ドワンゴの公式番組やテレビでも司会者として活躍する“百花 繚乱”さんにお話をうかがっています。
今週のテーマは、“ニコ生のおもしろさは一体感”ということ。百花 繚乱さんは、「ニコ生は結局、一体感が大事。危ないことにチャレンジするときに『やめろやめろwww』と諭したり、『くだらないことやってんなよwww』とツッコミを入れるのが楽しい」と語っていました。
その言葉は、女装と女声で視聴者を釣り、ツッコミを入れてもらって一体感をかもしだすという彼の放送スタイルに裏打ちされています。百花 繚乱さんがユーザー生放送を始めた2009年3月の時点では、まだ顔出しする生主が珍しい時期でした。
そこで「顔出ししてる女の子ってまだいないよね? これはワンチャン(ワンチャンス)あるんじゃね」と見込んで、母親から借りたり、100円ショップで仕入れた道具を駆使してメイクし、光で細部を飛ばしながら顔を撮影。その“女の子”の写真をサムネールに貼り付けて、女声でユーザー生放送を始めると、案の定、来場者数が大幅に伸びたそうです。
↑初期の女装配信のキャプチャ。今となっては懐かしい!?
当初、生放送では映像を観せていませんでしたが、視聴者から「サムネールはお前の本当の顔か?」と疑われ始めたので、ウェブカメラと女物の服を購入。くねくねしながら「どうもー」と言って姿を見せると、信じた人が「おい、女の子が放送してるぞ! みんな来い!」と他の人を呼び込んで、さらに来場者数が増加。みんなが信じきった状況で、某ゲームでキャラクターが進化する曲をBGMに流し、男声に戻すという芸を見せたところ、「だまされたー!」、「釣られたー!」といったコメントが画面を覆い尽くしたそうです。
スゴいのは、このテクニックで“2ちゃんねらー”も釣ったという話。2ちゃんねるでユーザー生放送を荒らして生主を怒らせようという“祭り”が起きた際、百花 繚乱さんの番組もターゲットになって、「このブサイク女」といった中傷が書き込まれました。普通なら怒りで反発したり、萎えてやめてしまうところ、彼は「じゃあいつものやるか」と声を女から男に戻す芸を披露したところ、2ちゃんねらーたちが「うわっ、オレたちがつられたー!」と反応して大いに盛り上がったそうです。
取材において百花 繚乱さんは、「ネットでは“荒らし”もひとつの文化で、みんなで一体感を味わっている。手品で人前で考えながら演じることに慣れていたこともあって、荒れている状況でも見ている人を笑わせたら勝ちということがわかっていた。自分も馬鹿なことをして、くだらないことで一緒に楽しもうと思った」とのコメントでまとめていました。
↑“ニコニコ大会議2010秋”でも、特に出演依頼があったわけでもないのに開演前、会場となるSHIBUYA-AXの付近でユーザー生放送をしていた」
一体感の楽しさというのは、ドリフターズのコントを観るのに近い感覚です。週アスの読者層である30、40代なら、土曜の夜8時に『8時だョ!全員集合』を見ながら「志村! うしろ、うしろ!」とツッコミを入れた経験があるはず。生放送を通じて現場で反応する観客と一体になれるのと同じで、他の人のコメントを見て感情を共有するというのが、ニコ生の大きな醍醐味なのです。
■関連サイト
週刊アスキーチャンネル(ニコニコチャンネル)
■週刊アスキー 連載ページ『ネット早耳かわら版』
リニューアルしてパワーアップしたネット情報満載の連載ページ。SNSを使いこなすテクニックやウェブアプリやサービスの紹介、ソーシャルメディアの話題など、盛りだくさんの4ページでお届けしている。
■著者紹介-広田稔
ウェブサイト“ASCII.jp”でMacやネットサービスなどのネタを担当。初期からニコニコ動画を取材し、2007年には笛のお兄さんの「Fooさん」を取材(関連サイト)していたりして、有り体にいえば“ニコ厨”(ニコ動好きな人)、好きが高じて『ニコニコ動画めもりある ~ニコニコ大会議編~』という書籍を執筆。
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