レノボブースは、CESのサテライト会場でもある有名カジノホテルThe Venetian内にあるラウンジ“AquaKnox”を貸し切ってのプライベートブースを開催。CES2013でお披露目した製品についてのメディアブリーフィーングを実施した。
●ThinkPad Helix開発秘話と隠れた機能 その1『冷却』
↑価格は1499ドルから。11.6インチでゴリラガラス装備のフルHD IPS液晶搭載。10点マルチタッチ対応。 |
話題の中心は、もちろんThinkPad初の変形Ultrabookとして話題になっている『Helix』だ。レノボ自体がグローバル企業であるというせいもあるが、Helixを含めると、実は3機種もの分離型Windows8ノートをかかえるのがレノボだ。これは、他メーカーに比べても多いほうだ。
その上、Helixの変形機構はほかのThinkPad Tablet2やWindows8版IdeaTabとは異なった凝ったものになっている。なぜこうした形になったのか、その理由と秘密をThinkPadのマーケティング担当、ケビン・ベック氏に訊いた。
まず確認したのは、自社内に複数のタブレットPC製品を抱える都合上、どういったセグメント分けになっているのか? 特に昨年発売済みの、いわゆる従来のタブレットPCタイプのThinkPad Twistなども含めると、どう住み分けるのか。
この点については、「色々なセグメントの見方はありますが」とした上で、以下のように考えているという。
1)ThinkPad Tablet2
タブレットがメインだが、文字入力にはキーボードは必要だというユーザー
2)ThinkPad Twist
従来のPC作業がメインで、タブレットの機能も必要だというユーザー
この2つはいずれも、他方の機能については大きめのトレードオフが生じてしまう。たとえば2)の場合はタブレット利便性3:ラップトップ利便性7、といった具合だ(あくまでイメージ)。
Helixは、この1)と2)のちょうど中間をとる形で、どちらの機能についてもトレードオフを極力発生させず、タブレットもラップトップも同等に快適に使えることを目指したという。
そのため、バッテリー駆動時間は当然として、十分にパワフルであることを主眼に置き、Core i7を採用しているが、その際に非常に大事なことがある。それは排熱の問題だ。
このタイプのマシンは、液晶側にすべての機能が入るため、液晶裏のわずかなスペースに熱源が集中し、冷却がどうしても厳しくなる。
これを解決するために、一般的にタブレット時はクロック制限をかけて消費電力を低下させる。しかし、ラップトップモードのときは通常のノートPCと同様にフルパワーで使いたい、と考えるのが普通だ。
しかし、フルパワーで駆動させるには、なにかの方法でもっと冷やす必要がある。Helixにはキーボードドックに搭載された冷却ファンは、このために付いている。
↑このカバー部分自体は、キーボード側についている。クラムシェルの開閉に合わせて、液晶側の角度にバネで追従するような仕組みになっている。ファンは中央付近に2機搭載している。 |
Unveiledの際のレポートには、このファンで「強制的に吸い出す」と書いたが、正確には「強制的に吸い込ませる」ためのものだということが確認できた。送り込んだ冷風は、ラップトップ時に液晶上部にくる排気口から出て行く仕組みだ。
これによって、タブレットモード時は7Wのところを、ラップトップ時には17Wのフルパワー駆動が可能になった。ちなみにラップトップ時のバッテリー駆動時間は、液晶側のバッテリーで約6時間、キーボード側の内蔵バッテリーで4時間の合計10時間駆動になる。
この“フルパワー駆動ができる”という点は、大和研究所のエンジニアがこだわった重要なポイントの1つだという。Atomマシンなどに比べると価格がどうしても高くなってしまうCPUをわざわざ積んでいるのだから、ユーザーが払った対価に見合うだけの性能が出せるべきだという考え方だ。
逆に言えば、きちんと冷却機構にコストをかけない設計をすると、Core i7やi5を積んでスペック上は速そうに見えても、宝の持ち腐れになってしまうということでもある。
余談だが、17W駆動させるための仕組みは絶妙なバランスの上に成り立っているようで、Helixの特徴でもある対面モード(逆差しモード)の際は、13W駆動になる。これは、空気の取り入れ口が対面モードでは塞がってしまうためだそうだ。この状態でもファンは変わらず動作しているが、フレッシュエアが吸い込みづらくなるためらしい。
↑ラップトップモードで普通に開いた状態。先ほどのカバーが、液晶側からちょっと浮いているのがわかるだろうか?こうすることで、新鮮な空気を取り入れられるようにしている。 |
↑最近よく見かける分離機構とは異なるため、パッと見は液晶が外れるように見えない。 |
●ThinkPad Helix開発秘話と隠れた機能 その2『キーボード』
ThinkPadといえば、その愛好家たちが必ず気にするこだわりの部分がキーボードだ。この部分についても、実は一般的ノートPCとは異なるアプローチが必要だった。
というのは、ほかのThinkPadとは違って、Helixの場合は液晶側にすべてのコア機能が入っている。つまり、液晶側が厚くなる。トータルの厚みをUltrabookの規格とされる20ミリに納めるには、単純な話、キーボード側を薄くするしかない。
この初の試みと制約があるなかで、ThinkPadらしいタッチを実現するために、大和研究所のキーボードエンジニアリンググループは相当に努力したと語っていた。
昨年8月ごろにベック氏が大和研究所を訪れた際は、タッチがもっと違ったものだったらしい。
●ThinkPad Helix開発秘話と隠れた機能 その3『装備と仕上げ』
こうした、理想を形にするためのトライ&エラーを繰り返して、Helixは完成した。
もちろん、ユーザーエクスペリエンスを良くするためのこだわりは、装備や仕上げにも及んでいる。
実に日本のエンジニアらしいと感じたのは、液晶とキーボードが連結する面の端にある、カードスロットのようなもの。引っ張るとタグのようなものが出てくる。何のために付けているのかというと、FCCや技適、型番などの刻印しなければならない要素を、外観のデザインを崩さないように隠せるようにしているらしい。
↑この写真で言うと、左端のスロットのようなものがそれ。
ほかにも、ラップトップ状態で、右側のヒンジの付け根付近にあるケンジントンロックを引き出すと、キーボードとタブレットの分離ができないようロックされる仕組みも採用する(もちろん、セキュリティー確保のため)。
キーボードにこだわるのと同様、描きやすがにこだわって静電容量方式ではないデジタイザーペン、またThinkPad初となる、ボタンレスのトラックポイントなども採用する。
短時間ではあるものの、自分でもHelixを触ってみて、相当に気に入った。個人的にはことさら全部入りを求めるタイプではないのだが、文字入力や書類をつくったりといった作業は今後しばらくは変わらないのだから、快適性に関わるキーボードにはこだわりたい。CPUパワーも、仕事上、簡単な動画編集ができる程度には必要だ。
その上で、タブレット時の身軽さも両立させたいと思うと、やはりこの形がしっくり腑に落ちる。
なかなか良い機種であると思うので、日本版が発売になった際にはぜひ触ってみてもらいたい。
【そのほか展示されていた注目製品】
↑IdeaPad Yoga 11のコアi版。WindowsRTじゃなかったらなぁ……と思っていた人にはまさにうってつけの機種。11.6インチ1600×900ドット、8GBメモリー搭載。 |
↑展示機の詳細画面を開いたところ。ちゃんとフルスペックのWindows8になっていることがわかる。 |
●関連リンク
レノボ 新製品情報ページ(英語)
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