バンガロールに来てインドの携帯メーカーの1つMicromaxが「iPhone対抗」だと宣言する(!)スマートフォンを買った。世界は、スターバックスとIKEAとカルフールだけで出来ているわけではない。海外でケータイを買う楽しさは、ちょうどその土地の料理やお店に触れるのと同じように文化に触れることだと思っている。
↑インドの携帯メーカーMicromaxの『A50 Ninja』。
その昔、大変にお世話になったソニー(SISC=Sony India Software Centre)の武鑓行雄さんにバンガロールの電脳街を案内してもらった(なにしろ世界最大のIT基地といわれるバンガロールなので電脳街もコッテリとしているのだがこれについては追ってレポートすることにしましょう)。その武鑓さんからインドのデバイス事情とあわせて聞いていたのが、今回、買った『A50』である。ちなみに、Micromaxはすでに世界12位の携帯メーカーだそうだ。
まだ1週間前に発表されたばかりの端末なのだが、電脳街ではなくていわゆるアジア的雑居ビルの典型といえるナショナルマーケットというところで現物が入手できることが判明。METRO MOBILEというお店によると2日前に店頭に並びはじめたばかりとのこと。そのピカピカのAndroid端末が、4954ルピーで税金をいれても5200ルピー(日本円で約7600円)で買えてしまう。
しかし、それ以上に私をこの『A50』という端末に駆り立てたのは、発売元のMicromaxという携帯メーカーが、
「iPhone対抗」
と堂々とうたって宣伝をしかけていることだ。ジョブズなきあとのアップルには、それぞれの企業がさまざまな戦いをいどんでいると思うが、急成長市場を背景にしたインド企業がそんな商品を出してくるというのがいい感じだ。
しかも、この商品には“Ninja”という愛称がついている。起動画面からして、いかにも忍者の刀がキラーんとくる感じの光と音の感じでカッコいい。ちなみに、普通の大人のインド人に「忍者って知ってるか?」と聞くと「知らない」と答えるというのだが、子供たちの間では『忍者ハットリくん』は人気らしい(このバランスもいいでしょう)。
↑私がマサラなスマートフォンを買った雑居ビル“ナショナルマーケット”とはこんなところ。こういう建物が3つほど軒を連ねている。中は衣料や雑貨、デジタルデバイスなどを売る小さなお店がひしみきあっている。
↑Micromax A50 Ninjaをゲットの図。
↑インドではスマートフォンが安いよー。4954ルピーだ。
↑商品を入れてもらった袋をみたらこんな広告になっていた。スマートフォンを買うとスズキの『HAYABUSA』が当たるというキャンペーンをやっていた模様。社長は明らかに日本のビッグバイクファン?
↑背面はとてもスッキリ。カメラは内側にはないのですね。
↑中国と同じでインドでもSIMが2枚入ることが重要なようです。
↑起動画面と終了画面がとてもNinjaな感じに仕上がっている。
それでは、どこがどうiPhone対抗なのか? 中身は、割りとフツーのAndroid 2.3.6で、プリインストールアプリも控えめで割りとシンプルな端末といえる(細かいスペックはネットで検索されたし)。注目点として、約5000ルピーというお値段とSIMの2枚差しもあるのだが、最大のポイントは「Aisha」(エイシャと読むらしい)という機能を搭載していることだ。
Aishaは、アップルがiPhone4Sから搭載したSiriに似た音声認識を使ったエージェントだ(ヒンズー語やタミル語ではなく英語なんですけどね)。Aishaのアプリを起動して喋りかけてることで、「電話」をかけたりなんてのは当然のこと、「Facebook」なんかも使えたり、ちょっとした質問に答えてくれる。ということで、さっそく、Aishaを使ってみました。
↑『Aisha』の起動画面。
↑いまの時間が知りたいとき。
↑お天気も分かります。
↑軽い受け答えはこんな感じ。
↑ちょっとした会話の相手にはなってくれるかもしれません。
↑ピザが食べたいと思ったら「Find pizza」、宅配だったら「Find pizza outlet」などと言うといいらしい。
↑空港のいまいるところとピザのお店の位置が分かりました(シンガポールトランジット中)。
↑Dexetraというバンガロールの会社が開発しているようです。
これの認識率、やれることなど、正直、まだまだSiriまでは達していない。いまどきなので、ソフトの組み合わせでこんなことできちゃうという意見もあるだろう(事実その程度のものかもしれない)。しかし、少なくとも“人工知能”であって“人口知能”ではないようなのだ(インドはCPU設計からコールセンターまで幅広いニーズに答えている=というよりもこのソフトはコールセンターのビジネスから生まれたものかもしれないが)。
そして、なにしろ世界最強ともいわれるインドのソフトウェアがついている。実は、A50 Ninjaも「マサラなスマートフォン」とは言ったものの中国メーカーが製造しているらしい(しかも結構ダサイ)。iPhone対抗といったときにソフトウェアしかないというのが彼らの結論だとすると、とても正しい選択のような気もする。
【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭
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