海外に出かけると必ず文房具店に入る私だが、米国で何度も買おうか買うまいか迷って結局いままで買わずにきた商品がある。それが、「ラバー・バンド・ボール」(輪ゴム玉)。ACCOという大手文具メーカーの商品なのだが、野球のボールよりちょっと小さいくらいの大きさにデタラメに巻かれている。心の底ではむしょうに惹かれるのだが、そのぞんざいさや旅先に買うにはあまりに無意味な重さなども手伝って、買いたい気持ちを断ち切ってきました。それが、今年1月、何かの魔が差したのでしょう。CESで出かけたラスベガスのFry'sで買ってしまったのでした(袋があまりにヨレヨレで可愛そうだったから? 下は、はれて購入した直後の写真)。
「ラバー・バンド・ボール」、ネットで調べてみたら米国では1つの立派な文化になっている。Pee Wee Harmanの使用済みアルミホイルの巨大ボールに近い感覚でしょうか? 「Rubber Band Ball」と入力して、グーグルの画像検索をしてみると、出てくる出てくる。ちなみに、日本語で「輪ゴム 玉」とか「輪ゴム ボール」とか検索してもまるで出てこない(当たり前というかなんというか)。
Amazon.comを見ると「Make it yourself Rubber Band Ball Kit」(ラバー・バンド・ボール自作キット)なんてのも売られている。4ドル21セント(円高もあり安いですね)。さらにいえば、今年4月に『Every Kid Needs a Rubber Band High Bounce Ball』(子供はみんなよく弾む輪ゴム玉が大好きだ)という本も出るらしい。世界的なラバー・バンド・ボールのブームが到来しているのかもしれません。
こうなると、当然のことながらということでYoutubeを見るとありました。「ラバー・バンド・ボール」をつくるビデオ。
オフィスでの「ラバー・バンド・ボール」の使い方を紹介するビデオ。
「ラバー・バンド・ボール」で自動車を破壊するビデオなどというのもありました。
もののあわれを感じてしまったのは、eBayで自分で作った(?)とも思えてしまうラバー・バンド・ボールをオークションに出している人がいたことです。写真ではよく見えないと思いますが、直径12インチ(約30センチ)とあります。お値段は35ドル、日本にも送ってくれるそうです。
「一体、何本の輪ゴムがこれに使われているのだろう?」と素朴な疑問をいだかれる人もいるはず。私が買った奴は、袋を綴じてあるボール紙には「少なくとも270本」と、Amazon.comでは同じ奴が「少なくとも260本」と書かれている(写真を見るとちゃんと少なくとも270本と印刷されているのに画面にはそう出ている=ひょっとしたら260本しかなかったというクレームでもあったのか?)。さらに、私がFry'sで買った奴のお店で貼ったラベルをよ~く見ると「約275本」とありました。誰かお店の人が数えたのか?
ところで、この記事には後日談がありまして、『R25』(2009年3月26日発売号)で取材されてしまったのだ。見開きで、「一体何がスゴイのか・・・全米で盛り上がる《輪ゴム玉》の正体とは?」という記事の中で、日本で輪ゴム玉に詳しい人ということで登場しているのだw。
米国で買ってきた定番の「ACCO」の輪ゴム玉は、これを理解してくれる人にあげてしまった。つまり、手元に輪ゴム玉がない状態になったのだが、やっぱり欲しくなって米国から取り寄せたりしていた。そして、『R25』のライターさんに取材されたときに、日本でも「輪ゴム玉自作キット」が売られていることを教えてもらった。「輪ゴムをボールにして何が楽しいの?」と聞かれそうだが、これが、なんとも心洗われるものがある。ちょうど、角張った石が川の流れの中で丸くなるように、デコボコになりそうな輪ゴム玉が自然に丸くなっていく自然の摂理のようなものも感じられる。ちょっと手がゴム臭くなるのを気にしなければではあるが……。ちなみに、私が買った輪ゴム玉のキットというのは次の2つのパターンがあります(大きいほうは重さが1ポンドの輪ゴム玉ができてしまう)。
小さいほうの中身をあけてみると以下のような感じ。
これを巻いていきます。
どうです、輪ゴム玉の醍醐味。「本当に輪ゴム玉のブームなの?」と突っ込まれそうだが、米国で人気の理由は、昨年夏(※執筆時2009年3月26日)にギネスブックの記録を2年ぶりに(しかも重量では一気に約2倍だったか?)と更新した人が出てきたのがありそう。テレビ番組なんかでバンバン流れたらしくグーグルトレンドでもニュースで取り上げられていることが分かります(認定は11月)。世界一は狙わなくてもYouTubeで自分なりの輪ゴム玉を発表している人も増えてます。ちなみに、いま再度、輪ゴム玉を巻きながら『R25』の記事を読んでいたら、この記事書いた石原たきびという人は、その後、私以上にハマってしまい、1週間かけてキットで13袋分の輪ゴムを約3500本巻いて、直径15センチの輪ゴム玉にしてしまったとか? それって、たぶん現時点では日本最大の輪ゴム玉かもしれません。日本で輪ゴム玉第一人者のつもりでいた私としては、ちょっと聞き捨てならず……輪ゴム玉の話はまだあるので、次の機会に。
【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
■関連サイト
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