仕事でニューヨークに来ている。HPは、“The Computer is Personal Again”(コンピュータはもう一度パーソナルになる)というちょっと気になるキャンペーンを展開中だ。市内のホテルとオシャレなスタジオでイベントをやったのだが、写真は、そんな、最近のHPを感じさせるグリニッチヴィレッジの街角の小屋(?)をグルリとくるんだ同社の広告(フラッシュをたいてちょっと妙な写真になっていますが)。
HPの広告。ハンガーにグラフィカルなノートパソコンがかかっているデザイン。同社はMTVと一緒にパネルのデザインコンテストを開催中だ。
日本では、HPというと固くて難しいことをやっている会社、米国では、私のニューヨーク在住の古い友人によるとプリンタの会社というのが一般人の印象のようだ。ちなみに、米国でも日本の100円ショップみたいな99セントショップが流行っている。「もう一度パーソナル」というのは、もっとコンピュータを個人にとって大切なものにしないと、コンピュータ業界は生き残れないということなのだ……と、個人的には解釈させてもらった(イベント自体については別途書きます)。
アップル製品の専門店“TEKSERVE”。独自のノウハウ小冊子も配っていて一目置かれているお店。
その友人(夫婦でDJの専門誌を出している)に、五番街に出来たアップルストアに行きたいと言うと、「ニューヨークでアップルならココでしょう」といって連れて行かれたお店が「TEKSERVE」(http://www.tekserve.com/)。入り口のカウンターの下にズラリと古いMacintoshが並んでいて、おっ、やるなと思わせる。たしかに、こっちのほうが全然アップルらしい匂いがプンプンしている(最初に買ったのがApple IIcの私としては)。
店内で修理を待つ人々。同店のサイトには「どんな古いマックも直せる」とある。
何も知らずに地下に降りようとして店員さんに止められた。店内の奥半分くらいは工房になっていて、中二階や地下は倉庫みたいにな感じになっている。修理を頼みに来た客がまるで診療所の待合い室みたいに待っていて、いかにも頼りにしていますよという雰囲気で来ている。ニューヨークは、あいかわらずテーマカフェが結構ありますが、このままカフェにしたら帰らない人がたくさんいて困るんじゃないか。
店内には、さまざまな古い機器がさりげなく置かれている。
写真は、機械式計算機の会(http://www2.famille.ne.jp/~wata-yuu/m_cal/)の渡辺氏に見てもらったところ、バローズの初期の加算機でしょうとのこと。最初から内部が見えるガラス張りで話題になったそうで、トランスルーセントの元祖的存在かもしれません。
打ち合わせっぽく使うテーブルエリアの上の壁は古いラジオが覆っている。パソコンを覗き込んでいる彼女がいいでしょう。
ニューヨークでは、以前、ハッカー雑誌の『2600』を置いている小さなPCショップもいくつかあった。たぶん、そういうお店は減っていて、「J&R」や「CompUSA」や「DataVision」みたいな量販店か、そうでなければ「Apple Store」だけになったと思っていた。ところが、どっこいこんなお店がちゃんと生きてるじゃん(本当はもっとある?)。写真は、店内に飾られたラジオと歴史的な電子機器などのフレーム。それが、ノスタルジーというより愛着とか敬意を込めて飾られている感じが分かる。「コンピュータはもう一度パーソナルになる」のヒントは、案外こんなところにあるんではないか? 思えば、アップルは、HPに勤めていたウォズニアックが作り、やがてパソコンを生むことになるシリコンバレーは、ヒューレットとパッカードの2人が電子機器を作ったのが始まりなのだ。
【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
■関連サイト
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・Facebook:遠藤諭
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