シリコンバレーのマウンテンビュウに「Computer History Museum」(http://www.computerhistory.org/)という施設がある。コンピュータ好きなら一度は出かけてみたいところといって大げさではないでしょう。私にとって、Computer History Museumは、その昔、ボストンにあった時代に到着即閉館になったという苦い記憶がある。
サンフランシスコからカルトレインという2階建ての電車で1時間。車両が不思議な構造をしていて、つまり、普通の電車で通路にあたる部分が吹き抜けになっている。2階席は吹き抜けの横の席1つ分が通路になっており、つまり、2階席は窓側席左右1列ずつしかない。なぜ、こんな効率の悪い作りをしているのだろうと思ったら検札の車掌さんがやってきて分かった。1階を歩きながら手を伸ばして2階客の検札もしてしまう! 私の乗った車両は1階が自転車専用になっていて、いかにも西海岸な雰囲気でうらやましい。
Computer History Museumでは、現物を見るのは初めてというマシンが多くてとても感動する。館内ツアーの時間に合わなかったのだが、学芸員(?)のオジサンが、なぜか私ひとりに付いてくれた。「Curtaはスイスでなくてリヒテンシュタインでは?」(濃い話恐縮)とか、オジサンの言い間違いを指摘していたりしたら、「学校で教えているのか?」と言われた。というか、ちょっと嫌がられたのか途中でいなくなってしまった。『計算機屋かく戦えり』や『コンピュータが計算機と呼ばれた時代』を持って行ってプレゼントすればよかったと思う。
ボストンの時代にはなかったと思う展示品もあって、なるほどなーという気分になる。たぶん、いちばん新しめのが「グーグルの最初のプロダクション・サーバー」と書かれた、ラック一杯のハードディスクとケーブルの固まりの怪物。説明によると、このハードウェアそのものがグーグルの検索アルゴリズムを反映したものになっている。これで1秒間に数千件の検索要求に応えていたとある。ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが、最初にこのシステムを安く開発したのだった。
ボードごとにハードディスクが数個ずつ載っていて、放熱の問題が気になる。というか、私見ではそのジャンルの勃興期にあるハードウェアというのは、昔の真空管式の時代であろうが、大型機の初期であろうが、CRAY-1であろうが、ミニットマンミサイルの制御部であろうが、すべてゴチャゴチャで下手すりゃケーブルの固まりなのだ。それらに比べれば、ハードウェア屋さんが見れば「こんなものでしょう」というものなのかも知れないが……。後で聞いたらグーグルのオフィスにも同時期のものと思われるサーバーが置いてあるそうだ。グーグルが、ビジネスアイデアの産物ではなくて、技術的な試みだったことが目で見て分かる物体。
サンフランシスコまでお出かけのおりは、「Computer History Museum」を旅行プランに入れてみるのもよいのでは? サンフランシスコといえば、世界中の科学館ファンならご存知の「Exploratorium」もありました(http://www.exploratorium.edu/)。
【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始()。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
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