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ドコモが日本通信に提訴された経緯

2012年04月19日 22時21分更新

 日本通信は今日、ドコモに対して『算定式の合意を確認する訴訟』(民事訴訟)を起こしました。同社とドコモとでMVNO接続料の算定式などを定めている契約約款に、ドコモが違反しているという理由です。

日本通信がドコモを提訴
↑会見で話した日本通信の三田聖二社長。

 日本通信が発表した“訴訟の趣旨”は下記の通り。

・契約通りの算定式により算出された接続料を支払うべき地位にあることを確認
・合意どおりの接続料を定めた接続約款を総務省に届け出よ
・過年度の過払い分の返還

 

■訴訟に至る経緯

日本通信がドコモを提訴
↑訴訟に至る経緯を説明した日本通信の片山美紀上席執行役員。
“接続料”=通信事業の根幹
日本通信がドコモを提訴

 両社は、2008年に接続料の算定式を定め、MVNOサービスを開始しました。2009年もその算定式が使われましたが、2010年にドコモがこれを変更。“プラスアルファ”が追加されていたそうです。

日本通信がドコモを提訴
日本通信がドコモを提訴

 ドコモは「必要な費用」と説明したとのことですが、その費用はそもそも算定式に含まれているはず、というのが日本通信側の主張です。
 このため日本通信が差額の支払いを一時停止したところ、ドコモ側は「接続を切断する」と回答。結果、ユーザーへの影響を考慮して、日本通信側はドコモ側の要求どおりの支払いを続けている、というのが今の状況です。

日本通信がドコモを提訴
↑協議におけるドコモの主張を説明した日本通信の福田尚久代表取締役専務。

 なお、2010年、2011年における日本通信が“過払い”として認識している金額は合計で8000万円程度になります。
 福田尚久専務は、「大きい額ではないが、これを容認してしまうと今後数億、数十億に発展してしまう恐れがあり、容認できない」と話しました。

 

■ドコモによる主張

 日本通信とドコモは接続料の算定式に関する協議をしてきました。
 その際、ドコモ側の対応について、会見ではこのように発表されました。

[ドコモ]2010年度の接続料を日本通信は支払っている。新たな算定式に同意していることを示す証拠である
[日本通信の主張]支払わなければ接続を切断するという回答だった。ユーザーを人質にしたあるまじき行為。ましてや、支払っているから同意している証拠、というのはへ理屈である

[ドコモ]第二種指定電気通信事業設備制度の運用に関するガイドラインに基づいて算定している
[日本通信の主張]ガイドラインは接続料算定式を定めていない。ガイドラインを守ることと、日本通信との合意を守ることは両立する

[ドコモ]従来の算定式では原価割れしている
[日本通信の主張]合意した算定式は概算式であり、真の原価よりも高く算出される式となっている。2010年にあった“不当廉売問題”では「原価が低い」と主張していた
(※法人向けのデータ通信事業で、不当に安い接続料金を法人ユーザーに提示した、というもの)

[ドコモ]接続約款は総務省に届け出ており、総務省は認めている
[日本通信の主張]総務省はドコモと日本通信の契約内容について知る立場になく、ましてや判断する立場にもない

[ドコモ]2011年度は前年度比35パーセントの値下げになっている
[日本通信の主張]前年度から値上げになる算定式を提示されている。両社で合意している算定式の違反を容認したら、ドコモに自由に接続料を上げられてしまう

 ちなみに、通信事業者には『ドミナント規制』と呼ばれるルールがあります。通信事業において、一定以上のシェアをもち、影響力が大きく支配的になっている通信事業者に対する規制です。
 この規制では、携帯電話の通信接続料の算定式は“事業者間の契約”で定める、とされています。

日本通信がドコモを提訴

 日本通信は、ドコモの行為はドミナント規制を悪用した不正行為である、と主張しています。

日本通信がドコモを提訴

 三田社長はMVNO協議会(外部サイト)の会長をつとめており、その立場からも訴訟を決めたと語ります。現在の“過払い”とされる金額は8000万円ですが、今後も支払いは続けるため、その総額は拡大します。

 三田社長は最後にこうコメントしています。
 「本訴訟は、総務大臣裁定に基づくドコモと当社の合意を、ドコモに履行させるためのものであり、お金の問題ではありません。日本においては、市場支配力を有する事業者のこのような行為に対して、泣き寝入りする企業が多いと聞いていますが、 制度に基づいた正しい行動をとらなければ、 社会は一向に変わりません。 日本通信は、このような状況に対し、真っ直ぐ、正しく解決を図り、そうすることで通信業界の発展、ひいては社会貢献を進めます 」

※初出時、適切でない表現を用いた箇所がありましたので本文とタイトルの一部を訂正致しました。

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