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re:Inventの新発表が多すぎる!と思うあなたへ

ぎゅっと絞り込んだre:CapをJAWS-UG初心者支部で聞いてきた

2019年12月23日 07時00分更新

クラウドの弱点を解決するエッジコンピューティングサービス群

 続いて紹介されたのは、エッジコンピューティング系のサービス群。クラウドにはレイテンシがつきもので、光速を超える技術を持たない現在、解決できない課題として挙げられている。光が日本からアメリカまで往復するだけで100ミリ秒ほどかかるのだ。そこでレイテンシに特に厳しい要件を持つサービス向けに用意されたのがAWS Outposts、AWS Local Zones、AWS Wavelengthといったエッジコンピューティングサービス群だ。

物理法則を超えて遅延を解消することはできないクラウドの性

 AWS Outpostsは、ユーザーが使うデータセンターにAWSのハードウェアを直接持ち込むもの。サービス処理を行なう場所自体をユーザーに近づけることで遅延を抑える力業だ。注文するとユーザーが指定したデータセンターやサーバールームにラックが届けられる。設置したAWS Outpostsは新しいアベイラビリティゾーンとして認識され、マネジメントコンソールを通して他のA-Zと同じように扱えるという。

 「これらはあくまでAWSのサービスとして届けるもので、ハードウェアとしてお貸しする訳ではありません。ですから、設置もメンテナンスもハードウェア故障への対応もすべてAWSスタッフが行ないます。ユーザー自身の手でハードウェアを触れることはできません。ラックにはセキュリティがかけられており、無理に開くとデータが初期化されるようになっています」(亀田さん)

ラックごとハードウェアが届くけど、開けるなよ、開けるなよ!

 AWS Local Zonesは、人口密度が高くIT活用度の高い街にAWSのエッジノードを伸ばすもの。AWS WavelengthはモバイルからAWSにアクセスする際の遅延を削減するもの。

「AWS Wavelengthは高速低遅延な5Gネットワークの普及を見据えたもので、日本でもKDDIをパートナーに導入が決まっています。一般的にモバイルからのアクセスにおいてはキャリアネットワーク、商用インターネット回線と通ってAWSといくつものネットワークを経由します。これをショートカットすることで、モバイル向けにも低遅延でサービスが可能になります」(亀田さん)

 これらがグローバルで浸透していけば、「クラウド=高遅延」という感覚も変わってくるかもしれない。

量子コンピューティングの世界がクラウドにも到来!

 量子コンピュータって、SFの世界だよ! 電子より速いものないかって架空のものとして生み出されたのが量子コンピュータなんだから。それが実現されたことにも感動があるのに、なんと時間単位でクラウドで試せる時代が来たっていうんだから、もう未来に生きてると言うしかない。

 と言っても、アマゾンが量子コンピュータを開発した訳ではない。Rigetti、IonQ、D-Waveをマネージドサービスとして使えるというのが、Amazon Braket。既存のサーバのマネージドサービスとは桁違いのメリットがあると、筆者は考えている。たとえば既存のサーバがマネージドサービスになったところで、大きく削れるのは調達と運用の部分のみである。これだけだってものすごく大きな効果だからクラウドが広まっているのだけど、量子コンピューティングのマネージドサービスで得られるメリットはこんなもんじゃない。

量子コンピューティングが時間課金で使える、未来キタよコレ!

 そもそも量子コンピュータを動かすためには超伝導現象を確認できる極低温と、真空に近い環境が必要だ。極低温といっても、生鮮食品を長期間保存するようなマイナス数十度なんてレベルではない。すくなくともマイナス200度に近いレベルに保たなければならないのだ。こんなの、いちユーザが準備できるレベルをはるかに超えている。「ちょっと試してみたいので、マイナス200度で真空の環境を用意して良いですか」という稟議が通る企業はまずないだろう。そんなシロモノが、時間単位の課金で試せるのだ。設備投資を考えるだけでも、マネージドサービスのメリットの大きさがわかる。

 君のコンソールに、未来、来たよ。

細かいアップデートもちゃんと紹介されてるよ

 このあたりまでが、亀田さんが時間をかけて紹介してくれたポイント。つまり、今回の注目ポイントと言ってもいいだろう。これ以降は、真新しいアップデートではないけれど押さえておきたいトレンドというところだろうか。主に、既存サービスを機能強化するようなサービスが並ぶ。

 AWS Fargate for Amazon EKSは、Kubernatesオペレーションの専門家がいなくても容易にセキュアにコンテナを運用できるサービス。従来のEKSはユーザー側でメンテナンスする必要があったが、そこが自動化される。

 AWS RDS Proxyは、名前の通りRDSのプロキシだ。リクエストを一度プールしてくれる。プロキシを嚙ませるメリットがわかりやすい例として亀田さんはLambdaを使う環境を挙げた。

「Lambdaは時間制限が厳しく、継続的な処理には向きません。しかしAmazon RDS Proxyを使えばコネクションをプールできるようになるので、Lambdaがタイムアウトしても次のクエリーを処理できます」(亀田さん)

 同じくデータベース系ではAmazon Auroraが機械学習をサポートした。Sage Makerと連携することで、使い慣れたSQLコマンドで機械学習をコントロールできる。また、Amazon Redshift Query、Amazon Athena Federated Queryにより、S3を含むデータベース群を様々なデータソースに対してJDBC経由でクエリーを実行できるようになった。

 個人的に面白そうだなと思ったのは、Amazon Fraud Detector。これはAmazonがクレジットカード詐欺を検知するために開発した技術をサービス化したもの。詐欺検知機能を自前で実装するのは難しいが、昨今のオンラインサービスの信頼性を保つには放置もできない。サービスとして組み込むだけで詐欺検知ができれば、これからAWSを使って開発するサービスの信頼性を底上げできる可能性があると感じた。

 他に、コードレビューを自動化するAmazon CodeGuru、サポートセンターをサポートするContact Lense for Amazon Contact、複数データソースへの自然言語検索を可能にするAmazon Kendraも紹介された。実は記事に拾わなかったが、AWS Inferenciaを採用したEC2インスタンスやAmazon Managed Cassandra Serviceについても紹介があった。結局、30分で16のアップデートが紹介された訳だけれど、これでも他の支部で行なわれるre:Capよりは単純化されているはず。

 でも初心者の立場から素直な気持ちを言うと、亀田さん、もう少しお手柔らかにお願いできませんか(笑)。

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