お金を刷ってばらまけばいい
とはいえ問題点がないわけではない。よく言われるのは労働意欲の低下と財源だ。
井上准教授も2点に言及。まず労働意欲の低下については「この議論はあんまり意味がない」とする。たとえば給付額が月に40万円などの高額だった場合は会社を辞める人も出てくる。だが、月7万円程度(少額)であれば会社をやめないだろうという。
もうひとつ、オランダの歴史家ルトガー・ブレグマン氏による著書『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』(文藝春秋)の一説を引いて「人々が思っているよりも人間はだらしなくならない」と説明した。
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隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働 |
財源に関しては、お金を持っている人たちに税金を課して払ってもらえるかどうか、だという。
仮に月に7万円給付する場合、だいたい100兆円の財源が必要で、児童手当や雇用保険などの政府支出を減らせることができても、64兆円は必要とのこと。ここで単純化のために、一律所得税のみを引き上げると25%上がるそうだ。
25%上がった場合、所得税の最高税率は70%になる。井上准教授は「これはかなりきつい」とし、「所得税だけでまかなうのは厳しい。(所得税の税率を下げるために)相続税を30%引き上げるとすると、相続税の最高税率は85%になる。これもかなり反対が予想されるが、私からすればこの高い税率が適用される層は残りの15%でやっていけるだろう」と話す。
さらに、「お金を刷ってばらまけばいいじゃん、という話もある」と続ける。「貨幣発行益という言い方があり、日本銀行がお金を刷った分だけ利益が出るはず。それをそのまま国民に直接還元すればいい」と展開した。
メリットの部分でも言えることだが、このあたりは反対意見が交わされる場ではなかったので、どれほど現実味のある話なのかは判断がつかない。井上准教授自身も「乱暴に聞こえるかもしれない」と言っていたので、もしかしたらちゃんとした議論が必要な部分なのだろう。
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