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新社長のお披露目ともなった「NetApp Insight 2019」

データファブリックの実績と事例を披露したネットアップ

2019年12月11日 07時00分更新

 2019年12月10日、ネットアップは第11回を迎えたプライベートイベント「NetApp INSIGHT 2019」を開催した。基調講演には日本法人の新社長である中島 シハブ・ドゥグラ氏や米ネットアップのエグゼクティブのほか、ドリームワークス、IDCフロンティア、SkyDriveなどが登壇。データ活用とデジタルトランスフォーメーションの事例について講演した。

ネットアップジャパン 代表執行役員社長 中島 シハブ・ドゥグラ氏

新社長のお披露目、新しいサブスクサービス「Keystone」

 基調講演に登壇した米ネットアップのヘンリ・リチャード氏は、新たに日本法人の代表執行役員社長に就任した中島 シハブ・ドゥグラ氏を紹介した。イラクのバグダッドに生まれ、ヨルダンやイギリスを経て、来日した中島氏の日本在住はすでに28年に渡っており、直近はシスコの専務執行役員を務めていた。中島氏は、「データは一番大事な資産。みなさんといっしょいデータファブリックを作っていきたい」と抱負を述べた。一方、10年に渡って日本法人の成長を牽引してきた前社長の岩上純一氏は日本法人の会長に就任している。

米ネットアップ ワールドワイド フィールド アンド カスタマー オペレーション担当エグゼクティブ バイス プレジデント ヘンリ・リチャード氏

 続いてリチャード氏は市場のニーズとして、「フラッシュを採用したインフラのモダナイズ」「オンプレミスにおけるクラウド体験」「パブリッククラウドの活用によるイノベーションとスピードの実現」の3つを挙げる。これら3つを1つのジャーニーとして統合し、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促すのが、5年前に発表されたネットアップの「データファブリック」だ。

 この5年間、データファブリックではさまざまな機能やサービスを実現してきた。ハイブリッドクラウドの基盤となる強固なファイル、ブロック、オブジェクトのストレージを提供し、ディスク、フラッシュ、永続メモリの導入を推進。また、ハイパーコンバージドインフラである「NetApp HCI」も世に送り出し、階層化、ミラーリング、バックアップ、アーカイブなどのデータサービスをクラウド化して提供している。さらに従来のワークロードに加え、AI/MLやクラウドネイティブなアプリケーションをサポートし、マルチクラウドでの運用や管理やオーケストレーションを実現するNetApp Kubernetes ServiceやFabric Orchestratorなどのサービスも実現している。

 データファブリックでの統合されたデータサービスは、AWS、Azure、Googleなどのパブリッククラウド事業者と緊密に連携することで実現されている。リチャード氏は「われわれは統合的で、ハイブリッドなデータサービスを提供することで、顧客のDXをお手伝いする。すでに単なるエンタープライズストレージのメーカーではなくなっている」とアピールする。

 先日のInsight 2019で発表された「NetApp Keystone」は、これらデータファブリックのサービスを従量課金で利用できる新しいサブスクリプションプログラムになる。パフォーマンスレベルとストレージサービス、そして、顧客自身の管理か、ネットアップによる管理かを選定すればサービスが利用できる。まずはAWSやAzure、GCPなどのパブリッククラウドと連携したデータサービスからスタートするという。「いまはどれをオンプレミスに、どれをクラウドに持って行くか判断するのが難しい時期だ。でも、Keystoneを導入することで、シームレスにワークロードやデータを移動させることができる」(リチャード氏)。

3ステップで利用できる「NetApp Keystone」

3年前、われわれはパブリッククラウドに殺されると言われていた

 続いて登壇した米ネットアップのアンソニー・ライ氏は、デジタルトランスフォーメーションとネットアップ自身の変化についてより深く説明した。

米ネットアップ シニア バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー アンソニー・ライ氏

 ライ氏は、ソフトウェアエンジニアの業務が、すでにテクノロジー以外の方が多くなっている現状を披露。今後はすべての企業がテクノロジーカンパニーなっていく必要があると強調した。また、自社が「デジタル化」しているかどうかは、「顧客とのデジタルの接点があるか」「デジタルのプロダクトを持っているか」「デジタルなインサイト(洞察)を持っているか」という3つのステップがあると指摘。「もし、こうしたデジタル化が進んでいなければ、デジタルに長けた新興事業者がディスラプター(破壊者)として業界自体を脅かしていく。UberやLyftは1台も車を持ってないが、自動車業界を破壊しようとしている」とライ氏は語る。

 今後5年間には過去40年間を大きく上回る5億本のアプリケーションがリリースされる見込みだ。しかし、企業のデータのうち約73%は分析や分類が行なわれないままシステムに投入され、データ活用の多くのアプローチは失敗に終わることも多い。これを成功させるためには、リーダーがトップダウンでプロジェクトをリードし、推進者に投資と権限を委譲し、とにかく迅速に試行と改善を重ねていくことが重要だという。ライ氏の「インフラではなく、開発者に投資すべき」というコメントは非常に印象的だ。

 このDXの課程は、ハードウェア販売中心のストレージベンダーから大きく変革してきたネットアップが、この数年間歩んできた道のりでもある。「3年前、われわれはパブリッククラウドに殺されるだろうと言われてきた。ネットアップはオンプレミスとのストレージを売るレガシーの企業になると言われた。しかし、われわれはトランスフォーメーションに成功した」とライ氏は語る。

 ネットアップはスピードを重視し、パブリッククラウドへのコミットを徹底的に推進した。そして、適材適所でデータを利活用できるデータファブリックの構想を具現化してきた。実績のある強固なストレージ基盤上に、ハイブリッドクラウド環境で利用できるスナップショット、クローン、バックアップ、階層化、コンプライアンスなどのデータサービスを構築し、パブリッククラウド上から利用できるようにした。「パブリッククラウドを否定することはもはや受け入れられない。イノベーションがあり、チャンスがあり、投資も行なわれている、パブリッククラウドはITを民主化し、どんな企業でも、どんな場所でも利用できるようにした」とライ氏は語る。

クラウドデータサービスのフルスタック

 最近では、インフラ監視やコスト管理、ユーザーの挙動分析、仮想マシンやコンテナのワークロード管理などクラウド管理・運用サービスにも積極的だ。「われわれはデータロケーションをここにすべきという裏の意図を持っていない。継続的に自分たちのサービスをすべてのクラウドリージョンで提供していく。オンプレミスでも、パブリッククラウドでも、われわれはどこでもかまわない。変わらない使い勝手を実現するのがデータファブリックだ」とライ氏は語る。

 現在、ネットアップのサービスをパブリッククラウド上で使っているユーザーは数千社におよんでおり、そのほとんどは1PBを超える規模での利用になっている。また、データサービスに関しても1日10社単位でユーザーが増えており、そのうち半分は今までネットアップとつきあいがなかった新規顧客だという。「『EASY』をキーワードにサービスを提供している。APIが用意されており、従量課金で利用でき、アップグレードの必要もなくなる」とライ氏はアピール。

 最後、ライ氏はネットアップのクラウド情報サイトが同日日本語版で提供されるようになったことを発表。また、世界400以上のクラウドデータセンターで稼働しているCloud Volumesのサービスも、各パブリッククラウド事業者の東京・大阪のリージョンで利用可能となっているという。

国内でもCloud Volumesが利用できる

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