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仕組み的に破綻していたロサンゼルス空港のUber

2019年11月06日 16時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

そもそも、UberとLyftがお呼びじゃない?

 Los Angels Timesによると、ロサンゼルス空港の当局者は水曜日の午前3時にLAXitを拡張し、より多くの乗客に対応できるようにすると発表し、混乱と遅れに対して謝罪しました(https://www.latimes.com/business/story/2019-11-05/lax-uber-lyft-taxi-laxit-pickup-lot-new-rules-opportunities)。

 しかし、そもそもこうした事態を招いたのは、UberやLyftといったライドシェアアプリが空港の道路を占領して大渋滞を引き起こすようになったことが問題で、これを排除・整理するために作り出されたのがLAXitだったという経緯を見ることができます。

 筆者がシリコンバレー・マウンテンビューの海岸沿いにある屋外シアターで開催されたグーグルの開発者イベント「Google I/O」に参加したときは、膨大な人数の人々が1ヵ所に集中したときのUber/Lyftの無力さを体験していました。

 同じ地点にリクエストが集中することで、周辺道路の容量がパンクし、そのエリア一帯が大渋滞に見舞われます。そのため、そこで人を降ろしたい車、そこで乗せたい車、そこから乗りたい人、すべての人が30分近い遅延に悩まされることになりました。

 同じことが毎日、全時間帯で起きているとすれば、ロサンゼルス空港もライドシェアを隔離したくなる気持ちもわかります。

そろそろ岐路を迎えるインフラ

 変化が起きて、問題が生じたらそれを修正する、というプロセスが回っていること自体は、アメリカという社会やインフラが進歩しようとしていることの現れだと思います。しかしながら、その耐用年数、あるいは維持できる年数が短すぎることによって、頻繁にルールを変えなければならず、それによって混乱が発生する回数が増えることはあまり歓迎できません。

 そもそも、LAXitによって、ライドシェアアプリに感じていたこれまでの利便性は完全に消えました。自分がいる場所に、行きたい場所を心得ているドライバーがあと何分で到着し、お互いの評価の点数が明示され、安心感を持って利用できる。これがUberやLyftでした。

 しかしLAXit方式では、どんな車やドライバーに当たるかわからず、車に乗れるまでの時間も行列次第。不確実性が増大してしまっています。だったら、待ち時間だけは少なくて済みそうなホテルのシャトルや、料金は多少の高いタクシーを使ったほうがマシ、という判断するしかなくなるわけです。

 LAXitでの許しがたい体験が、今後どのように改善されていくのか、非常に興味があり、できれば、次にロサンゼルスを訪れる際には、5分ですんなり乗れるUberに戻っていてほしいと思う次第です。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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