ずばり弁護士が困っているところとは?
大谷:多くの弁護士さんは、どこらへんに困っているんでしょうか?
神徳:まずは案件管理ですね。担当弁護士がどこまで案件を進捗させているのかがブラックボックスです。弁護士事務所って、所長でも所属の弁護士(勤務弁護士)に気軽に進捗を聞ける感じでもないんです。でも、案件が完了しないと、報酬金が入ってきません。いつ終わるのか確認しないと、売り上げもわかりません。自分自身が勤務弁護士時代に進捗を聞かれるが嫌だったからでしょうね(笑)。私も気持ちわかります。
ただ、弁護士の先生方って、自分自身の案件の進捗管理に困っているということもあるんです。複数のお客様の交渉や裁判を同時進行で進めていくというのはなかなか大変ですし、とはいえkintoneに細かく入力していくのもそれはそれで大変です。そこで、弁護士の先生方が入力するところを極力減らし、担当事務の方にも入力サポートしてもらいながら案件管理が始めてもらいました。
大谷:結果はどうでしたか?
神徳:進捗が見えるようになると所長の心理的な負担が減るし、勤務弁護士の先生も自分の担当案件の進捗が見える化されて、業務を進めやすくなりました。またその案件管理に入力すると、裁判所に提出しなければいけない資料も印刷されるようになりました。弁護士の先生が資料作成のためにコピペを繰り返すという作業をなくしたんです。請求書なども出せるようにしたので、事務スタッフも楽になりましたし、リマインドもkintone側でしてくれるので、催促する側の負担もありません。
大谷:仕組み化して、使い手にもメリットを出るように、業務をkintoneに実装したわけですね。
神徳:はい。ほかにも担当案件数や売上が分からず困っていたというのもあります。この事件を誰に担当してもらうかわからないので、頼みやすい弁護士や、ベテランにお願いしがち。一番売り上げあげている弁護士も、件数が多いのか、単価が高いのかもわからない。これは弁護士に限らずで、どの士業でも概してどんぶり勘定です。
大谷:最近、契約書をAIで作成するサービスが増えていて、そういったサービスやっている方々から話を聞くと、弁護士事務所は基本パーティション文化で、横でなにやっているかわからない世界。見える化が進んでいないんだなと思いました。
神徳:そうですね。弁護士事務所の課題のもう1つは顧客管理です。たとえば離婚事案の場合、利益相反があるので、奥様の話を聞いたら、旦那様の話は聞いてはだめなんです。そういうこともきちんとチェックしなければならないのですが、多くの弁護士事務所は紙でやってるか、Excelでがんばっているところがほとんどです。弁護士向けのパッケージではこういるところはきちんとできていて、あいまい検索などもできて素晴らしいのですが、そういう便利さよりもクラウドで外からでもアクセスできるほうが選ばれるようになってきているということですね。
大谷:最近、kintone hiveって士業の方の登壇増えていますが、業界としても盛り上がっているということでしょうか?
神徳:士業って「AIで置き換えられる」と言われている業界じゃないですか。だから、業界を変革しないといけないみたいな動きに敏感です。
別府:弁護士事務所も民間企業と同じように案件管理されているんですが、民間企業に使っているkintoneをそのまま持っていっても導入してもらえません。でも、神徳さんのようにノウハウを持っている方にいろいろ教えてもらって、弁護士の先生が普段使われている用語できちんと説明できるようにすれば、専用システムとして受け入れてもらえるんです。しかも、弁護士だけではなく、会計士、社労士、税理士などほかの士業にも横展開できるはずだと思いましたね。
コンサルタントがコンサルティングに集中するためのkintone
大谷:コンサルティング会社としてkintoneビジネスはどのように展開していこうと思っていますか?
神徳:弊社としては、なるべくリアルタイムにお客様の状況と課題を知りたいというのがありました。多くのお客様は紙で管理されていたり、オンプレミスでシステムを持っていて外部の人間どころか社外からのアクセスがしにくい状態でしたので、弊社がコンサルティングに入らせていただくと、社内で管理しているのとは別に弊社に共有するために別途Googleスプレッドシートを用意して、情報共有をお願いしていました。
10年前は紙をスキャンかFAXで受け取ったり、Excelにまとめていただきメールで添付いただいているという状態でしたので、Googleスプレッドシートの導入で確かにリアルタイムにはなったんです。でも、情報を登録するお客様にとってはやっぱり手間。「コンサルティングを入れて、かえって面倒になった」という現場の声も出ていましたが、業績を上げるためには必要でしたので、がんばってもらうしかなかったんです。でも、やはり入力できる会社と入力できない会社がありまして、業績も比例していたので、スプレッドシートへの記入を徹底するリマインドをするという業務が発生していました。
われわれの仕事は、お客様のビジネスを分析してコンサルティングすることです。ですから、業務時間の多くを分析し提案を考えるために割くべきなのですが、実際は8割が分析するための数値化・資料化に使われます。この数値化、資料化をお客様の手間を煩わせないようにするためにはkintoneが必要でした。
大谷:確かに注力すべきは資料作りではなく、コンサルティングのための分析ですよね。
神徳:お客様が船井総研に期待していることは「業績を上げてほしい」「他の会社でうまくいっている事例を教えて欲しい」「実行をサポートしてほしい」というものです。でも、今までは同じ業界の数字を手作業で集めて、分析するしかありませんでした。数字を集めて、なぜ数値が上がっているのかの事象をつかんで、ようやく担当コンサルタントと背景を議論するという流れになります。正直アナログですし、データが不足していることも多い。ただ現場との距離が尋常ではないぐらい近いので、勘自体は冴えています。だから、がんばって集めて出したデータとはピタリと一致します。
でもこれからの時代はやはりデータです。インターネットが普及し、時流が変化するスピードが昔よりも格段に早まっています。ですから、自社の状態がリアルタイムに見える化でき、そのデータをもとに施策を変えていかなければ経営が傾くこともあります。ですので、お客様の労力とコンサルタントの労力を数値化にかけず、データドリブンなコンサルティングができたら、お客様にとっての弊社の価値も上がり、弊社もお客様にとってなくてはならない存在になれます。その点でも船井総研のコンサルタントとkintoneは鬼に金棒です。
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