8コア動作時の消費電力は激増!
では気になる消費電力について見てみよう。ラトックシステムのワットチェッカー「BT-WATTCH1」を利用し、システム起動10分後を“アイドル時”、ストレステストソフト「Prime95」の“SmallFFT”を実行したときのピーク値を“ピーク値”、10分経過後の安定値を“高負荷時”としている。
少し前まではIntel製CPUはAMD製CPUに比べ消費電力が少ないことがウリだったが、メインストリームの最上位が8コア化してからというもの、そのメリットは急速に失われ、今や完全に逆転してしまった。IntelはCore i9-9900KSで短期間における強烈なパフォーマンスゲインを得る代償として、消費電力を犠牲にしたということだろう。
まあ、プロセスもアーキテクチャーも一緒だからクロックが上がれば消費電力が増えるのは至極当然だ。だが“Special Edition”だからなんとか許せる、といったところか。一方で、現状のRyzenはアイドル時の消費電力が高止まりしてしまう傾向にあるが、高負荷時のワットパフォーマンスは抜群に高いと言える。
ここまで消費電力が高いとCPU温度も気になるところだ。そこで前述のPrime95実行時にモニタリングソフト「HWiNFO」を利用してCPUのクロック(Core #0のみを比較)やパッケージ温度、そしてCPU Package Powerをそれぞれ追跡した。計測時間はおよそ10分である。
まずはクロックの推移を眺めてみると、Core i9-9900KSが全コア5GHzを維持できているのは開始から30秒足らず。あとは徐々にクロックを下げていき、3分あたりから4.7GHzあたりに収束してしまう。5GHzからクロックが落ちるタイミングでサーマルスロットリングフラグが立ちっぱなしになるのだ。
HandbrakeではCore i9-9900KSと9900Kの処理時間がほぼ同じであることが不思議だったが、両者とも4.7GHzに収束するのだから、処理時間が近くなるのはむしろ当然の話だったわけだ。
CPUパッケージ温度(Tcase)の推移はもっと強烈だ。Core i9-9900KSのパッケージ温度はSmallFFTの処理を始めた直後に100℃まで上昇し、そのままずっとそれが続く。5GHz動作がすぐキャンセルされるのも無理からぬ話だ。高クロック動作を維持するために、発熱面は完全度外視でチューニングされていることがわかる。しかし、360mmラジエーターを備えた簡易水冷クーラー(Kraken X72)でも間に合わないとは、恐れ入ったものである。
Core i9-9900KSのCPU Package Powerは最大231Wで、処理開始直後がピークで、その後ゆっくりと下がって205W前後で安定する。これに対し、Core i9-9900KSは最初は173Wで、その後ゆっくりと上昇。最終的に4.7GHzに落ち込んでしまうグラフ終盤の時も、Core i9-9900KSは200W以上を維持している点を考えると、とにかくパワーをつぎ込んで高クロックを何とか維持できるようにチューニングされていることがうかがえる。
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